CADデータ管理の用語集:PDM・BOM・BIM・CIM・IFCを解説
CADで作成した図面や3Dモデルを、設計変更・共同作業・製造・建設で活用するには、データ管理と交換の仕組みを理解することが重要です。本記事では、PDM・PLM・BOM、BIM/CIM・IFC、ネイティブ形式、STEP・DXF・STLの役割と違いを整理し、目的に応じたCADデータ管理・交換の基本を解説します。

目次
- CADデータの管理に関する用語
- PDM(Product Data Management)
- PLM(Product Lifecycle Management)
- BOM(Bill of Materials)
- 建築・土木分野の用語
- BIM(Building Information Modeling)
- CIM(Construction Information Modeling / Management)
- IFC(Industry Foundation Classes)
- CADデータの交換形式
- ネイティブ形式(Native Format)
- STEP(Standard for the Exchange of Product Model Data)
- DXF(Drawing Exchange Format)
- STL(STereoLithography)
- 形式選びで注意すること
- まとめ
CADで作成した図面や3Dモデルは、作成して終わりではありません。設計変更への対応、部品表の作成、複数の担当者による共同作業、異なるソフトウェア間でのデータ交換など、実際の業務ではデータを管理・活用する仕組みが必要になります。
また、機械設計と建築・土木では、CADデータに求められる役割も異なります。機械設計では部品の構成や製造情報が重要になる一方、建築・土木では建物や構造物に加え、工程、地理情報、施設管理などとの連携が重要になります。
この記事では、CADに関連するデータ管理システム、部品表、BIM/CIM、データ交換形式などの基本用語を解説します。
CADデータの管理に関する用語
PDM(Product Data Management)
PDMは、製品に関する設計データを管理する仕組みです。
機械設計では、CADファイル、図面、部品情報、設計変更の履歴などを管理するために使われます。
たとえば、複数の設計者が同じ製品を開発している場合、どのファイルが正式版なのか、誰が変更したのか、どの部品がどの設計に使われているのかを把握しなければなりません。PDMは、こうした情報を組織的に管理するための基盤となります。
主な機能には、次のようなものがあります。
- CADファイルや図面の一元管理
- バージョンや改訂履歴の管理
- アクセス権限や承認ワークフローの管理
- 部品と関連図面などの関係管理
PDMは単なるファイル置き場ではありません。設計データの整合性を保ち、変更による影響を追跡しやすくすることが重要な役割です。
PLM(Product Lifecycle Management)
PLMは、製品のライフサイクル全体に関する情報や業務を管理する考え方・仕組みです。
企画、設計、製造、販売、保守、廃棄など、製品が生まれてから役割を終えるまでの各段階を対象とします。
PDMが主に設計データの管理を担うのに対し、PLMは設計データに限らず、製品に関わるプロセスや情報をより広く扱います。PDMはPLMを構成する機能の一部として位置付けられることがあります。
ただし、製品やシステムによって機能の範囲は異なるため、PDMとPLMの境界がすべての製品で同じとは限りません。
BOM(Bill of Materials)
BOMは、製品を構成する部品や材料を一覧にした「部品表」です。
たとえば、機械製品が本体、モーター、ねじ、カバーなどから構成される場合、BOMには構成部品、数量、部品番号などが記載されます。
BOMは、設計、調達、製造、在庫管理などの業務で利用されます。
代表的なものに、次の種類があります。
- 設計BOM(EBOM):設計上の製品構成を表す。
- 製造BOM(MBOM):製造工程で必要となる構成を表す。
設計上の構成と、実際の製造で使用する構成は必ずしも一致しません。そのため、用途に応じたBOMの管理が必要になります。
BOMはCADの3Dモデルそのものではありません。CADモデルから部品構成を取得できる場合はありますが、部品表として利用するには、必要な属性や構成情報を適切に管理する必要があります。
建築・土木分野の用語
BIM(Building Information Modeling)
BIMは、建築物の形状と、それに関連する属性情報を組み合わせて管理・活用するための考え方やプロセスです。
BIMモデルには、壁、柱、床、設備などの形状だけでなく、材料、寸法、仕様、製品情報などを関連付けることができます。用途や運用方法によっては、工程やコスト、維持管理に関する情報も連携します。
従来の図面中心の業務では、平面図、立面図、断面図などを個別に作成・更新することが一般的でした。BIMでは、共通のモデルから複数の図面や集計情報を生成・更新できるため、情報の整合性を保ちやすくなります。
ただし、3Dモデルを作成しただけでBIMが実現するわけではありません。モデルにどの情報を持たせ、関係者間でどう共有し、設計・施工・維持管理にどう利用するかが重要です。
CIM(Construction Information Modeling / Management)
CIMは、日本の建設・土木分野で使われる用語で、3次元モデルと各種情報を活用し、建設事業の効率化や高度化を図る取り組みを指します。
道路、橋梁、河川、トンネルなどの土木構造物を対象に、形状情報だけでなく、地形、地質、施工、維持管理などに関する情報を組み合わせて活用します。
BIMが主に建築分野で使われるのに対し、CIMは土木分野で使われてきた用語です。日本では「BIM/CIM」とまとめて表記されることも多く、3次元モデルを活用した建設事業の情報管理という共通の方向性を持っています。
なお、CIMの英語表記や定義は制度・時期によって説明が異なる場合があります。実務では、対象となる事業や適用される基準に沿って確認する必要があります。
IFC(Industry Foundation Classes)
IFCは、建築・建設分野で建物や施設の情報を交換するためのオープンなデータ標準です。
特定のBIMソフトウェアだけに依存せず、異なるソフトウェア間でモデルや属性情報を受け渡すことを目的としています。
IFCでは、壁や柱などの建築要素、空間、構成関係、属性情報などを表現できます。そのため、単なる3D形状の受け渡しよりも多くの意味情報を交換できます。
ただし、IFC形式で保存すれば、すべてのソフトウェア間で情報が完全に一致するわけではありません。ソフトウェアの対応状況、使用するIFCのバージョン、エクスポート設定、情報の定義方法などによって、受け渡せる情報は変わります。
CADデータの交換形式
CADデータを別のソフトウェアに渡す場合、元のソフトウェア固有の形式を使う方法と、異なるソフトウェア間の交換を想定した形式を使う方法があります。
ネイティブ形式(Native Format)
ネイティブ形式は、特定のCADソフトウェアが標準的に使用するファイル形式です。
ネイティブ形式には、形状だけでなく、パラメトリックな設計情報、フィーチャ履歴、拘束条件、アセンブリ構成などが保存される場合があります。
そのため、対応するソフトウェアで開けば、単なる形状だけでなく、設計変更に必要な情報も維持できることがあります。
一方、別のソフトウェアでは開けなかったり、一部の情報が失われたりする場合があります。
STEP(Standard for the Exchange of Product Model Data)
STEPは、製品モデルデータを交換するための標準規格です。機械設計では、3D形状や関連する製品情報を異なるCADソフトウェア間で受け渡すために使われます。
STEPは、一般的な拡張子として.stepや.stpが使われます。
ネイティブ形式とは異なり、異なるシステム間の交換を目的としています。ただし、元のCADソフトウェアにあるフィーチャ履歴や編集方法などが、そのまま維持されるとは限りません。
DXF(Drawing Exchange Format)
DXFは、CADデータを交換するためのファイル形式で、特に2D図面の受け渡しで広く利用されています。
線、円、寸法、文字などの図面要素を扱えます。ソフトウェアやデータの内容によっては3D関連の情報を含む場合もあるため、「DXFは必ず2D専用」とは言い切れません。
異なるCADソフトウェア間で図面を交換する際に便利ですが、文字の表示、寸法の扱い、対応する要素などは、ソフトウェアやバージョンによって異なる場合があります。
STL(STereoLithography)
STLは、3D形状を三角形の集合として表現するメッシュ形式です。3Dプリンティングなどで広く利用されています。
STEPのように、曲面や設計上の構成をそのまま表現する形式とは異なり、STLでは形状を三角形に分割して近似的に表現します。
そのため、曲面の細かさは三角形の分割方法に左右されます。また、一般的なSTLデータには、CADのフィーチャ履歴や部品の意味情報などは含まれません。
3Dプリント用の形状受け渡しには適していますが、設計意図を保持したまま編集する用途には向いていない場合があります。
形式選びで注意すること
ファイル形式を選ぶときは、拡張子だけでなく、何を受け渡したいのかを確認する必要があります。
| 目的 | 主な候補 | 確認すべき点 |
|---|---|---|
| CADの設計情報を継続して編集する | ネイティブ形式 | 対応ソフトウェア、履歴・拘束の保持 |
| 3D形状を機械CAD間で交換する | STEP | 形状、アセンブリ、属性情報の対応 |
| 2D図面を交換する | DXF | 寸法、文字、レイヤーなどの互換性 |
| 3Dプリント用の形状を渡す | STL | メッシュの精度、閉じた形状かどうか |
| 建築モデルの情報を交換する | IFC | 対応バージョン、属性・要素の対応 |
これらは一般的な選択例であり、どの形式が最適かは、使用するソフトウェア、業務、必要な情報によって変わります。交換後に形状や属性が正しく維持されているかを確認することも重要です。
まとめ
CADに関連するデータ管理や交換の仕組みは、形状を作成する操作とは別の役割を持っています。
- PDM:設計データや改訂履歴を管理する。
- PLM:製品のライフサイクル全体に関する情報やプロセスを管理する。
- BOM:製品を構成する部品や材料を一覧化する。
- BIM/CIM:建築・土木分野で3次元モデルと関連情報を活用する。
- IFC:建築・建設分野でモデル情報を交換するための標準。
- ネイティブ形式・STEP・DXF・STL:目的や保持したい情報に応じて使い分けるデータ形式。
CADの実務では、3Dモデルを正確に作成するだけでなく、そのデータを誰が利用し、どの情報を保持し、どのように変更・共有するのかを考える必要があります。データ管理と交換の仕組みを理解することで、CADを個人の作図ツールとしてだけでなく、設計・製造・建設の業務を支える情報基盤として捉えられるようになります。
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