3D CADのモデリングとは?形状の作り方とデータ構造を解説
3D CADでは、形状を作る操作と、コンピューター内部で形状を表現するデータ構造は別の概念です。本記事では、スケッチ、押し出し、回転、フィレット、ロフトといった基本操作から、フィーチャー履歴、B-rep、CSG、NURBS、ソリッド・サーフェス・メッシュの違い、モデリングカーネル、STEP・STLによるデータ交換まで体系的に解説します。

目次
- 3D CADで形状を作る基本操作
- スケッチ(Sketch)
- 押し出し(Extrude)
- 回転(Revolve)
- フィレット(Fillet)と面取り(Chamfer)
- ロフト(Loft)
- フィーチャーと設計履歴
- フィーチャー(Feature)
- フィーチャー履歴(Feature History)
- 3D形状を表現する方式
- B-rep(Boundary Representation/境界表現)
- CSG(Constructive Solid Geometry/構成的立体幾何学)
- NURBS(Non-Uniform Rational B-Spline)
- ソリッド・サーフェス・メッシュの違い
- モデリングカーネルとは何か
- CADの形状データを交換するときの注意点
- まとめ
3D CADでは、画面上で立体を作成したり、穴を開けたり、角を丸めたりできます。しかし、こうした操作によって、コンピューター内部では何が起きているのでしょうか。
3D CADを理解するには、形状を作る操作だけでなく、立体をどのようなデータとして表現し、どのように計算しているのかを知ることが重要です。
この記事では、基本的なモデリング操作から、B-repやCSGといった形状表現方式、CADの計算を支えるモデリングカーネルまで解説します。
3D CADで形状を作る基本操作
スケッチ(Sketch)
スケッチは、平面上に線分、円、円弧などを配置して作成する図形です。多くのパラメトリックCADでは、スケッチを入力として立体形状を作成します。
例えば、円を描いて押し出せば円柱を作れます。ただし、3D CADにはスケッチを使わずに形状を作る方法や、既存の3Dデータを編集する方法もあります。
押し出し(Extrude)
平面上の図形を指定した方向に延長し、立体形状を作成する操作です。
例えば、円を押し出すと円柱を作成できます。また、既存のソリッドに対して押し出しを行い、材料を追加したり、逆に材料を取り除いたりする機能もあります。
回転(Revolve)
断面となる図形を、指定した軸の周りに回転させて立体を作成する操作です。
回転軸を中心とした対称形状を作る際に便利で、軸、軸受、容器などの形状を作成するときに利用されます。
フィレット(Fillet)と面取り(Chamfer)
フィレットは、主にエッジとエッジの間を丸みのある曲面でつなぐ操作です。面取りは、エッジ部分を斜めの面などで置き換える操作です。
どちらも部品の形状を整えるために利用されます。設計上の機能や製造方法に関係する場合もありますが、単に見た目を整える目的で使われることもあります。
ロフト(Loft)
複数の断面形状をつないで、立体や曲面を作成する操作です。断面の形や位置を変えることで、断面が変化する形状を表現できます。
例えば、断面が円から楕円へ変化する形状や、断面の大きさが徐々に変わる部品などに利用されます。ガイド曲線などを使って形状を制御できるCADもあります。
フィーチャーと設計履歴
フィーチャー(Feature)
フィーチャーは、押し出し、回転、穴あけ、フィレットなど、形状を作成・変更する操作や、その操作を表すモデル要素です。
パラメトリックCADでは、複数のフィーチャーを順番に積み重ねてモデルを構築する方法が広く使われています。
例えば、次のような設計が考えられます。
- 円形のスケッチを作成する。
- 円を押し出して円柱を作る。
- 円柱の上面に穴を作る。
- エッジにフィレットを追加する。
この場合、各操作がフィーチャーとして記録されます。設計変更時には、先行するフィーチャーの寸法などを変更し、その後の形状を再計算できます。
フィーチャー履歴(Feature History)
フィーチャー履歴は、形状を作成するために行った操作や、その依存関係を記録したものです。
履歴があると、完成した形状だけでなく、どのような手順でその形状を作ったのかを確認できます。一方、履歴を持たずに完成形状を直接編集するダイレクトモデリングという方法もあります。
フィーチャー履歴があることと、形状がどのような数学的方式で表現されているかは、別の問題です。
3D形状を表現する方式
B-rep(Boundary Representation/境界表現)
B-repは、立体の境界を使って形状を表現する方式です。
境界を構成する主な要素には、次のものがあります。
- 頂点(Vertex):点の位置を表す要素。
- 稜線(Edge):頂点を結ぶ曲線などの要素。
- 面(Face):境界を構成する面の要素。
- 位相情報(Topology):頂点、稜線、面などがどのようにつながっているかを表す情報。
B-repでは、これらの位相情報と、直線・円・曲面などを定義する幾何情報を組み合わせて形状を表現します。
例えば、円柱は、側面と上下の円形の面、その境界となる円周などによって表現できます。
B-repは機械系のソリッドCADで広く利用されています。形状の境界を数学的に扱えるため、体積計算や干渉チェックなどに適しています。ただし、こうした計算には、形状が有効なソリッドとして構成されていることや、数値計算が適切に行われることも必要です。
CSG(Constructive Solid Geometry/構成的立体幾何学)
CSGは、基本的な立体を組み合わせて複雑な形状を構築する考え方です。
例えば、直方体から円柱を差し引けば、穴のある形状を作れます。代表的な演算は次の3つです。
- 和(Union):2つの立体を合体させる。
- 差(Difference):一方の立体から、もう一方の立体を取り除く。
- 積(Intersection):2つの立体が重なる部分を取り出す。
CSGでは、基本形状と演算の組み合わせによって形状を表現できます。
B-repが立体の境界を中心に形状を表すのに対し、CSGは立体を構築する演算を中心に形状を表します。ただし、両者は必ずしも排他的な方式ではありません。CADソフトでは、演算によって作られた形状をB-repとして保持するなど、複数の方式が組み合わされる場合があります。
また、フィーチャー履歴とCSGは同じものではありません。フィーチャー履歴には、スケッチや寸法、拘束など、単純な立体の和・差・積だけでは表現できない設計情報も含まれます。
NURBS(Non-Uniform Rational B-Spline)
NURBSは、曲線や曲面を数学的に表現するための方式です。CADでは、円や円弧だけでは表現しにくい自由曲線や自由曲面などに利用されます。
NURBSはポリゴンメッシュのように多数の小さな平面を並べて曲面を近似する方式ではありません。曲線や曲面を数式に基づいて表現するため、設計上の精度が求められる形状を扱うのに適しています。
ただし、NURBSだからといって、どのような形状でも自動的に滑らかになるわけではありません。曲面の滑らかさは、制御点や曲線・曲面の構成などによって決まります。
ソリッド・サーフェス・メッシュの違い
これらは、3D形状を扱う際に区別しておきたい概念です。
| 種類 | 特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|
| ソリッド | 立体の内部と境界を含む領域として扱う | 機械部品の設計、体積計算 |
| サーフェス | 面によって形状を表現する | 自由曲面設計、外形の設計 |
| メッシュ | 多数の多角形で形状を近似する | 3Dスキャン、CG、3Dプリント |
なお、B-repはソリッドを表現するためにも使われますが、サーフェスモデルの表現にも使われます。B-repとソリッドは、同じ分類階層の用語ではありません。
モデリングカーネルとは何か
モデリングカーネル(Geometry Kernel)は、CADにおける幾何形状の計算を担うソフトウェア部品です。
例えば、次のような処理に関係します。
- 曲線や曲面の計算
- ソリッド同士の和・差・積
- フィレットや面取りなどの形状処理
- 形状の交差や干渉の計算
- B-repなどの幾何データの操作
代表的なカーネルには、SiemensのParasolidや、SpatialのACISがあります。
ただし、カーネルが同じであれば異なるCADソフト間で完全な互換性が得られる、というわけではありません。CADソフト独自のデータ構造や設計履歴、機能、データ交換処理なども互換性に影響します。
CADの形状データを交換するときの注意点
3Dモデルを別のCADソフトへ渡す場合、形状そのものだけでなく、どのような情報を維持したいのかを考える必要があります。
例えば、STEPは3D形状の交換によく使われます。一方、STLは三角形メッシュによって形状を表現するため、一般に元のCADのフィーチャー履歴や厳密な曲面情報は保持しません。
つまり、画面上では同じように見える形状でも、ファイル形式によって編集可能な情報や計算に利用できる情報が異なります。
設計変更を継続するために元のCADデータが必要なのか、製造用に形状だけを渡せばよいのかによって、適切な形式は変わります。
まとめ
3D CADを理解するには、形状を作る操作と、形状を表現するデータ構造を区別することが重要です。
押し出しやフィレットは形状を作成・変更する操作であり、フィーチャーはそれらをモデル要素として扱う仕組みです。一方、B-repやCSGは形状の表現方法であり、NURBSは曲線や曲面を数学的に定義するための方式です。モデリングカーネルは、これらに関わる幾何計算を支えます。
これらの概念を区別して理解すると、CADソフトの操作だけでなく、形状の編集、データ交換、設計変更で何が起きているのかも把握しやすくなります。
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