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ベトナムの「胡椒・香辛料(スパイス)ビジネス」が狙う中東・南アジア!(石黒が選ぶベトナムのニュース:2026/6/22)

ベトナムの「胡椒・香辛料(スパイス)ビジネス」が狙う中東・南アジア!(石黒が選ぶベトナムのニュース:2026/6/22)

現地で報じられているニュースを日本人の視点から読み解き、リアルな現地事情を紹介していく「石黒が選ぶベトナムのニュース紹介」、第37回目。

今回は、コーヒーや米と並ぶベトナム農業の総本山であり、世界トップクラスのシェアを誇る「胡椒・香辛料(スパイス)ビジネス」にスポットを当てます。いまベトナムの胡椒が、中東や南アジアといった巨大市場をさらに攻めようとしていますが、乗り越えなければならないハードルもあり、それについて紹介します。

2026年6月19日VnEconomyのニュース(原文はベトナム語)
ベトナム産コショウは、中東および南アジア市場において大きなビジネスチャンスを掴んでいる。

2026年6月16日VPSAのニュース(原文はベトナム語)
ベトナム産のコショウが中東の食卓に並び始めており、コショウ輸出業界は今後5年間で稀に見る好機を迎えるだろう。

1. ベトナムがさらなる開拓を狙う「中東・南アジア」!

ベトナム経済紙のVnEconomyの報道や、その元になったベトナム胡椒・香辛料協会(VPSA)の最新の発表によると、ベトナム産の胡椒やスパイス類の輸出が増加しています。

スパイス類の輸出額は、2025年に21億ドルを超えて過去最高を記録しましたが、2026年1〜5月においても輸出量は12万6,800トン(前年同期比27%増)、輸出額は8億1,970万ドル(前年同期比18.8%増)と引き続き好調を維持しています。

しかし、前年同期比で見たときの「数量の伸び」に対して「金額の伸び」が下回っていることからも分かる通り、平均単価はむしろ下落傾向にあります。実際、この5ヶ月間の平均輸出価格は1トン当たり約6,463ドルにとどまり、前年同期比で6.5%減少しました。

スパイス類のうち、胡椒の主要な輸出先を見ると、1位アメリカ(28.5%)、2位ドイツ(5.9%)、3位タイ(4.9%)という順位です。ただし、アメリカへの輸出が今年34%増加し、タイが倍増したのに対し、ドイツへの輸出は25.4%も減少するなど、国によってばらつきが見られる結果となりました。

そのような中、ベトナムの香辛料輸出において今後最も注目されている地域が、世界最大級の香辛料(胡椒、シナモン、八角、生姜、ウコン)へのニーズがあると言われる「南アジア」や「中東」です。

現在、ベトナム産の香辛料は中東のコショウ輸入量の約60%を占め、南アジア(特にインドとバングラデシュ)のシナモン需要に対しては最大90%を供給するなど、すでに大きな存在感を示していますが、さらに販売を広げるにあたって最重要視している国がUAE(アラブ首長国連邦)です。

その理由について、アラブ首長国連邦(UAE)駐在ベトナム貿易事務所の責任者であるチュオン・スアン・チュン氏は、以下のように述べています。

「UAEに輸入される商品の約40〜50%は、その後、湾岸協力会議(GCC)諸国、アフリカ、南アジアに再輸出されている。つまり、UAEでの受注が成功すれば、20億人を超える消費者を抱える市場への扉が開かれることになる」

2024年10月29日の報道「ファム・ミン・チン首相(左)とアラブ首長国連邦副大統領兼首相のシェイク・モハメド・ビン・ラシード・アル・マクトゥーム氏(右)

このように極めて重要なベトナムとUAEの両国関係ですが、2026年2月に署名されたベトナム・UAE包括的経済連携協定(CEPA)によって、UAEはベトナム製品に対する関税品目の最大94.9%を自由化することを約束しました。コショウを含む多くの農産物および食品の関税率が0%になるなど、販路拡大に向けた布石はすでに打たれている状況です。

2. ニュースの背景にある「ベトナムのリアルな事情」

しかし、実際に輸出を増やしていくには、まだ乗り越えなければならない壁やリスクが存在します。

2-1.ハラール(Halal)認証

その一つが、イスラム教の教えにおいて「許されたもの」であることを第三者機関が証明する「ハラール認証」の取得です。

現在、世界のハラール食品市場は2兆7,000億ドルを超え、今後も年間8〜9%程度の成長が見込まれる有望な市場と言われています。しかし、ベトナムのハラール認証を取得した中東向け農産物・水産物の輸出額はわずか約7億ドルにとどまっており、規模がまだ小さく、輸出企業の多くも十分な知見を持っていないのが現状です。

ハラール認証を取得したベトナム製品の例(解説サイトより)

今後UAE宛てに輸出をしても、UAEの管轄当局が認める有効なハラール認証を取得していない製品であった場合、港での通関手続きが拒否される可能性があります。これがこれまでの欧米向け輸出とは違う点でもあります。

2-2.高付加価値化(加工化)

現在、ベトナム産の香辛料輸出の大部分は、未加工または半加工の状態であるため、付加価値はまだ決して高くありません。

一方で、中東や南アジア市場のトレンドは、粉末スパイスやスパイスブレンド、小売用パッケージ商品、精油、スパイス抽出物といった「より付加価値の高い製品」へと徐々にシフトしています。ベトナムの香辛料産業も、ただの原材料供給から脱却し、高付加価値製品を作って輸出していく技術投資が必要です。

2-3.取引の安全性の担保(国際詐欺リスク)

2026年4月ベトナム胡椒・香辛料協会(VPSA)は、前年に発生した「パキスタンのカラチへの胡椒輸出において深刻な商業詐欺事件」についての警告を発しました。(2026年4月16日のベトナム語の報道より)この事件の概要は以下の通りです。

2025年3月から5月にかけて、パキスタンのある会社がベトナム企業へ胡椒を注文しました。前払いはなかったものの、取引確認書を信頼したベトナム企業はコンテナ20個分の胡椒を出荷し、5月末から7月中旬にかけてパキスタンのカラチ港へ到着しました。

しかし、そのパキスタンの会社は、送金処理や銀行からの確認待ちといった形式的な言い訳を繰り返したり、偽造された送金書類を使ったりして一向に支払いをしませんでした。さらに時間を稼ぐため、発送元のベトナム企業に対して不必要な追加書類の提出を次々と要求したのです。

写真は、パキスタンのカラチ港(解説サイトより)

支払いが行われず、貨物が港で長期間滞留してコンテナや保管費用が大幅に増加する中、パキスタンの会社は、当初の契約価格から約25%もの大幅な値下げを要求してきたり、支払い期限を2025年末まで延長するよう求めてきたりと、一方的な要求を繰り返しました。

最終的に一部の商品は回収できたものの、ベトナム企業は販売価格の下落、コンテナ滞留料、保管料、その他の物流コストによる損失を含め、推定総額約60万ドル(約1億円)もの巨額の損失を計上することとなりました。事実上の計画的な詐欺被害です。

中東や南アジアで新たな取引先を開拓するにあたり、ベトナム企業にとっても厳格なリスク管理が急務となっています。

3. 筆者(石黒)が注目したポイント

今回このニュースを見て非常に興味深いと感じたのは、ベトナムが、同じく(法規制などが欧米先進国のようには整っていない)「新興国」と呼ばれるマーケットへ果敢に販路を開拓しようとしている点です。そしてこれは、日本企業にとっても新しいビジネスチャンスの形を示しているのではないでしょうか。

これまで、ベトナムを絡めた日系企業のビジネスといえば、以下の3つのパターンが主流でした。

(1)日本を含む先進国で作ってベトナムへ販売する
(2)ベトナムで作って日本を含む先進国へ販売(輸出)する
(3)ベトナムで作ってベトナム国内へ販売する

しかし、今後はこれらに加えて、

「ベトナムで生産(加工)して、他の新興国(中東・南アジア・アフリカ等)へ販売する」

という三国間貿易のビジネスが、ベトナム製品の国際化に合わせて大きく広がっていくのではないかと感じています。

その際、日本企業がゼロからすべてを完結させるのではなく、すでに世界的なシェアや中東へのパイプを持つベトナム企業とアライアンスを組むことで、お互いの強みを活かすことができます。

例えば、ベトナム側が持つ既存のネットワークや原材料調達力を活かしつつ、日本側は「より高付加価値なもの(粉末・ブレンド・精油など)へ加工する技術や商品化のノウハウ」、そして「国際取引における厳格なリスク管理体制」を提供する、といった協業の形です。

新興国と言われるアフリカや中東、南アジアの巨大な成長市場をはじめからターゲットに見据え、「日本の技術・ノウハウ」×「ベトナムの生産力・既存の貿易網」という切り口でビジネスを組み立ててみる。そんな、一歩進んだグローバルサプライチェーンの未来を考えさせられたニュースでした。

実践型ビジネス出張ツアー「Ăng-Ten(アンテン)」

ベトナム拠点・IT開発センター設立の実践視察ツアー【Ăng-Ten】
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  • 第4回目:8月19日(水)〜8月21日(金)
  • 第5回目:9月9日(水)〜9月11日(金)
  • 第6回目:10月14日(水)〜10月16日(金)

※オプションで航空券の手配や延泊(観光・ゴルフ等)のご相談も可能です。

急成長するベトナム市場への進出や、新規事業の拠点設立をミッションとして任された皆様。事前情報だけで判断するのではなく、ぜひ現地の最前線を自分の目で確かめに来てください。ホーチミンでお会いできることを楽しみにしています!

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