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変化するベトナム自動車市場と豊かになっても大きく伸びていない販売台数から見えてくるもの(石黒が選ぶベトナムのニュース:2026/6/18)

変化するベトナム自動車市場と豊かになっても大きく伸びていない販売台数から見えてくるもの(石黒が選ぶベトナムのニュース:2026/6/18)

現地で報じられているニュースを日本人の視点から読み解き、リアルな現地事情を紹介していく「石黒が選ぶベトナムのニュース紹介」、第35回目。

今回は、自動車の販売台数から見るベトナム市場にスポットを当てます。拡大する市場における変化や、日本メーカーのシェアについても紹介しますが、販売台数を過去のアジアの国々と比較した際、ある「気になるポイント」が見えてきました。それは、市場の構造そのものが大きく変化しているサインなのでしょうか?

2026年6月11日のVnEconomyの報道(原文はベトナム語)
ベトナムの自動車市場はどのように変化しているのか?

1. 販売台数の増加と人気車種の変化

近年のベトナム自動車市場において、記念すべきマイルストーンとなったのが昨年の2025年でした。総販売台数が60万4,134台と初めて60万台の大台を突破し、前年(2024年)から22%の増加を記録。2022年に記録した過去最高(50万8,547台)をも大きく上回りました。

2026年に入ってからも、経済の高成長を背景に市場は引き続き好調を維持しています。2026年5月の自動車販売台数は24,136台となり、前年同月比で7%増加しました。ここで、報道の元になった一次データである「ベトナム自動車製造業者協会(VAMA)の2026年5月販売レポート」を見てみましょう。

詳細なデータを見てみると、純粋な乗用車(Passenger cars)の伸びは4%とそこまで高くはありませんが、ハイブリッド車(HV)は前年同期比で59%も伸びていることが分かります。

また報道によると、2年前と比較して大きく変わったのが「人気車種の移り変わり」です。2年前は、Bセグメント(全長約3.8m〜4.4mのコンパクトカー・小型車クラス)に分類されるセダン車の「Vios(トヨタ)」や「Accent(ヒョンデ)」といった車種が、販売台数ランキングのトップを常に独占していました。

しかし近年では、車高が高くて視界が広く、安定した走行性を備えたSUVや、MPV(多目的乗用車)、そして電気自動車(EV)などが上位にランクインするよう変化してきています。

再び報道の元になった一次データである「ベトナム自動車製造業者協会(VAMA)の2026年5月販売レポート」からトラックなどを除き乗用車として1,000台を超える販売台数があった箇所を抜粋してみますと以下の通りです。

三菱自動車のMPVである「Xpander」をはじめ、トヨタのSUV「Yaris Cross」、FordのSUVである「Everest」や「Territory」、マツダの都市型SUV(クロスオーバー)「CX-5」といった車種に人気が集中していることが分かります。

2年前のセダン一強時代と比べると、消費者の好みが変わっているのが一目瞭然ですね。また1000台を超える主要5車種のうち、日本メーカーの自動車が3車種ランクインしています。

では、メーカーごとの販売台数と市場シェアはどうなっているのでしょうか。「ベトナム自動車製造業者協会(VAMA)の2026年5月販売レポート」には、商用車やトラックを含む市場シェアと台数が載っていました。

おそらくは輸入の関係でトヨタとレクサスが別になっていたりもしますが、2026年5月の数字で乗用車メーカーを見ると、

・トヨタ:5,653台(シェア23.4%)
・Ford:3,493台(シェア14.5%)
・三菱自動車:3,111台(シェア12.9%)
・KIA:2,512台(シェア10.4%)
・マツダ:2,304台(シェア9.5%)
・ホンダ:1,870台(シェア7.7%)

とあり、こうして見ると、依然としてベトナム市場において日本メーカーが圧倒的な存在感を放っていることが分かります。

2. 今後さらに国策で伸びる「EV(電気自動車)」

「ベトナム自動車製造業者協会(VAMA)の2026年5月販売レポート」内には詳細な記載がありませんでしたが、VnEconomyの報道内では、今後の市場を占う上で無視できない「EV(電気自動車)」の台頭についても大きく触れられていました。 

電気自動車やハイブリッド車を含む環境対応車は、2025年に189,270台を販売し、新車販売台数全体の約31%を占めるまでになりました。なかでもベトナムの独自ブランドである「VinFast(ビンファスト)」は175,099台を納車し、市場で最も破壊的な成長を遂げています。

その背景にあるのが、国を挙げた「電気自動車の推進」という強烈な国策です。

2026年6月16日のVnEconomyの報道(原文はベトナム語)が報じた政府のロードマップによると、ベトナムは2030年までに都市部の車両の50%、そしてすべてのバスとタクシーを電気自動車にすることを目指しており、2050年までにはすべての交通機関を電気または再生可能エネルギーに完全転換する予定となっています。

ただ、その実現において最大のネックとなるのが「充電インフラ(ステーション)」の整備です。

世界銀行の推計によると、この充電ステーション網を国内に構築するためには、2030年までに22億ドル、2040年までに約140億ドル、そして2050年までに326億ドルという、気の遠くなるような巨額のインフラ投資が必要になると試算されており、ここをどうクリアしていくかが今後の課題となりそうです。

3. 筆者(石黒)が注目したポイント:豊かになっても販売台数が以前ほど伸びていないのは市場の変化か?

今回、この一連のニュースやデータを見て私が最も興味深いと感じたのは、「ベトナムの経済的な豊かさに対して、自動車の全体販売台数が思ったよりも少ない(伸びていない)」という点です。

現在、ベトナムの人口は約1億人、1人当たりGDPは5,000ドルをちょうど超えたフェーズにあります。そして自動車の年間販売台数は約60万台です。

これを、過去に「1人当たりGDPが5,000ドルを超えた時点」のアジア他国と比較してみると、面白いギャップが見えてきます。

◆タイ(2010年頃):人口 約6,858万人 = 当時の年間販売台数 約80万台

◆マレーシア(2004年頃):人口 約2,558万人 = 当時の年間販売台数 約48〜53万台

◆韓国(1989年頃):人口 約4,245万人 = 当時の年間販売台数 約110〜120万台

経済水準(1人当たりGDP5000ドル)を同じ尺度にしてみたとき、人口が1億人いるベトナムの「60万台」という数字は、人口比で見ると過去のタイや韓国、マレーシアに比べて明らかに少ないことが分かります。

ちなみに、同じく2025年に5000ドルに達したインドネシアは人口2.8億人で80万台、5000ドル未満(4270ドル)のフィリピンは人口1.17億人で49万台となっており、現在の東南アジア新興国の傾向とも似ています。

地理的環境、年齢分布、税制や維持費、産業構造や国民車政策の有無などが異なるため単純比較はできませんが、国家が豊かになっても「かつての国々ほどマイカーが爆発的に売れない」背景には、都市部を中心に急速に普及した「配車アプリ(ライドシェア)」の影響があるのではないでしょうか。

「いつでもスマホ一つで安価に車を呼んで移動できる」インフラが最初から整っている環境において、特に若い世代の間で「大金を払って車を『所有』する」ということに対する価値観が、過去の国々の発展プロセスとは根本的に変わってきている(所有ではなく、利用できれば良い)のではないかと推測できます。

これはまだ単なる私の推測に過ぎませんが、ベトナムという市場は、かつての日本や他の先進国が歩んだ「経済発展=マイカー大国化」というレガシーな道をそのままなぞるのではなく、最初からデジタルとシェアリングが前提の「新しいモビリティ社会」へとリープフロッグ(一歩飛び越し)しているのではないか。そんな、自動車の本質的な変化と未来の市場のあり方を感じさせてくれる刺激的なニュースでした。

実践型ビジネス出張ツアー「Ăng-Ten(アンテン)」

ベトナム拠点・IT開発センター設立の実践視察ツアー【Ăng-Ten】
現地プロ7社とのアポ調整・ホテル・移動がすべて完了。ベトナム出張が決まった新規事業担当者へ向けた、確かな判断材料を持ち帰るための超実践的ビジネスツアー。

「Ăng-Ten(アンテン、ベトナム語でアンテナを意味)」は、ベトナム最大の経済都市・ホーチミン市を実際に訪れ、現地で長年ビジネスを営む7名の専門家と直接つながる、2泊3日の密度の高いビジネス出張ツアーです。

💡 本ツアーで得られる3つの価値

  1. 誰に会うべきかが見える:法務(弁護士)・採用・金融(銀行)・BtoB営業・不動産など、現地で接点を持つべきスペシャリストと直接議論ができます。※弊社バイタリフィ アジアのDirector 石黒も、オフショア開発の専門家(講師)として本ツアーに登壇いたします!
  2. 何から着手すべきかが整理される:すべて日本語での実践講義を通じて、拠点設立に必要な実務の順番と、見落としやすい注意点(成功例・失敗例)をまとめて持ち帰れます。
  3. 帰国後の相談先(人脈)が確保できる:質疑応答や後日の個別面談を通じて、自社の悩みを直接ぶつけることができ、帰国後すぐに動ける体制が整います。

【開催スケジュール(2026年)】

  • 第3回目:7月15日(水)〜7月17日(金)
  • 第4回目:8月19日(水)〜8月21日(金)
  • 第5回目:9月9日(水)〜9月11日(金)
  • 第6回目:10月14日(水)〜10月16日(金)

※オプションで航空券の手配や延泊(観光・ゴルフ等)のご相談も可能です。

急成長するベトナム市場への進出や、新規事業の拠点設立をミッションとして任された皆様。事前情報だけで判断するのではなく、ぜひ現地の最前線を自分の目で確かめに来てください。ホーチミンでお会いできることを楽しみにしています!

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