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店舗数拡大の限界を超える!ベトナム家電小売最大手の大型IPOと彼らが持つ2つの金鉱とは?(石黒が選ぶベトナムのニュース:2026/6/4)

店舗数拡大の限界を超える!ベトナム家電小売最大手の大型IPOと彼らが持つ2つの金鉱とは?(石黒が選ぶベトナムのニュース:2026/6/4)

現地で報じられているニュースを日本人の視点から読み解き、リアルな現地事情を紹介していく、石黒が選ぶベトナムのニュース紹介、第25回目。

皆さんは「ベトナムの小売業」と聞くと、どのような光景を思い浮かべるでしょうか?

「街のいたるところに立ち並ぶ個人商店(パパママストア)」、あるいは「勢いのある全国チェーンが次々と新しい店舗を開き、シェアを拡大している姿」をイメージする方が多いと思います。

これまで出店数を増やすことで成長を遂げてきたベトナムの小売チェーン店。しかし今後上場を予定している家電小売トップ企業は、単に店舗を増やして成長という以外の点で注目されています。今回は、そんな小売業者が構築した新たな2つの成長エンジン(金鉱)に関するニュースを紹介します。

2026年6月3日のCafefニュース(原文はベトナム語)
ディエンマイサイン(DMX)の隠された2つの金鉱

1.The Gioi Dien May(モバイルワールド)社の「ドル箱」ディエンマイサイン

今回取り上げるのは、ベトナム中でよく見るブルーの背景に黄色で書かれた家電量販チェーン「ディエンマイサイン(Điện Máy Xanh:以下DMX)」に関するニュースです。

現在、DMXは株式市場への大型上場(IPO)を控えており、投資家から大きな注目を集めています。

公開された財務データによると、2025年におけるDMXの売上高は109兆ドン(約6,620億円)を超え、税引き後利益は約5.8兆ドン(約352億円)という圧倒的な数字を記録しました。2026年第1四半期も非常に堅調な伸びを見せているとあります。

まさに親会社であるモバイルワールドグループ(MWG)にとって最強の「ドル箱(con bò sữa:搾乳牛)」と言える存在ですが、今回のニュースがフォーカスしているのは、その既存の小売ビジネスの強さではありません。

DMX社は、ベトナム中に店舗を構えてスマホやPCを販売するThế Giới Di Động(モバイルワールド、MWG)と店を並べていることも多い

今回のニュースがフォーカスしているのは、DMX社も店舗網がベトナム全土に行き渡り、純粋な「新規出店による成長」が天井(飽和状態)を迎える中で、同社が次の10年を見据えて掘り当てた「2つの新しい金鉱脈」についてです。

2.DMX社の何が凄いのか?

ではその「2つの新しい金鉱脈」についてそれぞれを見ていきましょう。

2-1. 家電だけではなくサービスを売る

DMX社が株式の99.99%所有する子会社DMX Techniciansは現在、約8,000人の従業員(うち技術者4,000人以上)、約300の倉庫、約700台の車両、3,000以上の店舗拠点、そして約1,800万人の顧客基盤を有しているとあります。そしてこれは、他の上場企業と比較しても従業員数で上位40社に入る規模です。

Thợ Điện máy XANHのWEBよりサービス内容を日本語にしたもの

そしてこの技術者集団は、単なるアフターサービスチームではなく、全国規模で展開するビジネスの中核を担う存在であると。それはどういうことか?

ベトナムにおいても「エアコンが水漏れした」「冷蔵庫の冷えが悪い」という時に、どこに修理を頼めばいいか分からず、検索をしてネットで見つけた業者に頼み「高額な料金を吹っかけられた」「修理後にすぐ再び壊れても保証が全くない」といった経験をしている人々が多いです。

この当たりはずれが非常に大きい電気製品の修理・保守市場では、需要の大きさに対してサービスを標準化して提供できる会社(供給側)がほとんど存在しなかったとあり、彼らはここに目を付けて家庭用サービスプラットフォーム「Thợ Điện máy XANH」を始めました。

Thợ Điện máy XANHのWEBよりサービス内容を日本語にしたもの

同社はこれまで製品を配送・設置していた自社スタッフを8,000人規模の「プロの出張修理集団」へ格上げし、エアコン清掃や家電修理を全国一律の明朗会計で提供し始めました。

彼らは自社が過去に販売した製品のデータベース(誰が、いつ、どのモデルを買ったか)を保有しているため、壊れる時期や必要な部品を事前に予測できるという、他社が絶対に真似できない強みも持っています。そして機器の修理収入だけでなく、DMX社の顧客生涯価値(Life Time Value)を高める存在にもなっています。

スマホアプリ上で修理技術者をすぐ呼ぶことも可能

このサービス部門は、

・2025年実績:売上2兆5,760億ドン、税引き後利益2,010億ドン、CAGR26%
・2030年計画:売上8兆2,870億ドン、税引き後利益6,750億ドン、CAGR27%

CAGR(Compound Annual Growth Rate)=複利計算された年平均成長率、上記は5年間で計算されたもの。

とあり、高い成長が期待できるビジネスです。

そしてさらに特徴的なのは、内部(自社で販売した顧客)だけでなく、外部(他社で家電を買った顧客)に対しても修理サービスを提供する、この分野の伸びが大きいという点です。

<売上>
内部向け:2025年2兆2,580億ドン⇒2030年4兆4,500億ドン、CAGR15%
外部向け:2025年3,180億ドン⇒2030年3兆8,370億ドン、CAGR65%

<利益>
内部向け:2025年1,580億ドン⇒2030年2,860億ドン、CAGR12.6%
外部向け:2025年430億ドン⇒2030年3,890億ドン、CAGR55%

と特に外部向けに提供する売上と利益の伸びが大きい点が注目されています。

そしてこの金鉱がDMX社におけるベトナムでのビジネスを深堀するものであるとするならば、もう1つの金鉱が面を広げるビジネス。それがインドネシアでの事業展開です。

2-2. ベトナム以上の巨大市場への進出、インドネシアの「erablue」

ベトナム国内が飽和してきたのであれば、外へ出る。これが2つ目の金鉱であるインドネシアでの家電小売チェーン「erablue」です。

インドネシアは、約1億人のベトナムよりも人口が多い約2億8,700万人の市場がある国です。しかし現地の家電小売は「巨大なショッピングモール内にある高級店」か「路地裏の雑多な個人商店」という両極端な構造で、中間層が日常的に買いやすいロードサイド型の店舗が空白地帯であったといいます。

DMXはベトナムで培った「バイクでアクセスしやすい交差点への出店」「手厚いアフターサービス」という勝ちパターンをそのままインドネシアに移植しました。

さらに単にそのまま展開したのではなく、現地事情に合わせて小型で柔軟性の高い店舗を構えることや、日常的な必需品の買い出しに気軽に立ち寄れるよう改良したとあります。

2025年末までに売上は約3兆7000億~3兆8000億ドンに達し、黒字​​化、親会社であるベトナムのDMX社に243億5000万ドンの利益をもたらしました。

また一部の資料によると、平均販売価格は約70%に過ぎないにもかかわらず、店舗あたりの平均売上高はベトナムのDMXの同業他社と比較して1.5~2.6倍高く、約50%の店舗が最初の1ヶ月で損益分岐点に達しているとのことです。

2026年1~4月も好調でerablueの収益は94%以上増加し、インドネシア国内の店舗総数は222になったとあり、今後もさらに拡大をしていくとのことです。

3. 筆者(石黒)が注目したポイント

このニュースを見て興味深いポイントは、ベトナムの大手小売業が進めているビジネスの変革です。

「家電というモノ売り」に加えて「サービスを売る」事によって収益を拡大させているという点と、ベトナムという新興国で成功したモデルを元にベトナム企業が他の新興国(インドネシア)へとビジネスを広げているという点です。

「製品を売って終わり」のビジネスは、市場の飽和とともに必ず限界が来るなかDMX社は、過去に売り払った無数の家電製品を「サービスを売るための入場券」へと変えてみせました。

こういった動きは、東南アジアでビジネスを収益を上げよう、ビジネスを拡大していこうという日本企業においても、いろいろと学ぶことが多いと感じています。

ベトナムで急成長している企業の底知れぬ強かさと、新興国ビジネスの次のステージを感じさせるニュースでした。

実践型ビジネス出張ツアー「Ăng-Ten(アンテン)」

ベトナム拠点・IT開発センター設立の実践視察ツアー【Ăng-Ten】
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【開催スケジュール(2026年)】

  • 第3回目:7月15日(水)〜7月17日(金)
  • 第4回目:8月19日(水)〜8月21日(金)
  • 第5回目:9月9日(水)〜9月11日(金)
  • 第6回目:10月14日(水)〜10月16日(金)

※オプションで航空券の手配や延泊(観光・ゴルフ等)のご相談も可能です。

急成長するベトナム市場への進出や、新規事業の拠点設立をミッションとして任された皆様。事前情報だけで判断するのではなく、ぜひ現地の最前線を自分の目で確かめに来てください。ホーチミンでお会いできることを楽しみにしています!

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