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参考になるのは日本の空?ベトナム航空市場の「巨大な空白」短距離フライト87路線の可能性(石黒が選ぶベトナムのニュース:2026/6/12)

参考になるのは日本の空?ベトナム航空市場の「巨大な空白」短距離フライト87路線の可能性(石黒が選ぶベトナムのニュース:2026/6/12)

現地で報じられているニュースを日本人の視点から読み解き、リアルな現地事情を紹介していく、石黒が選ぶベトナムのニュース紹介、第31回目。

南北に伸びるベトナムの国土には、北部にハノイ、中部にダナン、南部にホーチミンという大都市があって毎日たくさんの国内線が行きかっています。そして地方都市にも空港がありますが大都市向け以外では、ほとんどフライトがありません。今回は、この未開拓ルート、「短距離航空(ローカルフライト)」市場に関するニュースを紹介します。

2026年6月11日のVnEconomyニュース(原文はベトナム語)
短距離航空会社と市場の課題:未開拓路線87路線。

1. ベトナムの未開拓な87路線

今回取り上げるのは、短距離用のプロペラ機(ターボプロップ旅客機)で有名なATR社と、ベトナム有数の設計・コンサルティング会社であるTEDI社(運輸工学設計コンサルティング会社)が提携し、2024年に実施した「ベトナム国内での短距離航空に関する輸送ポテンシャル評価結果」の報道です。

なお短距離航空として定義されているのは、座席数80席未満の小型機を用いて距離555km未満の路線を運航する形態とあります。

この評価結果によるとベトナムでは、短距離航空旅行の発展に必要な4つの基本条件が同時に整いつつあることが明らかになったとあります。

(1)運航頻度が低い空港の存在
現在、ベトナム国内線の航空交通量の90%は、22空港のうち10空港に集中し、残り12空港は空港インフラが存在しても稼働率が極端に低い状況にある。それゆえ新たに空港を建設しなくても、こういった空港を活用できる。

(2)収益性があると考えられる未運航の87路線
ベトナムの国内線路線の25%は、距離555km未満となる。

半径555km以内の円で囲み、その中に存在する空港同士をそれぞれ仮想的に繋いだ計149路線のうち、約79%に相当する117路線はこれまで運行されたことが1度もない路線となる。

しかしATRとTEDI社の調査では、これらのうち87路線分は収益性の高い運航が見込めるだけの旅客需要が存在するとあり、仮にこれをATR 72-600型機で運航した場合、計25機あれば運航できるとあります。

記事内に掲載されている画像より。3つ円は、ハノイ、ダナン、ホーチミンの都市から半径555kmの範囲となり、現在国内に存在する22空港のどこまでが各円の中に入るのかが視覚的に分かる。

(3)国内線輸送量の増加という追い風
ベトナムの国内航空輸送量は2023年から2027年の間に20%以上増加すると予測されており、結果、乗客一人当たりの平均フライト数は近隣諸国と同水準に達する見込みとあります。よって新たな国内線を設置することには、追い風が吹いているともいえる状況であるとのことです。

(4)空港自体の増加と大都市にける国内線専用空港の計画
空港開発の基本計画(Quyết định số 648/QĐ-TTg)では、2030年までに空港数を22から30に増やすことを目標としていることに加えて、ハノイとホーチミン市の両方に専用の国内空港を建設することも計画しているとあります。

これにより短距離路線の可能性はさらに高まるものと期待されています。

短距離路線が実現した場合の経済効果についても述べられており、短距離便が10%増加すると、国内観光客が5%、国内総生産(GDP)が6%、海外直接投資が8%増加するとあります。

2. ニュースの背景にある「ベトナムのリアルな事情」

このニュースで取り上げられていた興味深いデータがあります。それは短距離路線や、それ用の航空機の参考事例として日本やニュージーランドが挙げられていた点です。それらも交えてベトナムの状況を見ていきます。

2-1. 短距離路線:日本の場合

日本はベトナムと同じ様に南北に細長く、日本の国内航空路線の40%は555km未満(ベトナムでは25%)。

日本の保有航空機数は621機で、そのうち50機がATR社製を含むターボプロップ機であり、全体の8%を占めている。これは、現在のベトナムにおけるターボプロップ機の割合2%と比較して4倍となる。

天草エアラインのATR42-600(wikipediaより)

つまりベトナムも日本並みに短距離路線が増えるならば、ターボプロップ機が現在の4倍に増える(必要となるのでは?)と言っています。

2-2. 短距離路線:ニュージーランドの場合

ニュージーランドの国内路線の77%が555km未満であり、航空機は118機で構成され、そのうち31機がATRターボプロップ機で全体の27%を占めている。

2012年10月30日ニュージーランド航空が初のATR 72-600型旅客機を受領のプレスリリースより

国内路線の3分の1はATR機で運航されており、クライストチャーチ、ウェリントン、オークランドの3大空港と数十の地方空港を結ぶ、密なネットワークを形成している事も紹介されています。

2-3. 短距離路線:ベトナムの場合

現在のベトナム国内線のうち、約25%は「距離555km未満」の短距離ルートとありますが、現在ベトナムには220機の航空機があるものの、座席数が80席未満の機体はわずか5機しかないとあります。

日本との比較でも日本に比べて短距離に適したターボプロップ機の少なさが目立ちます。

2016年8月1日のベトナム航空はなぜATR72型機の運航を中止したのですか? (Cafefベトナム語の報道より)

そのため需要を考えると本来ならばもっと(コストが安く小回りも利く)小型の機材とすべきですが、需要に比べて大きなジェット機を飛ばすことになり結果、座席も埋まらず、便数も少ないという状況で利用者にとって使いにくいものになっていることが分かります。

2-4. 地方で加速する「新空港建設・拡張」のラッシュ

こちらも既に述べたように空港開発計画において、現在の22空港を30空港へと増やしていこうとあり、各地域で新空港の計画が進んでいます。具体的には、

ファンティエット空港(ラムドン省):

2026年4月27日、正式に着工し、民間のサングループ(Sun Group)が総額3.9兆ドン(約237億円)を投じるメガプロジェクトで、通常なら数年かかる準備を大幅に短縮し、「24ヶ月以内の完成(2027年内稼働)」という業界異例のコミットで突っ走っていまるプロジェクトです。(ベトナム語の報道:Báo Lâm Đồng(2026/6/9)

クアンチ空港(クアンチ省):

中部物流のハブを目指し、T&Tグループが5.8兆ドン(約354億円)以上を投じて建設中。2026年5月現在、用地買収、電力・水道インフラの整備、そして実地施工を同時並行で進める超突貫工事が行われており、早期の完成を目指しています(ベトナム語の報道:VietTimes(2026/5/22)

サパ空港(ラオカイ省):

北部高山地帯の観光の起爆剤となる約6兆3000億ドン(約384億円)の新空港。2026年6月の最新の政府調整により、将来的な需要増を見据えて年間旅客キャパシティを最初は150万人、第二段階では300万人へ上方修正する計画変更が承認され、PPP(官民連携)投資家の選定(入札)が大詰めを迎えています。(ベトナム語の報道:Báo Lâm Đồng(2026/6/5)

このように、地方に「最新の空港」という器が続々と完成していく未来が見えているからこそ、それらを繋ぐ「短距離の定期便路線」が注目され、チャンスとして浮き彫りになっています。

3. 筆者(石黒)が注目したポイント

このニュースは、ATRというターボプロップ機の会社が関与しているため、彼らにとって都合の良いバイアスも入っていると思いますが、それでも興味深いと感じたのは、ベトナムの地方空港同士を結ぶことによる経済や社会の変化です。

今まではいったん大都市を経由してしか移動できず、費用も時間もかかった地方都市間の移動が直行便で移動できれば、人や物の移動が活発になり、利便性の向上だけでなく経済効果も大きそうです。

外国(日本)からのベトナム旅行でも今までは、いったんハノイやホーチミンに戻ってからしか移動できなかったものが、北部のサパと中部のフエの両方を直行便で素早く移動できるのであれば、新たな旅行プランとして旅行客の増加にもつながるでしょう。

また小型機による短距離空輸ネットワークが構築されれば、地方都市から地方都市へ、新鮮な食材を鮮度を保ったままで一気に届ける新しい物流ビジネスが成立します。

ハノイやホーチミンといった大都市への集中だけでなく、ベトナムの地方同士を繋ぐインフラとそれによって新たに生まれるビジネスの可能性、そんなことを感じさせるニュースでした。

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