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ベトナムは、世界2位の米輸出国なのに世界2位の米輸入国!その背景には何があるのか?(石黒が選ぶベトナムのニュース:2026/5/22)

ベトナムは、世界2位の米輸出国なのに世界2位の米輸入国!その背景には何があるのか?(石黒が選ぶベトナムのニュース:2026/5/22)

現地で報じられているニュースを日本人の視点から読み解き、リアルな現地事情を紹介していく、石黒が選ぶベトナムのニュース紹介、第16回目。

皆さんは「ベトナムの農業」と聞くと、どのようなイメージをお持ちでしょうか? 「メコンデルタの広大な水田」「世界有数の米輸出大国」といった、稲作を中心とした農業国の姿を思い浮かべる方が多いと思います。

確かにベトナムはタイやインドと並ぶ世界トップクラスの「米の輸出大国」ですが、実は今、その裏側で「世界第2位の米輸入国」になっているという、非常に驚くべき現象が起きています。今回は、この一見矛盾するようなニュースから、ベトナム農業の構造的な変化と新たなビジネスチャンスについて紹介します。

2026年5月21日のCafefニュース(原文はベトナム語) 
ベトナムが世界第2位の米輸入国である理由

1. 輸出大国ベトナムが、なぜ世界第2位の「米輸入国」に?

今回取り上げるのは、ベトナムの米の「輸入」に関する驚きのデータです。

米国農務省(USDA)の予測によると、2026年にベトナムは約390万トンの米を輸入し、2027年には400万トンに増加する見込みとあります。この輸入量は、フィリピン(約550万トン)に次いでなんと世界第2位であり、米の輸入国として知られる中国(330万トン)、ナイジェリア(290万トン)、欧州連合(EU)(約230万トン)、イラク(約200万トン)を上回る規模となっています。

ベトナムと言えば、米の輸出国としても知られており、2025年の米輸出国は、1位インド(2200万トン)、2位ベトナム(806万トン)とあり、以前2位であったタイを抜いたとも言われています。(2026年4月8日のベトナム語のニュースより)

米輸出国として知られているベトナムですが、米輸入国としては、あまり知られていないでしょう。

同じ米国農務省(USDA)のデータを使った、日本の農林水産省が出している「第26号特別分析トピック:世界のコメをめぐる事情」によると

このようにベトナムは、過去から輸出国TOP3には入る輸出大国であるものの、

輸入国の上位に入るのは、2023年(7位)になってからなど近年の変化です。

「米を大量に輸出している国が、なぜ世界で2番目に多く米を輸入しているのか?」と不思議に思うかもしれません。

今回の報道によると、この輸入の大部分は隣国カンボジアから持ち込まれる「籾(もみ)」や「低価格帯の白米・砕米」とあります。

カンボジアから輸入されるこれら低価格の米は、主にベトナム国内での「米粉麺(ブン、フォーなど)の製造」「お菓子作り」、そして「家畜の飼料」として消費されているとあります。また、カンボジア産の米は現在「ベトナムへの輸入関税0%」の恩恵を受けており、ベトナムの加工企業にとって生産コストを最適化するための重要な原料となっています。

2. ニュースの背景にある「ベトナムのリアルな事情」

なぜベトナムは、自国で米を作らずに輸入を活用しているのでしょうか?3つの理由を紹介します。

2-1. ベトナム農家の「高級米(輸出用)」へのシフト

これが最大の理由です。ベトナムの農家は現在、利益率の低い「国内加工用・飼料用の安い米」の生産をやめ、より高く売れるST25(世界一美味しい米コンテストで優勝した品種)やOM18などの「輸出向けの高品質な香り米」への栽培転換を猛スピードで進めています。

五つ星レストランのような、もちもち香ばしいST25米を炊く秘訣(2026年3月6日のベトナム語の報道より)

自分たちは高く売れる高級米を作って外貨を稼ぎ、国内の加工用や家畜の餌に必要な安い米は、土地代や人件費が安いカンボジアから輸入して補う、という明確な「棲み分け(分業)」が起きています。

2-2. 越境するベトナムの農業資本

ベトナムへ輸出されるカンボジアの農業は、種子、肥料、農薬、さらには収穫物の買い取りに至るまで、ベトナムの資材や資本に大きく依存しています。

実際、メコンデルタの農地レンタル料が1ヘクタールあたり1,500万〜2,600万ドン(約9万〜15万円)であるのに対し、カンボジアではわずか100〜300ドル(約1.6万〜4.8万円、260万ドン~780万ドン)と圧倒的に安価です。かつカンボジアでは、耕作されていない水田もたくさんあって土壌が肥沃とあります。

カンボジアの米輸出に関するベトナム語の報道より(2018年)

そのため、ベトナム人が国境を越えてカンボジアの土地を借り、そこでベトナム向けの品種を安く栽培して自国へ逆輸入するという「国境を越えた農業ビジネス」が一般化しています。

2-3. 農民の「脱・稲作」と利益率の低下 

一方で、ベトナムの狭い土地で稲作を続ける農民の利益率は圧迫されています。カンボジアからの安い米の流入により、国内の一般的な米の価格が下落し、「自分の土地で栽培しても薄利、土地を借りて米を栽培すれば赤字すれすれ」という厳しい状況にあります。 

3,000平方メートルを超える低収量の水田で、サ・ティ・サンさんの家族は苗用のカボチャ栽培に切り替えた。カボチャ栽培は米作よりも3~5倍の収益を上げている。」2026年1月9日のベトナム語の報道より

そのため、利益を求めて稲作から野菜や果物の栽培へと転換する農家も増えており、これが結果的に「安い米は輸入に頼らざるを得ない」という状況を加速させているともあります。

3. 筆者(石黒)が注目したポイント

このニュースから見えてくるのは、「ただ大量に米を作る国」から、「グローバルなサプライチェーンを構築し、より高付加価値な農業へとシフトする国」というベトナムの農業における進化です。

こういった状況を踏まえると、ベトナムの農業分野においても新たなビジネスチャンスの可能性を感じます。例えば、

  • スマート農業・高付加価値化の支援: ベトナム農家が「より高く売れる高級米や果物」へとシフトしている今、高度な土壌分析、ドローンを使った農薬散布、収量予測などのアグリテック(農業IT)分野
  • 収穫後(ポストハーベスト)の加工・保存技術: 高品質な農産物をブランド化し、高い価格で輸出するために必要となる高品質な乾燥装置、籾摺り機、そして鮮度を保つ低温貯蔵(コールドチェーン)の技術

といった分野のビジネスの可能性です。

「自国内では高付加価値の製品を作り、低付加価値の製品は輸入する」。この様なな産業構造の転換は、かつて日本も製造業などで通ってきた道でもあります。

ベトナムの農業では今、単なる「労働集約型の泥臭い作業」から「比較優位という考え方を体現し、資本とテクノロジーを駆使したビジネス」へと大きく変わろうとしています。

こういった変化をいち早くキャッチし、適切な技術とソリューションを提供することが、今後のベトナムビジネスの鍵になるのではないか・・・と感じさせるニュースでした。

石黒健太郎による「ベトナム経済ニュース」最新記事一覧はこちら

Articles by Kentaro Ishiguro(石黒健太郎) | Vitalify Asia Tech Blog
東南アジア駐在16年超、複数国で拠点立ち上げから経営までを歴任。ベトナムでのシステム開発の勘所から最新ビジネス事情まで、現地在住者ならではの視点で発信している。趣味はバックパッカー旅行。自らの足で稼いだリアルな情報も交え、企業の海外進出を後押しする。

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コラム | バイタリフィアジア
コラム記事一覧|オフショア開発やシステム開発の最新トレンド、成功のヒントを発信。経営層・開発担当者に役立つ情報をまとめています。

現地の「今」を肌で捉え、確実な事業戦略を描くために

今回ご紹介した内容だけでなく、ベトナム市場にはインターネット上の情報だけでは見えてこない「リアルなビジネスチャンス」と「新興国特有の落とし穴」が無数に存在します。

自社の技術やサービスをベトナムでどう展開すべきか?開発拠点や販売拠点を設立するには何から着手すべきか?

そうした課題を解決し、ベトナム出張を「確かな成果(実践プラン)」へと繋げるための特別なプログラムが開催されます。

実践型ビジネス出張ツアー「Ăng-Ten(アンテン)」

ベトナム拠点・IT開発センター設立の実践視察ツアー【Ăng-Ten】
現地プロ7社とのアポ調整・ホテル・移動がすべて完了。ベトナム出張が決まった新規事業担当者へ向けた、確かな判断材料を持ち帰るための超実践的ビジネスツアー。

「Ăng-Ten(アンテン、ベトナム語でアンテナを意味)」は、ベトナム最大の経済都市・ホーチミン市を実際に訪れ、現地で長年ビジネスを営む7名の専門家と直接つながる、2泊3日の密度の高いビジネス出張ツアーです。

💡 本ツアーで得られる3つの価値

  1. 誰に会うべきかが見える:法務(弁護士)・採用・金融(銀行)・BtoB営業・不動産など、現地で接点を持つべきスペシャリストと直接議論ができます。※弊社バイタリフィ アジアのDirector 石黒も、オフショア開発の専門家(講師)として本ツアーに登壇いたします!
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【開催スケジュール(2026年)】

  • 第2回目:6月17日(水)〜6月19日(金)
  • 第3回目:7月15日(水)〜7月17日(金)

※オプションで航空券の手配や延泊(観光・ゴルフ等)のご相談も可能です。

急成長するベトナム市場への進出や、新規事業の拠点設立をミッションとして任された皆様。事前情報だけで判断するのではなく、ぜひ現地の最前線を自分の目で確かめに来てください。ホーチミンでお会いできることを楽しみにしています!

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