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スマホ出荷台数が減少!一方でベトナムのAppleシェア拡大から見えるものとは?(石黒が選ぶベトナムのニュース:2026/5/21)

スマホ出荷台数が減少!一方でベトナムのAppleシェア拡大から見えるものとは?(石黒が選ぶベトナムのニュース:2026/5/21)

現地で報じられているニュースを日本人の視点から読み解き、リアルな現地事情を紹介していく、石黒が選ぶベトナムのニュース紹介、第15回目。

ベトナムでも今や生活に欠かせない機器であるスマートフォン。「誰もが最新のスマホを片手にSNSや動画を楽しんでいる」という活気ある姿をイメージする方も多いと思います。

しかし先日発表された報道では、ベトナムのスマートフォン市場で出荷台数が急落し、その落ち込みは東南アジアの平均よりも大きかったと報じられています。今回は、このニュースを元に、ベトナムの消費者の一面を紹介します。

2026年5月20日のVietBaoニュース(原文はベトナム語) 
ベトナムのスマートフォン市場は、東南アジアの下落幅よりも大きく落ち込んでいる

2026年5月19日のBloomberg Businessweek Vietnamニュース(原文はベトナム語)
 サムスンがAppleからベトナムスマートフォン市場1位の座を奪還

1. 全体の出荷台数は激減するも、販売単価は「過去最高」という矛盾

調査会社Omdiaのデータによると2026年第1四半期(1〜3月)の東南アジアのスマートフォン出荷台数は約2,160万台となり前年同期比で9%の下落を記録しました。そして重要な点は、ベトナム市場の落ち込みがこの東南アジア平均(9%減)よりもさらに大きく12%も減ったという点です。

Omdia社のWEB「Omdia:東南アジアのスマートフォン市場出荷台数は2026年第1四半期に9%減少、ベンダーはシェアよりも収益性を優先」(原文英語)より

この主な原因は、200ドル以下の低価格帯スマートフォン市場の急激な落ち込みであり、低価格帯の出荷台数だけでも30%以上減少したとあります。

しかし、東南アジア全体で出荷台数が減少しているにもかかわらず、東南アジアのスマートフォンの平均販売価格(ASP)は349ドルという過去最高を記録し、前年同期比で19%も上昇しているとあります。この理由として主にメモリコストの急激な上昇に起因したものとあり、メーカーがシェアよりも収益性を優先して値上げした結果、地域全体の端末価格を押し上げたとあります。

そしてもう1つ興味深いのがメーカー(ブランド)ごとの市場シェアです。ベトナムでは、サムスン29%、OPPO21%、Apple20%、Xiaomi18%、vivo4%でした。

このうちApple(iPhone)は、2つ目のBloomberg Businessweek Vietnamの記事でカウンターポイント・リサーチのデータとして、ベトナムにおける市場シェアを2024年第1四半期の12%から2025年第4四半期には26%へ拡大させたとあります。2026年の第1四半期は20%ですから、シェアは下がってはいますが、1年前の同時期よりは高いとあります。

Omdia社のWEB「Omdia:東南アジアのスマートフォン市場出荷台数は2026年第1四半期に9%減少、ベンダーはシェアよりも収益性を優先」(原文英語)より

そして調査対象となった東南アジア5ヵ国(インドネシア、フィリピン、ベトナム、マレーシア、タイ)の中で、上位5位内にAppleが入っているのは、ベトナム(20%)とタイ(15%)だけです。

ベトナムの方がタイよりもAppleのシェアが高いという事は、単価の高いiPhoneが東南アジア5ヵ国の中で一番売れている市場ともいえます。

2. ニュースの背景にある「ベトナムのリアルな事情」

このような状況が発生する背景と考えられる点について、現地で感じる3つのポイントを紹介します。

2-1. 「200ドル(約3.2万円)以下」が半数を占める価格敏感な層の買い控え

東南アジア全体で見ると、依然として販売されるスマホの60%以上が「200ドル(約520万ドン)以下の低価格帯」とも言われており、これはベトナムでも同じと考えられます。

しかし現在、DRAMやNANDメモリといったスマホ部品のコストが高騰しており、各メーカーは端末価格を値上げせざるを得ない状況にあります。

ベトナムの大手スマホ販売店のWEBより。安い機種では300万ドン(1.8万円)からスマホがあり、500万ドン(3万円)くらいまでのラインナップも多いが以前よりも全般的に金額が上がった感じがする

物価高や生活コストの上昇が進む中、安価なスマホの価格が少しでも上がると、この層の消費者はすぐに「今のスマホが完全に壊れるまで買い替えない」という決断を下します。

この価格感応度の高さが、ベトナムにおいても販売台数の激減に直結したのではないでしょうか。

2-2. ローン(割賦販売)の引き締めと審査の厳格化

これまでベトナムでのスマホ爆売りを支えていたのは、家電量販店が提供する「ゼロ金利キャンペーン」や消費者金融の割賦販売でした。 

しかし、昨年の信用供与の伸びや不良債権の増加に伴い、ベトナム国家銀行(SBV)の指導もあって金融機関が個人向けローンの審査を厳格化しています。(2026年1月12日信用市場は「ブレーキング」局面に入りつつある。

「気軽にローンを組んで、背伸びしてちょっと良いミドルクラスのスマホを買えていた層」が買いづらくなった結果、こういった層が買っていた価格帯のスマホ出荷台数に影響を与えたと考えられます。

2-3. ステータス・シンボルとしての「ハイエンド端末」への渇望 

一方で、経済成長の恩恵を受けた富裕層やアッパーミドル層にとっては、iPhoneや折りたたみスマホ(Galaxy Z Foldなど)は、単なる通信機器ではなく「成功の証(ステータス・シンボル)」という意味合いもあります。

ベトナムの大手スマホ販売店のWEBより。高い機種では6500万ドン(約39万円)もする

「どうせ買うなら相手に見せつけることもできる高級なもの」という意識があり、こういったプレミアム層の購買意欲は落ちるどころかむしろ熱を帯びていると考えられます。

3. 筆者(石黒)が注目したポイント

今回ニュースで感じたのは、ベトナムでのスマホ市場における変化です。今回取り上げたBloomberg Businessweek Vietnamの記事内でも以下のように書かれています。

(Appleのシェアが高い)この動向は、ベトナムのスマートフォン市場におけるますます顕著な特徴である「高級化」トレンドを反映している。つまり、ユーザーはミドルレンジやハイエンドの端末により多くのお金を費やすことを厭わないということだ。Omdiaによると、ベトナムは現在、調査対象となった東南アジア諸国の中でサムスンとアップルの市場シェアが最も高く、両ブランドを合わせた市場シェアは50%近くに達している。

「圧倒的なブランド力を持つ高価なスマホ(iPhoneやSamsung Galaxyのハイエンド機)」は比較的好調だが、それ以外はあまり売れず全体の「台数」は落ち込んでしまっている。

そしてこのスマホで見られた状況は、他の消費財やサービスなどでも発生しうるのではないかとも考えられます。

「コストパフォーマンスを徹底的にシビアに見極める層」「圧倒的な付加価値になら糸目をつけずにお金を払う層」と異なる消費者層がそれぞれ存在している。

こういった市場の状況や変化をどう捉え、自社製品のターゲットをどこに絞るのか。日本企業にとってもベトナムマーケットを開拓していくうえで、非常に興味深いニュースだと感じました。

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