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大学の学費が最大40%高騰!「授業料は平均年収1年分」という現実から見えてくるものとは?(石黒が選ぶベトナムのニュース:2026/5/12)

大学の学費が最大40%高騰!「授業料は平均年収1年分」という現実から見えてくるものとは?(石黒が選ぶベトナムのニュース:2026/5/12)

現地で報じられているニュースを日本人の視点から読み解き、リアルな現地事情を紹介していく、石黒が選ぶベトナムのニュース紹介、第8回目。

皆さんは「ベトナムの若者や大卒人材」と聞くと、どのようなイメージをお持ちでしょうか? 「若くて活気がある」「優秀なITエンジニアが多い」、そして「日本と比べて人件費や生活コストが安く、採用しやすい」といった印象を持つ方が多いかもしれません。

確かに勤勉で優秀な若者が多いのは事実ですが、彼らを取り巻く「教育コスト」の現状は、日本の皆さんの想像をはるかに超えるスピードで高騰しています。もはや「物価の安い途上国」という古い認識では太刀打ちできない、そんなベトナムのリアルな社会変化を象徴するニュースを紹介します。

2026年5月10日のVnExpressニュース(原文はベトナム語) 
ホーチミン市国家大学の6つの加盟大学が学費を値上げ(最大40%)

2026年4月20日のVnExpressニュース(原文はベトナム語) 
教育副大臣「大学生1人を養う費用は、労働者の平均年収1年分に匹敵する」

1. トップ国立大学の学費高騰と、教育副大臣の衝撃的な言葉

今回取り上げるのは、ベトナムの教育費の高騰に関する2つのニュースです。

一つ目は、ベトナム南部で最大かつ最高峰の国立大学ネットワークである「ホーチミン市国家大学(VNU-HCM・学生数10万人以上)」の学費改定についてです。報道によると、加盟8校のうち実に6校が一斉に学費の値上げを発表しました。一般的な値上げ幅は5〜15%ですが、驚くべきことに「情報工科大学(IT専門)」の集積回路設計プログラムに至っては、なんと最大40%という強気な値上げに踏み切りました。

ポリテック大学の英語での指導なら授業料は年8800万ドン(約52.8万円)、シドニー工科大学(UTS)との共同による国際工学学士課程なら年2億6800万ドン(約160万円)と高額。

そして二つ目は、この学費高騰に関連して、4月にベトナムの教育副大臣がある会議で語った言葉です。 「現在、大学生を1人育てるための費用(学費や生活費、家賃など)は年間約1億ドン(約60万円)に上り、これは一般的な労働者の平均年収に匹敵する金額です。

2. ニュースの背景にある「ベトナムのリアルな事情」

なぜ、最高学府である国立大学の学費がこれほど急激に高騰しているのでしょうか。現地にいるからこそ肌で感じる、3つの事実を紹介します。

2-1. 国公立大学の「財務自立化(補助金カット)」 

かつてのベトナムでは「国立大学=学費が非常に安い」というのが常識でした。しかし近年、ベトナム政府は大学に対する国家予算(補助金)を段階的に削減し、各大学に「財務の自立」を求めています。大学側は、優秀な教授陣を確保し、最新の研究設備を導入して国際競争力を高めるため、学生からの学費を大幅に引き上げざるを得ないという構造的な背景があります。

2-2. IT学部の「最大40%値上げ」が意味するもの 

今回、一例として挙げた情報工科大学が最大40%もの値上げに踏み切れたのは、「それでも絶対に学生が集まる」という自信があるからです。

ベトナムの大学

特に「集積回路設計プログラム」というのは、いま世界中で注目されている半導体の技術者に繋がる過程です。「高い学費を払ってでも卒業後に高給取りになれれば、回収できる」という計算が、親にも学生にも立っているのです。

2-3. 「平均年収を全て注ぎ込む」凄まじい教育熱 

副大臣が指摘した「年間1億ドン(約60万円)」という学生生活費。

統計局などのデータによると、2025年の労働者の平均収入は、月840万ドンとあります。詳細は、男性950万ドン、女性720万ドン。都市部の平均で月1010万ドン、農村部の平均で月730万ドン(2026年1月5日のベトナム語の報道より)

縫製工場で働く労働者の写真

よって年間1億ドンという金額は、ベトナムの一般的な労働者の平均年収とほぼ同額といえます。ベトナムの親たちは、儒教思想の影響もあり教育熱が非常に高く、自分の生活を切り詰めてでも、あるいは借金をしてでも子供を大学へ送ります。大学生たちは、家族の血の滲むような犠牲と期待を一身に背負ってキャンパスに通っているといえます。

3. 筆者(石黒)が注目したポイント

このニュースから見えてくるのは、今後のベトナム市場でビジネスを展開する上での「人材に対する認識」このアップデートの必要性です。

ベトナムの優秀な大卒人材(特にエンジニアなど)は、親の平均年収を丸々注ぎ込むような高額な教育費を払って大学で学んできた。そして卒業後は、家族への恩返し(仕送り)や、自らの投資(学費)を回収するため、非常にシビアに「高い給与」と「成長できるキャリアパス」を求めている。

一方で日本の会社が、日本では新卒人材がこのくらいだから、平均所得の低いベトナムではこのくらいだろという感覚で給与水準を設定し、もしくは採用後もそういった評価をすることで、他国の企業(例えば欧米、韓国、中国など)に人材を奪われてしまうというケースはベトナムでよく聞く話でもあります。

2026年4月に大学で行われたTDMU就職フェアの様子

逆にこういうベトナムの学費高騰を踏まえたうえで、例えば、日本企業が学生向けに「入社前の奨学金制度」を提供するなどすれば、彼らにとって非常に魅力的な選択肢となり、優秀な人材を囲い込む武器の1つにもなりえるでしょう。

「安価な労働力」だけでなく「多額の教育投資を受けた若者たち」もいる、同じ国内でギャップの大きな国。急激に高騰する学費と、それに食らいつくベトナムの若者たちのニュースは、ベトナム人材の「質の向上」と「彼らが求める対価の上昇」を私たちに強烈に突きつけています。ベトナムでの採用やビジネス戦略を練る上で、非常に示唆に富むニュースだと感じました。

石黒健太郎による「ベトナム経済ニュース」最新記事一覧はこちら

Articles by Kentaro Ishiguro(石黒健太郎) | Vitalify Asia Tech Blog
東南アジア駐在16年超、複数国で拠点立ち上げから経営までを歴任。ベトナムでのシステム開発の勘所から最新ビジネス事情まで、現地在住者ならではの視点で発信している。趣味はバックパッカー旅行。自らの足で稼いだリアルな情報も交え、企業の海外進出を後押しする。

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コラム | バイタリフィアジア
コラム記事一覧|オフショア開発やシステム開発の最新トレンド、成功のヒントを発信。経営層・開発担当者に役立つ情報をまとめています。

現地の「今」を肌で捉え、確実な事業戦略を描くために

今回ご紹介した内容だけでなく、ベトナム市場にはインターネット上の情報だけでは見えてこない「リアルなビジネスチャンス」と「新興国特有の落とし穴」が無数に存在します。

自社の技術やサービスをベトナムでどう展開すべきか?開発拠点や販売拠点を設立するには何から着手すべきか?

そうした課題を解決し、ベトナム出張を「確かな成果(実践プラン)」へと繋げるための特別なプログラムが開催されます。

実践型ビジネス出張ツアー「Ăng-Ten(アンテン)」

ベトナム拠点・IT開発センター設立の実践視察ツアー【Ăng-Ten】
現地プロ7社とのアポ調整・ホテル・移動がすべて完了。ベトナム出張が決まった新規事業担当者へ向けた、確かな判断材料を持ち帰るための超実践的ビジネスツアー。

「Ăng-Ten(アンテン、ベトナム語でアンテナを意味)」は、ベトナム最大の経済都市・ホーチミン市を実際に訪れ、現地で長年ビジネスを営む7名の専門家と直接つながる、2泊3日の密度の高いビジネス出張ツアーです。

💡 本ツアーで得られる3つの価値

  1. 誰に会うべきかが見える:法務(弁護士)・採用・金融(銀行)・BtoB営業・不動産など、現地で接点を持つべきスペシャリストと直接議論ができます。※弊社バイタリフィ アジアのDirector 石黒も、オフショア開発の専門家(講師)として本ツアーに登壇いたします!
  2. 何から着手すべきかが整理される:すべて日本語での実践講義を通じて、拠点設立に必要な実務の順番と、見落としやすい注意点(成功例・失敗例)をまとめて持ち帰れます。
  3. 帰国後の相談先(人脈)が確保できる:質疑応答や後日の個別面談を通じて、自社の悩みを直接ぶつけることができ、帰国後すぐに動ける体制が整います。

【開催スケジュール(2026年)】

  • 第1回目:5月27日(水)〜5月29日(金)
  • 第2回目:6月17日(水)〜6月19日(金)
  • 第3回目:7月15日(水)〜7月17日(金)

※オプションで航空券の手配や延泊(観光・ゴルフ等)のご相談も可能です。

急成長するベトナム市場への進出や、新規事業の拠点設立をミッションとして任された皆様。事前情報だけで判断するのではなく、ぜひ現地の最前線を自分の目で確かめに来てください。ホーチミンでお会いできることを楽しみにしています!

▼お申し込み・スケジュール詳細はこちら

実践型ビジネス出張ツアー「Ăng-Ten(アンテン)」

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