ベトナム眼科・近視手術市場のリアル!若者の脱眼鏡ニーズと医療ビジネスの商機(石黒が選ぶベトナムのニュース:2026/7/2)

現地で報じられているニュースを日本人の視点から読み解き、リアルな現地事情を紹介していく「石黒が選ぶベトナムのニュース紹介」、第45回目。
今回は、ベトナムの「眼科・近視手術」にスポットを当てます。
現在、世界全体で子供の3分の1、日本では86%が近視(屈折異常)に直面しているという衝撃的なデータ※もありますが 、スマートフォンなどの急速な普及を背景に、ベトナム国内でも視力矯正(レーシック手術等)への関心が高まっています 。
ベトナムの大手ブラウザ・広告プラットフォームであるCốc Cốc(ココ)が、2026年5月にプラットフォーム上の3,000万人以上のユーザーの検索行動データと、3,073名のアンケート回答をもとに発表した最新の『2026年 眼科市場レポート』から、現地のリアルな消費者心理と最新トレンドを読み解いていきます。
(※2024年CNNの報道に書かれている英眼科学会誌に発表された論文より。)
2026年6月8日Cốc Cốc社発表したベトナム語のレポート「消費者視点から見た2026年の眼科市場」より
1. 数字で見る、視力矯正・眼科医療への関心の高まり
Cốc Cốcの検索データ分析によると、ベトナム国内で「眼科手術サービス」への需要が大幅に増加していることが判明しました。
具体的には、「近視手術(屈折矯正手術)」に関する2026年第1四半期(1~3月)の検索数は、2024年の同時期と比較して38.6%増加、「白内障手術」に関する検索も21.1%増加したとあります。
ベトナムでは例年、「近視手術」の検索ボリュームは上半期にかけて右肩上がりに増加し、毎年7月と10月頃に大きなピークを迎える傾向があります 。これは、夏休み期間や新学期・新生活のスタートに合わせて目の治療や手術を検討する人が多いためと考えられます。

しかし2024年と2025年を比較してわかるようにグラフはフラットになってきており、季節要因でニーズが高まるものから、年間を通して必要とされる手術になっていると分析されています
2. ニュースの背景にある「ベトナムのリアルな事情」:
このような近視手術に対するニーズ増加の裏側には、どのような背景があるのでしょうか。レポートの内容も踏まえて、興味深い4つの点を見ていきます。
2-1. 国民病ともいえる屈折異常(主に近視)
ベトナムの街を歩くと、子供を含めて眼鏡を利用している人が多い印象を持ちます。事実、ベトナム保健省の統計によると、人口の約15~40%にあたる1400万~3600万人が屈折異常(主に近視)に悩まされているとあります。(2026年1月26日のベトナムメディアLaoDongの報道より)
この症状は特に都市部で顕著となっており、都市部の有病率(30~40%)は、農村部(15~20%)の約2倍の水準となります。

さらにハノイやホーチミンといった大都市では子供の50%以上が屈折異常を抱えており、一部の主要大学の学生の近視率は70%を超えているなど、小さいころからの生活スタイル(特にスマホ・ゲームの長時間利用)や、勉強方法などによって目を悪くしていると考えられます。
そのため10代の若いうちから近視を早く治したいというニーズが生まれています。
2-2. 近視手術を検討する動機、男女の違い
ベトナムの若者(20〜45歳)の間でレーシック手術を検討する最大の動機は、かつて主流だった「目が良くなりたい」という単純な理由から、「仕事や学業上の必要性」へとシフトしています 。この項目は2024年(34%)が、2026年(47%)へと+13%増加しており、最も強い成長ドライバーとなっています 。
特に男性においては、視力が就職やキャリア、特定の職業(技術職や公務員、軍・警察関係など)に直結するため、非常に現実的な投資としてレーシックを捉えています 。
◆仕事や学業上で必要と回答した割合
⼥性:31%
男性:38%
一方で女性は、「眼鏡を外すことで自分に自信を持ちたい」、「(眼鏡をはずして)外⾒を向上させたい」、「日々の生活を便利にしたい」といったクオリティ・オブ・ライフ(QOL)の向上や男性とは異なる自己投資としての側面を強く求めているのが特徴です 。
◆自信を持ちたいと回答した割合
⼥性:56%
男性:47%
◆外⾒を向上させたいと回答した割合
⼥性:62%
男性:54%
◆日々の生活を便利にしたいと回答した割合
⼥性:69%
男性:54%
2-3. 近視手術の認知と意思決定をするチャネルの違い
そして近視手術をどうやって知り、どこで手術を受けるのか。これらに影響する媒体チャネルも調査レポートには明記されていました。
◆広告などを認知するチャネル
・オンライン広告:50%
・従来型広告:40%
・口コミ:37%
・病院/診療所/眼鏡店での広告:29%
・輸送車両に貼られた広告:18%
・イベント/セミナー:17%
・野外/屋内広告:16%

◆意思決定に影響するチャネル
・SNS:51%
・検索エンジン:43%
・病院のウェブサイト:41%
・オンライン動画共有・視聴プラットフォーム:30%
・ウェブサイト上の記事や情報という形の広告:27%
・ブログ/フォーム:21%
・バナー広告/ウェブサイト広告:14%
認識する場所として半数がオンライン広告を挙げているものの、実際の医療機関選択に当たっては、SNSにおける評判や投稿などが影響しており、20~30代のライフスタイルと合致します。
2-4. 眼科病院の選択に影響を与える要因及び予算
調査レポートには、眼科病院を選ぶ際に患者が重視するポイントも書かれていました。
医師の専⾨知識や設備、そして保険が適用可能かといった点が重視されています。

ちなみに手術に関わる予算も掲載されており、

半数が2000万ドン(約12万円)未満ですが、3500万ドン(約21万円)まで含めると4分の3となります。なお参考までに日本における近視手術の相場は、両目で約20万円~40万円ほどになります。
また調査レポートの別ページには、55%が分割払いを検討しているといった点も紹介されています。
3. 筆者(石黒)が注目したポイント:
今回の調査レポートを見て非常に興味深いと感じたのは、スマホの普及などにともなって近視が急増し、近視手術が通年での安定需要へと移行している現状に加え、学業やキャリア、さらには外見の向上など、ベトナムの若い世代が「脱・眼鏡」の先にある自分自身の価値向上(QOL)に対して極めて積極的にお金を払っているという変化です。
そして、医療機関の認知から実際の意思決定において、検索エンジンやSNSといったオンラインチャネルがすでに絶大な影響力を持っています。今回は調査レポートの数字にはまだありませんでしたが、今後はこの情報収集や比較検討のチャネルに、AI検索(ChatGPTやGemini)が確実に深く入り込んでくると考えられます。
現在、日本の高度な医療サービスやクリニックも続々とベトナムへ進出していますが、今後この成長する現地のマーケットを開拓していくにあたっては、日系が得意とする「高い安全性や最先端の医療技術」という強みを、現地のSNSやWeb、そしてこれからのAI検索に最適化させながら、いかに透明性の高いストーリーとして消費者に届けていけるかが極めて重要になる。そんな一歩先を見据えたマーケティングの必要性を感じさせる、非常に示唆に富んだレポートでした。

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