ベトナムの仮想通貨(ビットコイン)規制とFintech市場:大学の学費支払いやICOの萌芽

ビットコインの価格は68万円にも達するなど日本で日々ニュースになっている仮想通貨ですが、ベトナムではどのような状況なのかについて調べてみました。(タイトル画像は、XEのサイトにおけるBitcoinとベトナムドンのチャートより)
ベトナムの大学で「ビットコインによる学費支払い」の衝撃
2017年10月、ベトナムの私立大学であるFPT大学が「留学生からの学費支払いにビットコインを認める」と発表し、現地メディアで大きな話題を呼びました。

対象となったのはアフリカ(ナイジェリアなど)からの留学生約100名です。外貨送金が困難な国からの留学生に対し、ベトナム国外からビットコインのネットワークを使って送金させ、大学側(あるいは仲介業者)がそれを現金(ベトナムドン)に換金して授業料として受け取るという、ブロックチェーンの国際送金の利点を活かしたスキームでした。
ベトナム国内での仮想通貨「決済」は非合法
FPT大学の事例は、あくまで「海外からの送金経路」としての活用でしたが、ベトナム国内の店舗(ハノイの自動車店やホーチミンのカフェ、旅行代理店など)でも、こっそりとビットコイン決済を受け入れる小規模な動きが出始めていました。

しかし、これに対してベトナム中央銀行は即座に釘を刺します。2017年10月28日、中央銀行は「ビットコインや他の仮想通貨は、ベトナムにおける合法的な支払い手段ではない」という文書を発行しました。
ベトナム国内の商取引において、法定通貨(ベトナムドン)以外での「決済」を行うことは明確に違法であり、違反した場合は最大2億ドン(約100万円)の行政罰、さらに2018年からは刑事訴追の対象となる厳しい方針が示されました。

「決済」はNGだが、「投資・保有・ビジネス活用」はグレーゾーン
決済手段としての使用は厳しく禁じられた一方で、ベトナム国民がビットコインを「投資・保有・マイニング(採掘)・取引所での売買」を行うこと自体を禁止する法律は、当時は存在していませんでした。
つまり、仮想通貨を投資対象の「資産」として扱うことはグレーゾーンのまま容認されており、政府は「2018年8月までに法的な枠組み(課税ルールなど)を整備する」という方針を発表するに留まっていました。
急拡大するベトナムの仮想通貨ビジネス
法整備を待たずに、現地のビジネスは急速に動き出していました。
(1)仮想通貨取引所とビットコインATMの登場

ホーチミン市内には、ATMのように現金を入れてビットコインを購入できる端末が登場しました。また、ベトナム国内の取引所「Bitcoin Vietnam」は、1日100人のペースで新規登録者を増やし、登録者数は約5万人に達していました。

特に需要が高かったのが「国際送金サービス」です。韓国などで出稼ぎを行うベトナム人労働者が、高い銀行手数料を避けて、1回数ドルの手数料で済む仮想通貨送金を利用し、母国へ仕送りを行うという実用的なユースケースが確立しつつありました。
(2)自国通貨への不信感が暗号資産の普及を後押し
当時の専門家の予測では、「ベトナムの仮想通貨利用者は10年間で3,000万人規模に拡大する」と分析されていました。
この背景には、ベトナムドンという自国通貨のインフレ(価値下落)に対する慢性的な不安と、外貨(ドルなど)への両替・国外送金に対する厳格な政府規制が存在します。自国通貨以外の「逃避資産」を求める新興国特有のニーズが、仮想通貨の普及を強く後押しする土壌となっていました。
(3)ICO(イニシャル・コイン・オファリング)への挑戦
さらに、ベトナムのスタートアップ企業が資金調達の手段としてICO(独自の仮想通貨・トークンを発行して資金を集める手法)を計画する事例も登場しました。スマート自動販売機を展開する企業が、ビジネスモデルの中に仮想通貨エコシステムを組み込み、数百万ドル規模の調達を目指すなど、テクノロジーを活用した新たな挑戦が始まっていました。
バイタリフィアジアでは、こうした現地のFintech・暗号資産市場の黎明期から動向を注視し、ブロックチェーン技術を活用したシステム開発や実証実験(PoC)の環境を提供してきました。最新のテクノロジーを活用したITビジネス展開をご検討の際は、ぜひ当社の知見をご活用ください。
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