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ベトナム商工会議所が評価した地方自治体34省、その結果と見えてくるものとは?(石黒が選ぶベトナムのニュース:2026/5/18)

ベトナム商工会議所が評価した地方自治体34省、その結果と見えてくるものとは?(石黒が選ぶベトナムのニュース:2026/5/18)

現地で報じられているニュースを日本人の視点から読み解き、リアルな現地事情を紹介していく、石黒が選ぶベトナムのニュース紹介、第12回目。

約1年前の2025年7月1日、ベトナムの地方行政単位である省や直轄市は、63あったものが再編されて34と半数近くまで減りました。これは日本で言うなら47都道府県が半分くらいに減ったようなものです。

その再編結果は、どうだったのか?どこの省のビジネス環境は他と比べてどうなのか?これがニュースやWEBで公開されていましたので、解説します。

2026年5月15日のVnEconomyニュース(原文はベトナム語)
VCCIが2025年ベトナム民間経済レポートを公表、PCI 2.0およびBPIの初版を発表

1. ベトナム34の省と市の評価結果

今回取り上げるのは、ベトナム商工会議所(VCCI)が2026年5月15日に発表した「ベトナム民間セクター 年次報告書2025および地方競争力指数2025」、地方政府のガバナンスと民間企業の活力を測るレポートに関するニュースです。

ベトナム進出を検討する外資系企業にとって、各省のビジネス環境の良さやインフラ整備状況を数字で比較できる指標があります。それが「PCI(Provincial Competitiveness Index=省レベル競争力指数)」。

今回「PCI 2.0」と銘打たれているのは、ベトナムが「63から34への省・直轄市の大規模な統廃合」と「2階層の地方政府モデルへの移行」という、歴史的な行政改革を断行した為、測定方法を大幅にアップグレードし、それをもって「PCI 2.0」とした為です。

34の地域を以下の9つの項目に分けて評価しています。その各項目名と中央値は以下の通り

CSTP 01 — 市場参入:7.07
CSTP 02 — 資源へのアクセス:6.05
CSTP 03 — 透明性:6.93
CSTP 04 — 行政手続き遵守コスト:7.31
CSTP 05 — 非公式コスト:7.6
CSTP 06 — 公正な競争:5.51
CSTP 07 — ビジネス支援政策:5.43
CSTP 08 — 法制度:7.29
CSTP 09 — 積極的でサービス志向の自治体:5.46

色が付いているエリアが各項目の最小値と最大値の範囲で、数字が中央値。レポート原文のサイト(ベトナム語)より。
34の地方自治体の各項目ごとのPCI評価。一番左が省や市の名称、続く左からCSTP 01~CSTP 09の各項目ごとの結果数値。レポート原文のサイト(ベトナム語)より。

今回、見事「最高レベルのガバナンス(優秀グループ)」に選ばれたのは、バクニン省、ダナン市、ハイフォン市、フート省、クアンニン省の5地域です。

バクニン省は、積極的なガバナンス(6.67ポイント)と行政手続きの遵守コスト(8.93ポイント)で首位に。ダナン市は、市場参入で8.70ポイントを獲得し全国トップ。ハイフォン市は、9つの構成要素指標のうち7つが上位10位以内にランクイン。

フートー省は、資源へのアクセスで全国2位にランクイン。クアンニン省は、公正な競争と積極的でサービス志向の自治体運営で高い地位を維持、という結果でした。

2. 民間セクター業績指数(BPI)と躍進する民間企業

さらに今回、行政の質を測るPCIと並行して、民間セクターの発展とイノベーション能力を測る新指標「BPI(Business Performance Index=民間経済パフォーマンス指数)」が初めて導入され、こちらも公開されています。このBPIの初代トップ3には、ホーチミン市、ハノイ市、クアンニン省が輝いています。

34の地方自治体の各項目ごとのBPI評価。一番左が省や市の名称、続く左から民間セクターの発展度、イノベーション能力、順位を決めるBPIポイントとなる。レポート原文のサイト(ベトナム語)より。

ちなみに報道によると相関分析の結果、2022年の地方競争力指数(PCI)と2025年の企業業績指数(BPI)との間には、統計的な関連性が認められ、政策効果には約3年のタイムラグがあることが確認されてたとあります。よって今回PCIが高かったところは、2028年にBPIが高いと言えるのかもしれません。

そしてこのレポートが浮き彫りにしたのは、ベトナムの民間企業(外資や国営ではない純粋な地場企業)の凄まじい成長です。

2025年末時点で、活動中の企業数は100万社を突破(前年比6.6%増)、さらに約610万の個人経営ビジネスが存在し、国内の全雇用の50.2%にあたる約2,600万人の雇用を創出しているとあります。2025年単年での新規参入企業数は約29万7,500社(前年比27.4%増)と過去最高を記録しまし、企業の85.7%が事業継続または拡大を報告とあります。

VCCIのホ・シー・フン会長は、2030年までに200万社の企業を創出するという目標を実現するためには、政策を経営中心の考え方からパートナーシップ中心の考え方へ、手続き上の負担軽減から企業の競争力強化へと大きく転換する必要があると述べています。

3. ニュースの背景にある「ベトナムのリアルな事情」

なぜ今、ベトナムはこれほどまでにドラスティックな変化を遂げているのでしょうか?現地にいるからこそ肌で感じる、3つの事実を紹介します。

3-1. 外資依存からの脱却と「民間企業こそが主役」という国家方針

かつてのベトナム経済は、安価な労働力を武器にした外資系企業(FDI)の輸出と、インフラを牛耳る巨大な国営企業に大きく依存していました。

しかし近年、政府は「民間経済こそが国家経済の最も重要な原動力である」という方針(決議68号)を明確に打ち出し、法整備を進めています。外資に頼るだけでなく、地場企業を育て自国の力で経済成長を牽引するフェーズへとシフトしています。

3-2. 行政のスリム化による「スピードと透明性」の追求

63省から34省への統廃合は、単なる地図の変更ではありませんでした。無駄な行政コストの削減、縦割り行政の打破、そして許認可スピードの向上による自治体間の競争を狙ったものでもありました。

今回のPCI 2.0でトップ5に評価された省市は、この行政のデジタル化や企業のコンプライアンス費用(手続きにかかる時間や不透明なコストなど)の削減にいち早く成功した地域とも言えます。

3-3. 企業の「数」から「質」への転換

これまでは「いかに企業を誘致し登記させるか」が重視されていましたが、新指標「BPI」の導入は、「企業が実際に市場でどれだけイノベーションを起こし利益を上げているか」を評価しています。

ホーチミンやハノイといった大都市がBPIでトップに立つのは、優秀な人材と資本が集まり、実際にビジネスの果実を生み出すエコシステムが機能しているからといえます。

4. 筆者(石黒)が注目したポイント

このニュースから読み取れるのは、地方行政区画をドラスティックに変更し、かつそれを数字データで客観的に評価して比較する、こういう新しい試みが次々と行われているベトナムの「今」です。

ベトナムでは、過去からの経緯による様々な非効率や、今回のPCIでも取り上げられていたCSTP 05 の項目「非公式コスト」が発生しているのもまた事実です。しかしそれさえも指標として数値化して公開してしまう。

もちろんその数値データが、日本企業から見た時にどの程度合致しているのかという点はありますが、地方自治体でさえもこういう指標で客観的に比較されている。現地の「今」のデータを正しく捉えることの重要性を痛感させられるニュースだと感じました。

石黒健太郎による「ベトナム経済ニュース」最新記事一覧はこちら

Articles by Kentaro Ishiguro(石黒健太郎) | Vitalify Asia Tech Blog
東南アジア駐在16年超、複数国で拠点立ち上げから経営までを歴任。ベトナムでのシステム開発の勘所から最新ビジネス事情まで、現地在住者ならではの視点で発信している。趣味はバックパッカー旅行。自らの足で稼いだリアルな情報も交え、企業の海外進出を後押しする。

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コラム | バイタリフィアジア
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現地の「今」を肌で捉え、確実な事業戦略を描くために

今回ご紹介した内容だけでなく、ベトナム市場にはインターネット上の情報だけでは見えてこない「リアルなビジネスチャンス」と「新興国特有の落とし穴」が無数に存在します。

自社の技術やサービスをベトナムでどう展開すべきか?開発拠点や販売拠点を設立するには何から着手すべきか?

そうした課題を解決し、ベトナム出張を「確かな成果(実践プラン)」へと繋げるための特別なプログラムが開催されます。

実践型ビジネス出張ツアー「Ăng-Ten(アンテン)」

ベトナム拠点・IT開発センター設立の実践視察ツアー【Ăng-Ten】
現地プロ7社とのアポ調整・ホテル・移動がすべて完了。ベトナム出張が決まった新規事業担当者へ向けた、確かな判断材料を持ち帰るための超実践的ビジネスツアー。

「Ăng-Ten(アンテン、ベトナム語でアンテナを意味)」は、ベトナム最大の経済都市・ホーチミン市を実際に訪れ、現地で長年ビジネスを営む7名の専門家と直接つながる、2泊3日の密度の高いビジネス出張ツアーです。

💡 本ツアーで得られる3つの価値

  1. 誰に会うべきかが見える:法務(弁護士)・採用・金融(銀行)・BtoB営業・不動産など、現地で接点を持つべきスペシャリストと直接議論ができます。※弊社バイタリフィ アジアのDirector 石黒も、オフショア開発の専門家(講師)として本ツアーに登壇いたします!
  2. 何から着手すべきかが整理される:すべて日本語での実践講義を通じて、拠点設立に必要な実務の順番と、見落としやすい注意点(成功例・失敗例)をまとめて持ち帰れます。
  3. 帰国後の相談先(人脈)が確保できる:質疑応答や後日の個別面談を通じて、自社の悩みを直接ぶつけることができ、帰国後すぐに動ける体制が整います。

【開催スケジュール(2026年)】

  • 第1回目:5月27日(水)〜5月29日(金)
  • 第2回目:6月17日(水)〜6月19日(金)
  • 第3回目:7月15日(水)〜7月17日(金)

※オプションで航空券の手配や延泊(観光・ゴルフ等)のご相談も可能です。

急成長するベトナム市場への進出や、新規事業の拠点設立をミッションとして任された皆様。事前情報だけで判断するのではなく、ぜひ現地の最前線を自分の目で確かめに来てください。ホーチミンでお会いできることを楽しみにしています!

▼お申し込み・スケジュール詳細はこちら

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