曖昧な要件を見積もり可能にするAgent Skillを開発しました。
Requirement Blueprintは、短く曖昧な顧客要件を、見積もり可能なプロジェクト計画へ整理するAgent Skillです。CONFIRMED・ASSUMED・NEED CLARIFICATIONを区別し、タスク分解や見積もりリスクを可視化。CursorとCodexを用いた40回のベンチマーク結果や導入方法も紹介します。

目次
プロジェクトを開始する際、顧客から提示される要件は、数行程度の短い説明にとどまることが少なくありません。
例えば、次のような要件です。
ユーザーが近くのバドミントンコートを検索し、空いている時間帯を予約できるモバイルアプリを作りたい。
コートのオーナーも、コートと予約を管理できるようにしたい。
しかし、この要件からチームが見積もりを行えるほど明確な計画を作るまでには、まだ多くの不明点があります。
「予約を管理する」とは、具体的に閲覧、承認、キャンセル、日程変更のどこまでを指すのでしょうか。
決済機能は必要でしょうか。
承認フローは必要でしょうか。
AIがこれらを推測したままタスクを分解すると、その後の見積もりが、顧客の確認を得ていない要件に基づいて作成される可能性があります。
この問題に対応するため、私は Requirement Blueprint を開発しました。これは、開発を始める前にAIがBAまたはプリセールスアナリストの役割を担えるようにするAgent Skillです。
Requirement Blueprintのソースコード、導入手順、入力例、ベンチマーク結果は、以下のリポジトリで公開しています。現在使用しているAIエージェントにスキルを導入するほか、カスタマーブリーフを使って直接実行し、要件がどのように分析されるかを確認できます。
リポジトリ:Requirement BlueprintのGitHubリポジトリ
Requirement Blueprintでできること
短いカスタマーブリーフを基に、AIが次の内容を作成できるよう支援します。
- プロジェクトスコープ
- 機能一覧
- アクター
- シナリオ
- ユーザーフローとダイアグラム
- プロジェクトフェーズ
- タスク分解
- 依存関係
- 未解決の質問
- 見積もりリスク
- 見積もりワークシート
重要なポイントは、CONFIRMED、ASSUMED、NEED CLARIFICATION、OUT OF SCOPEを明確に区別し、デリバリーの状態についてもREADYまたはBLOCKEDとして扱うことです。
例えば、顧客が次のように説明したとします。
Court owners can manage bookings.
このとき、スキルはすぐに次の状態が含まれると推測しません。
approve
reject
cancel
reschedule
refund
代わりに、manageに実際にどの操作が含まれるのかを顧客が明確にするまで、機能を次の状態に保つことができます。
CONFIRMED + BLOCKED
メインスキルに加えて、リポジトリには次のスキルも含まれています。
/generate-slide
/generate-estimate
これらを使用すると、要件計画からPDF/PPTX形式のスライドや、チームが見積もりに使用できるExcelワークシートを作成できます。
実際の効果
Requirement BlueprintによってAIの要件分析が本当に改善されるかを確認するため、10件の異なるプロジェクト要件を使用したベンチマークを作成しました。各要件は、プロジェクト初期によく受け取る要件と同様に、意図的に短く、一部に不明点を残しています。
ベンチマークには、バドミントンコートの予約、ECサイト、診療予約、タスク管理などのユースケースに加え、情報が不十分な場合にAIが要件を勝手に追加するかどうかを確認するための特殊なケースも含まれています。
各要件を次の4つの条件でテストしました。
| Agent | スキル未使用 | スキル使用 |
|---|---|---|
| Cursor | ✓ | ✓ |
| Codex | ✓ | ✓ |
各要件を4回ずつ実行するため、10件の要件によるベンチマークの総実行回数は次のとおりです。
10 requirements
× 2 agents
× 2 conditions
= 40 runs
同じ要件に対してスキルを使用した場合と使用しなかった場合の両方を実行することで、スキルの出力だけを個別に評価するのではなく、Requirement Blueprintによってどのような違いが生まれるのかを直接比較できます。
評価方法
各出力は10項目で評価し、それぞれを0点から5点で採点します。そのため、1回の実行における最高点は50点です。
| 評価項目 | 評価内容 |
|---|---|
| Requirement Understanding | AIが要件を正しく理解し、確認済みの情報と仮定を区別できているか |
| Scope Clarity | スコープが明確で、AIによる不要な機能追加を抑えられているか |
| Clarification Quality | 確認質問がスコープ、コスト、またはユーザーフローに実際に影響する内容になっているか |
| Feature Coverage | 要件外の機能を過剰に追加せず、主要な機能グループを十分に特定できているか |
| Scenario Coverage | メインフロー、代替フロー、重要な失敗ケースが記載されているか |
| Diagram Quality | ダイアグラムがシナリオと一致し、顧客やチームとのコミュニケーションに役立つか |
| Project Phase Breakdown | 各フェーズが妥当で、順序と依存関係が適切に示されているか |
| Task Breakdown | 見積もりに必要な粒度でタスクが整理され、各機能との対応を追跡できるか |
| Estimate Readiness | チームが概算見積もりを開始するために必要な情報が揃っているか |
| Hallucination Control | AIが仮定や推測を確認済み要件として扱うことを抑えられているか |
詳しい採点基準は、ベンチマークのEvaluation Rubricで確認できます。
CursorとCodexのどちらについても同じルーブリックで各項目を採点しています。文章表現ではなく、BAやプリセールスが使用する資料としての品質を評価することが目的です。
ベンチマーク結果
40回の実行結果をすべて採点したところ、平均点は次のようになりました。
| スキル未使用 | スキル使用 | |
|---|---|---|
| 平均点 | 36.6 / 50 | 46.45 / 50 |
Requirement Blueprintを使用した場合、平均点は50点満点中9.85点上昇し、ベースラインと比較して約**26.9%**改善しました。
平均点だけでなく、各結果を一対一で比較することもできます。10件の要件 × 2つのエージェントで、合計20組の比較があります。それぞれの組は、同じ要件を同じエージェントで実行し、スキルを使用しない場合と使用する場合を比較したものです。
20組すべてにおいて、Requirement Blueprintを使用した出力が、使用しなかった出力より高い点数を獲得しました。
エージェント別の結果は次のとおりです。
| Agent | スキル未使用 | スキル使用 | 改善率 |
|---|---|---|---|
| Cursor | 34.4 / 50 | 43.6 / 50 | +26.7% |
| Codex | 38.8 / 50 | 49.3 / 50 | +27.1% |
特に改善が大きかった評価項目は、Task Breakdown、Estimate Readiness、Scope Clarity、Hallucination Controlです。
この結果は、リポジトリを作成した当初の目的とも一致しています。Requirement BlueprintはAI自体をより賢くするためのものではなく、チームが見積もりを始める前の要件分析に、明確なプロセスを取り入れるためのものです。
ベンチマークの方法、未加工の出力、詳しい結果は、Requirement Blueprint Benchmark v0.3で確認できます。
使用方法
このスキルをエージェントで使用する方法は2つあります。
方法1:Requirement BlueprintをAgent Skillとしてインストールする
継続的に使用したい場合は、この方法を推奨します。
リポジトリをクローンします。
git clone https://github.com/khanhvo1104/Requirement-Blueprint-Skill.git
cd Requirement-Blueprint-Skill
Cursorの場合は、次のように設定します。
mkdir -p .cursor/skills
ln -sf "$(pwd)/skills/requirement-blueprint" .cursor/skills/requirement-blueprint
ln -sf "$(pwd)/skills/generate-slide" .cursor/skills/generate-slide
ln -sf "$(pwd)/skills/generate-estimate" .cursor/skills/generate-estimate
設定後、Cursorから次のコマンドを直接呼び出せます。
/requirement-blueprint
続いて要件を入力します。
I want to build a mobile app where users can find badminton courts near them and book an available time slot.
Court owners should also be able to manage their courts and bookings.
要件が十分に明確になったら、次のコマンドを実行します。
/generate-slide
PDF/PPTXを作成する場合に使用します。また、
/generate-estimate
を実行すると、Excel形式の見積もりワークシートを作成できます。
CodexやClaude Codeなど、ほかのエージェントで使用する場合は、各エージェントの対応するskillsディレクトリにスキルのフォルダをコピーするだけです。
方法2:スキルをインストールせず、エージェントにSKILL.mdを直接実行させる
すぐに試したいだけであれば、エージェントへのインストールは必須ではありません。
リポジトリをクローンするか、次のファイルをダウンロードします。
skills/requirement-blueprint/SKILL.md
そのファイルをエージェントに渡し、次のように指示します。
次のファイルに記載されている指示をすべて読み、その内容に従ってください。
skills/requirement-blueprint/SKILL.md
その後、次の要件を分析してください。
I want to build a mobile app where users can find badminton courts near them and book an available time slot.
Court owners should also be able to manage their courts and bookings.
エージェントがリポジトリを読み取れる場合は、次のように簡潔に指示することもできます。
Please use the Requirement Blueprint skill in:
skills/requirement-blueprint/
to analyze the following customer requirement:
...
この方法は次のような場合に適しています。
- スキルをすぐに試したい
- エージェントのセットアップを行いたくない
- 一度だけ使用したい
- 複数のエージェントでベンチマークを行いたい
継続的に使用する場合は、Agent Skillとしてインストールしておくと、エージェントからワークフローを直接呼び出せるため便利です。
ワークフロー全体
セットアップ後の流れは、次のようにシンプルです。
Customer Requirement
↓
/requirement-blueprint
↓
Clarification
↓
Requirement Plan
↓
Validator
↓
/generate-slide
↓
PDF / PPTX
↓
/generate-estimate
↓
Excel worksheet
リポジトリには、Badminton Court Bookingの完成したサンプルも含まれています。初期要件、確認事項、タスク分解、スライド、見積もりワークシートまで揃っているため、実際の出力をすぐに確認できます。
サンプルの詳細はこちらから確認できます。
まとめ
Requirement Blueprintは、次のようなシンプルな問題を解決するために作成しました。
AIは要件を理解できますが、顧客が確認した内容と、AI自身が推測している内容を常に正しく区別できるとは限りません。
開発前にBAのワークフローを加えることで、AIはより明確で議論しやすく、特に概算見積もりに適したプロジェクト計画を作成できるようになります。
今回のベンチマークでは、同じ要件セットに対してスキルを使用した場合、CursorとCodexにおける平均点がベースラインより約**26.9%**高くなりました。これはベンチマークのルーブリックに基づく評価点の改善率であり、開発時間やコストの削減率を示すものではありません。
実際に試したい場合は、次のリポジトリをご覧ください。
https://github.com/vfa-khanhvl/Requirement-Blueprint-Skill
また、測定結果の詳細は、リポジトリ内のベンチマークレポートで確認できます。
https://github.com/vfa-khanhvl/Requirement-Blueprint-Skill/blob/main/benchmark/reports/BENCHMARK_V03.md
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