VITALIFY.ASIA logo

3Dモデル/シミュレーション/デジタルツインの決定的な違い

3Dモデルは形や構造を表現し、シミュレーションは条件を与えて挙動を計算し、デジタルツインは現実の特定対象とデジタル側を継続的に対応させる仕組みです。本記事では3者の違い、デジタルモデル・デジタルシャドウとの関係、3Dやリアルタイムが必須ではない理由、目的別の使い分けまで解説します。

3Dモデル/シミュレーション/デジタルツインの決定的な違い
目次

「我が社もDX推進の一環としてデジタルツインを導入しよう」

会議室でそう打ち出されたものの、いざフタを開けてみると求められていたのは、単なる「3D CADデータの表示(3Dモデル)」だったり、「特定の条件下での強度計算(シミュレーション)」だったりする——。

このような用語の混同による認識のズレは、デジタル技術を活用するプロジェクトでは珍しくありません。

一見すると、どれも「パソコンの中に現実世界を再現する技術」に見えます。しかし、3Dモデル、シミュレーション、デジタルツインは、それぞれ目的も、現実世界との関係も異なります。

特にデジタルツインについては、「3Dであること」「リアルタイムであること」「IoTで接続されていること」などが必須条件のように語られることがあります。しかし、実際にはこれらをすべて満たさなければデジタルツインにならない、という単純なものではありません。

本記事では、この3つの技術の違いを整理し、それぞれがどのような場面で使われるのかを解説します。

違いは「何を表現・計算するのか」と「現実世界との関係」にある

まず、3つの違いを簡単に表現すると、以下のようになります。

3Dモデルは、現実の物体や空間の「形や構造」をデジタル上に表現するものです。

シミュレーションは、モデルや条件をもとに「もしこうなったらどうなるか」を計算するものです。

デジタルツインは、現実世界に存在する特定の対象と、そのデジタル上の表現を継続的に対応させる仕組みです。

ここで重要なのは、デジタルツインは単なる「高機能な3Dモデル」ではないということです。

3Dモデルが現実世界との接続を持たなくても成立するのに対し、デジタルツインでは、現実世界の対象との対応関係を維持することが重要になります。

また、デジタルツインは必ずしも3Dである必要はありません。対象によっては、数値、グラフ、データベースなどによってデジタル側を表現することもできます。

3Dモデル:「形や構造」をデジタル化したもの

3Dモデルとは、物体や空間の形状を三次元のデジタルデータとして表現したものです。

たとえば、3D CADで作られた製品の設計データ、建物のBIMデータ、ゲームのキャラクターモデルなどが3Dモデルに該当します。

3Dモデルの重要な役割は、実物がなくても、その形状や構造をコンピューター上で確認できるようにすることです。

たとえば建物の3Dモデルがあれば、実際に建設する前に外観を確認したり、内部空間を確認したりできます。

ただし、3Dモデルそのものは、現実世界と接続されている必要はありません。

設計段階で作成された建物の3Dモデルが、その後何年間も同じデータのまま保存されていても、それは3Dモデルです。

現実の建物にセンサーが設置されていなくても、3Dモデルとして何の問題もありません。

つまり、3Dモデルの中心にあるのは「現実世界との接続」ではなく、「形状や構造のデジタル表現」です。

シミュレーション:「もしも」を計算するもの

シミュレーションとは、特定の条件を与えたときに、対象がどのような状態になるのか、どのように変化するのかを計算・予測する技術です。

たとえば、

「この橋にこれだけの荷重をかけたらどうなるか」

「この建物に強い地震が発生したらどうなるか」

「この工場の温度を変更すると生産量はどう変化するか」

「この道路が通行止めになったら交通量はどう変化するか」

といった「もしも」を、コンピューター上で検証します。

ここで重要なのは、シミュレーションも必ずしも3Dである必要はないということです。

数式だけで行われるシミュレーションもありますし、2Dのグラフや表を使ったものもあります。

一方で、3Dモデルとシミュレーションを組み合わせることもできます。

たとえば建物の3Dモデルに構造解析を組み合わせれば、その建物に特定の荷重が加わったとき、どの部分に大きな応力が発生するのかを3D空間上で確認できます。

つまり、3Dモデルは「何がどのような形をしているか」を表現し、シミュレーションは「条件を与えたときにどうなるか」を計算するものです。

両者は組み合わせることができますが、同じものではありません。

デジタルツイン:「現実の特定の対象と対応し続ける」仕組み

デジタルツインとは、現実世界に存在する特定の対象と、その対象を表現するデジタル側を継続的に対応させる仕組みです。

ここでいう「対象」は、必ずしも一つの機械とは限りません。

たとえば、

  • 工場の特定の生産設備
  • 一つの建物
  • 発電所
  • 航空機
  • 都市
  • 物流システム

など、さまざまな対象が考えられます。

たとえば工場の設備をデジタルツイン化する場合、設備の3Dモデルだけを作って終わりではありません。

実際の設備から取得した稼働状態、温度、電力使用量、異常情報などをデジタル側に反映させることで、「現在、この設備がどのような状態なのか」をデジタル側でも把握できるようにします。

さらに、その蓄積されたデータを分析したり、シミュレーションと組み合わせたりすることで、故障の予測や設備の最適化などに利用することもできます。

重要なのは、デジタルツインの本質が「3D表示」そのものではないということです。

3Dモデルはデジタルツインを構成する要素の一つになり得ますが、3D表示がなくてもデジタルツインは成立します。

また、「リアルタイムであること」も必ずしも絶対的な条件ではありません。

たとえば、対象によっては1秒単位で状態を更新する必要がありますが、建物の設備管理などでは、数分単位、あるいはそれ以上の間隔でデータを更新することが適切な場合もあります。

重要なのは、対象となる現実世界の状態とデジタル側の状態が、目的に応じた頻度や精度で対応していることです。

デジタルツインには「3D」も「リアルタイム」も必須ではない

ここはデジタルツインを理解する上で、特に注意が必要なポイントです。

「デジタルツイン」という言葉から、現実の工場や都市を3D空間に再現し、そこにリアルタイムのセンサーデータを表示する映像を想像する人は少なくありません。

しかし、それはデジタルツインの一つの形に過ぎません。

たとえば、ある設備について、

「現在の温度は75℃」

「稼働時間は3,240時間」

「過去30日間に3回の異常が発生した」

といった情報を現実の特定の設備と対応させ、継続的に更新・利用する仕組みも考えられます。

この場合、3Dモデルがなくても、現実の設備とデジタル側の情報が対応しているという意味で、デジタルツインとして考えることができます。

逆に、非常に精巧な工場の3Dモデルを作り、そこに大量の情報を詰め込んだとしても、それが現実の特定の工場の状態と継続的に対応していなければ、それだけでデジタルツインになるわけではありません。

「デジタルモデル」「デジタルシャドウ」「デジタルツイン」という考え方

現実世界との関係をさらに整理すると、「デジタルモデル」「デジタルシャドウ」「デジタルツイン」という考え方が役立ちます。

デジタルモデルは、現実の対象をデジタル上で表現したものです。
現実の対象とデジタル側の間に、自動的なデータ連携が存在する必要はありません。

次に、デジタルシャドウでは、現実世界の変化がデジタル側に反映されます。
たとえば、実際の工場設備の温度が上昇すると、その情報がセンサーを通じてデジタル側にも反映される、といった仕組みです。

一方、デジタルツインでは、現実世界とデジタル側の間に、より継続的な対応関係を構築します。
さらに、デジタル側で分析やシミュレーションを行い、その結果を意思決定や現実側の制御に利用することもできます。

ただし、これらの用語には分野や組織によって定義の違いがあります。

特に「どこまでをデジタルツインと呼ぶか」については、完全に統一された定義が存在するわけではありません。

そのため、「リアルタイムでなければデジタルツインではない」「3Dでなければデジタルツインではない」といった単純な線引きには注意が必要です。

3つの技術は対立するものではない

ここまで説明すると、3Dモデル、シミュレーション、デジタルツインは、それぞれ別々の技術のように見えるかもしれません。

しかし、実際のシステムではこれらを組み合わせて利用することが一般的です。

たとえば工場のデジタルツインを構築する場合を考えてみます。
まず、工場の建物や設備を3Dモデルとして表現します。
そこに、実際の設備から取得した温度、稼働状態、電力消費量などのデータを接続します。

これによって、デジタル側から現実の工場の状態を把握できるようになります。
さらに、そのデータを利用してシミュレーションを行えば、

「この設備を停止すると生産ライン全体にどのような影響が出るか」

「この温度上昇が続いた場合、どの程度の確率で異常が発生するか」

といった分析も可能になります。

このように考えると、

3Dモデルは「デジタル側で対象を表現するための手段」

シミュレーションは「条件を与えて状態や挙動を計算するための手段」

デジタルツインは「現実の特定の対象とデジタル側を継続的に対応させる仕組み」

と整理できます。

つまり、この3つは「どれか一つを選ぶ」という関係ではありません。
一つのシステムの中で、同時に利用することもできます。

なぜこの違いを理解する必要があるのか?

この違いを理解していないと、プロジェクトの目的と手段が食い違ってしまう可能性があります。

たとえば、「工場をデジタルツイン化したい」という目的だけが先に決まってしまうと、まず高精細な3Dモデルを作ることから始めてしまうかもしれません。

しかし、本当に必要なのが「設備の故障を早期に検知すること」であれば、重要なのは3Dモデルの精細さではなく、設備の状態を取得するセンサー、データ収集基盤、分析モデルなどかもしれません。

逆に、「建設前に建物の完成イメージを共有したい」という目的であれば、必ずしもデジタルツインを構築する必要はありません。

高品質な3DモデルやBIMモデルを用意するだけで、目的を十分に達成できる可能性があります。

また、「この構造物に地震が発生した場合の挙動を確認したい」という目的であれば、必要なのはデジタルツインではなく、構造解析などのシミュレーションかもしれません。

重要なのは、「デジタルツインを導入すること」を目的にするのではなく、「何を解決したいのか」から必要な技術を考えることです。

自社に必要なのはどれ?

判断するときは、まず目的を考えると分かりやすくなります。

「建物や製品の形状を確認したい」「設計情報を3Dで共有したい」

この場合は、まず3DモデルやBIMなどを検討します。

「実際に作る前に、条件を変えて結果を確認したい」「壊れる条件や将来の挙動を予測したい」

この場合は、シミュレーションが適しています。

「現実に存在する設備や施設の状態を継続的にデジタル側へ反映したい」「蓄積したデータを分析し、予測や意思決定に利用したい」

この場合は、デジタルツインが候補になります。

ただし、実際のプロジェクトでは、この3つのうち一つだけを導入するとは限りません。

3Dモデルを作り、それを現実の設備と接続し、さらにシミュレーションを組み合わせる、といった構成も考えられます。

まとめ

3Dモデル、シミュレーション、デジタルツインは、似た領域で使われる言葉ですが、それぞれ役割が異なります。

3Dモデルは、物体や空間の「形や構造」をデジタル上に表現します。

シミュレーションは、条件を与えて「もしこうなったらどうなるか」を計算します。

デジタルツインは、現実世界に存在する特定の対象とデジタル側を継続的に対応させます。

そして、デジタルツインだからといって、必ずしも3Dである必要も、常時リアルタイムである必要もありません。

3Dモデル、センサー、IoT、データベース、シミュレーション、AIなどは、デジタルツインを実現するために必要に応じて組み合わせる技術です。

「デジタルツインを導入する」という言葉だけを先に決めるのではなく、

「現実の何をデジタル化したいのか」

「何を予測・検証したいのか」

「現実とデジタルをどの程度の頻度・精度で連携させたいのか」

を考えることが、適切なシステムを構築する第一歩になります。

1,000社以上の事業成長を支えた圧倒的な『スピードと柔軟性』で、御社のアイデアを最短で形にします。まずは無料で壁打ちしませんか?

シェア
ブログに戻る
ぼくはデューパー、なんでもきいてね!