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3つのスケールで読み解くデジタルツイン

デジタルツインを対象の大きさから、マクロ(都市・地域)、メゾ(建物・施設)、ミクロ(設備・機器)の3スケールで整理します。都市ではGISや3D都市モデル、建物ではBIM、設備ではIoTや時系列データが中心となる理由と、都市→建物→設備を接続して扱う考え方まで解説します。

3つのスケールで読み解くデジタルツイン
目次

デジタルツインについて調べていると、都市を3D化する話、BIMを使った建物管理、工場設備の予兆保全など、対象も技術も異なる事例が次々に出てきます。

これらを個別に見ていると、デジタルツインという言葉があまりに広く感じられるかもしれません。

そこで今回は、対象のスケールという切り口から整理してみます。

大きく分けると、デジタルツインの対象は「マクロ(都市)」「メゾ(建物・施設)」「ミクロ(設備・機器)」の3つのスケールで考えることができます。

これはデジタルツインの公式な分類ではありません。しかし、この3つを並べてみると、GIS、3D都市モデル、BIM、IoT、シミュレーションなどが、それぞれどの領域で使われ、何を目的としているのかが見えやすくなります。

マクロ:都市・地域

最も大きなスケールが、都市や地域です。

対象になるのは、道路、建物、河川、鉄道、公園など、都市を構成するさまざまな要素です。

この領域でよく名前が挙がるのが、国土交通省の「PLATEAU」です。

ただし、PLATEAUそのものを都市のデジタルツインと考えるのは適切ではありません。PLATEAUは、3D都市モデルを整備し、さまざまな用途で活用するためのプロジェクトです。公開されている3D都市モデルには、建物や道路などの形状だけでなく、用途や構造、築年などの属性情報も含まれています。

つまり、PLATEAUの3D都市モデルは、都市デジタルツインを構築する際の基盤となるデータです。

この3D都市モデルに、人流、交通、気象、河川、水位などのデータを組み合わせることで、都市を対象としたさまざまな分析やシミュレーションが可能になります。

例えば、人流データを重ねれば、駅や商業地域などにどの程度の人が集まっているのかを分析できます。交通データを組み合わせれば、道路の混雑状況や交通流を扱えます。さらに、地形や建物の情報と降雨・河川データを組み合わせれば、浸水範囲や避難経路を検討できます。

このスケールで重要なのは、個々の建物や設備を詳細に再現することではありません。都市全体を一つの大きなシステムとして捉え、人、交通、建物、自然環境などの関係を分析できることです。

そのため、マクロではGISや3D都市モデルが中心的な役割を果たします。

メゾ:建物・施設

一段スケールを小さくすると、建物や施設が対象になります。

オフィスビル、病院、商業施設、学校、工場、物流施設などです。

この領域で中心となるのがBIMです。

BIMでは、建物を単なる3D形状としてではなく、壁、床、柱、建具、設備などの部材として扱い、それぞれに属性情報を持たせることができます。そのため、建物をデジタル上で管理するための基盤として利用できます。

建物を対象としたデジタルツインでは、そこに実際の建物から取得した情報を組み合わせます。

例えば、室温や湿度、電力消費量、在室人数、空調や照明の稼働状況などです。

すると、「この部屋に現在何人いるのか」「このフロアの空調はどの程度稼働しているのか」「この建物は現在どれだけ電力を消費しているのか」といった状態を、建物モデルと対応付けて扱えるようになります。

さらに、建物の運用を対象としたシミュレーションも可能になります。

例えば、空調設定を変更した場合のエネルギー消費量を計算したり、部屋の利用状況が変化した場合の空調負荷を推定したり、新しい設備を導入した場合の効果を検討したりできます。

都市スケールでは「都市全体の状態や相互関係」が重要でしたが、建物スケールでは「空間・人・設備・エネルギーの関係」が重要になります。

そのため、メゾではBIMを中心に、IoT、設備管理、エネルギー管理、シミュレーションなどが組み合わされます。

ミクロ:設備・機器

さらに対象を小さくすると、個々の設備や機器が対象になります。

工場の工作機械、ポンプ、空調機、エレベーター、ロボット、発電設備などです。

ここではIoTセンサーが重要な役割を果たします。

例えば工作機械であれば、温度、振動、回転数、消費電力、稼働時間などを継続的に取得できます。

こうしたデータを設備のモデルや過去の稼働履歴と組み合わせることで、設備の状態を監視できます。

さらに、通常時とは異なる振動や温度変化などを検出すれば、故障の兆候を発見できる可能性があります。これが予兆保全です。

この領域では、設備を3Dで精密に再現することよりも、設備の状態をどれだけ正確に把握・分析できるかが重要になる場合があります。

そのため、ミクロのデジタルツインでは、3Dモデルよりもセンサーデータ、時系列データ、設備の状態モデル、物理シミュレーションなどが中心になるケースもあります。

3つのスケールを並べると何が違うのか

ここまでを見ると、3つのスケールにはかなり明確な違いがあります。

マクロでは、都市や地域を対象にして、人流、交通、災害、環境などの広域的な現象を扱います。GISや3D都市モデルが基盤になります。

メゾでは、建物や施設を対象にして、空間、設備、人、エネルギーなどの施設内部の関係を扱います。BIMが重要な基盤になります。

ミクロでは、個々の設備や機器を対象にして、稼働状態、故障、性能などの設備そのものの状態を扱います。IoTセンサーや設備データが重要になります。

つまり、単純に「都市、建物、設備と大きさが違う」というだけではありません。対象が変わることで、扱うデータと分析する現象も変わります。

3つのスケールはどこまでつながるのか

さらに興味深いのは、この3つが階層構造になっていることです。

例えば工場を考えてみます。

工場は都市の中にあります。その工場は一つの建物であり、その建物の中には生産ラインがあり、生産ラインには多数の設備があります。

つまり、

都市 → 建物 → 設備

という関係があります。

ここをデジタル側でも接続できれば、異なるスケールの情報を関連付けることができます。

例えば、ある設備の稼働状況が変化すれば、工場全体のエネルギー消費に影響する可能性があります。工場のエネルギー消費が変化すれば、建物全体のエネルギー管理にも影響します。

逆に、都市側の気温が上昇すれば、建物の空調負荷が増加し、それによって空調設備の稼働状態が変化する、といった関係も考えられます。

このように、設備、建物、都市を個別に見るだけでなく、それぞれを接続して扱うことで、より大きなシステムとして現実世界を捉えられるようになります。

ただし、ここで注意したいのは、3つすべてを接続しなければデジタルツインではないわけではないということです。

設備一台だけを対象としたデジタルツインもあります。建物一棟だけを対象とする場合もあります。都市全体を対象とする場合もあります。

スケール間の接続は、デジタルツインをより大きなシステムへ拡張する際の一つの方向性と考えた方がよいでしょう。

「都市」「建物」「設備」を別々の技術として考えない

この3つのスケールで考えると、デジタルツイン関連の技術も整理しやすくなります。

都市では、GISや3D都市モデル。

建物では、BIM。

設備では、IoTセンサーや設備データ。

そして、それぞれの領域でシミュレーションやデータ分析を組み合わせます。

もちろん、実際のシステムはこれほどきれいに分かれているわけではありません。

都市モデルの中にBIMモデルを配置することもありますし、BIMモデルの中に個々の設備モデルを含めることもあります。PLATEAUでも、3D都市モデルとBIMなどの異なるデータを組み合わせる取り組みが行われています。

したがって、デジタルツインを考えるときには、「どの技術を使っているか」だけを見るよりも、どのスケールの現実世界を対象としているのかを見る方が整理しやすいでしょう。

都市なのか。

建物なのか。

設備なのか。

そして、そのスケールで何を分析・管理・予測したいのか。

この2点を見るだけでも、デジタルツインの全体像がかなり見えやすくなります。

まとめ

デジタルツインを対象のスケールから見ると、大きく「マクロ」「メゾ」「ミクロ」の3つに整理できます。

マクロは都市・地域です。3D都市モデルやGISを使い、人流、交通、災害、環境などの広域的な現象を扱います。

メゾは建物・施設です。BIMを中心に、空間、設備、人、エネルギーなどを扱い、建物の設計だけでなく運用や維持管理にも利用します。

ミクロは設備・機器です。IoTセンサーなどから稼働データを取得し、状態監視、故障予測、予兆保全などに利用します。

そして、この3つは独立しているだけではありません。

都市の中に建物があり、建物の中に設備がある。

この現実世界の階層構造をデジタル側でも表現し、必要に応じて相互に接続することで、都市から設備までを一つのシステムとして扱うことも可能になります。

デジタルツインという言葉だけを見ると非常に広い概念に感じますが、「何を対象としているのか」というスケールに注目すると、都市、建物、設備という異なる領域の関係が見えやすくなります。

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