ベトナム成人の4割超が肥満!?食生活の変化とヘルスケア市場のビジネスチャンス(石黒が選ぶベトナムのニュース:2026/6/30)

現地で報じられているニュースを日本人の視点から読み解き、リアルな現地事情を紹介していく「石黒が選ぶベトナムのニュース紹介」、第43回目。
今回は、経済の発展にともないドラスティックな変化を遂げているベトナム人の「食生活と栄養状態」にスポットを当てます。
都市部では、いつでも好きなものが食べられるようになったことで肥満が増加する一方、山奥の貧しい地域では依然として栄養状態の良くない人もいるという歪んだ状況や、なぜ食生活が注目されているのかといった背景を解説しています。
2026年6月28日Thuong hieu & Cong luan の報道(原文はベトナム語)
ベトナム人成人の栄養状態と食品消費の現状評価
他「Báo Sức khỏe & Đời sống」や「báo tin tức」「vtv.vn」「Báo Đầu tư」より
1. データが語るベトナム人の栄養状態と食生活
ベトナム国立栄養研究所は、ニュートリライト・ヘルス・インスティテュート(米国)およびアムウェイ・ベトナム社と共同で、「2025年におけるベトナムの5つの省・市の都市部および農村部における20~45歳の成人の栄養状態と食生活の評価」に関する研究結果を発表する科学セミナーをハノイで開催しました。
上記で上がっている調査対象の5つの場所は、大都市と地方を代表して首都ハノイ、ホーチミン市、カントー、タイグエン、クアンナムになり、現地の約1,500人を対象に実施された成人の栄養状態と食習慣に関する調査結果となります。

国立栄養研究所所長のチャン・タイン・ズオン(Trần Thanh Dương)准教授によると、現在、ベトナムにおいて栄養が起因して2つの問題が発生していると述べました。それが「微量栄養素の欠乏」と「過体重や肥満、非感染性慢性疾患の急速な増加」になります。
まず、子どもの栄養失調率ですが1990年の56.5%から2025年には19.6%へと減少を続けており、これは良い傾向です。
しかし微量栄養素の欠乏は、引き続き母子の健康に影響を与えており、5歳未満の子供の約20%が貧血に苦しんでいることや、生殖年齢の女性の貧血率も依然として高いことも述べられていました。
そして子供だけでなく大人においても微量栄養素の欠乏状態が一般化しており、都市部を含めた平均的な食事だとカルシウムは必要量の68.7%、葉酸は必要量の50.9%しか摂取できておらず、また調査対象者の60%以上が、世界保健機関(WHO)が推奨する量の果物と野菜(400グラム)を摂取していない状態にあります。

一方で過剰に摂取しているのが塩分で、ベトナム人は現在、世界保健機関が推奨する塩分摂取量のほぼ2倍を摂取しており、高血圧なども増えています。
そしてこういった食生活で特に問題だと指摘されているのが朝食です。調査対象者の26.7%が定期的に朝食を摂っておらず、かつ朝食からのエネルギー摂取量は、必要量のわずか18.2%に過ぎません。
さらに約20%が朝食に糖分の多い食品(ケーキなど)や、お菓子を摂取している状況で、朝忙しくて朝食抜きや、菓子パン1つで朝食の代わりにするといった日本でも問題となっている食生活と同様の状態が目に浮かびます。

また上記のような食生活をとっているのにも関わらず、成人の30%以上が必要とされる運動量をしていない結果、発生しているのが肥満となります。
今回の講演では、世界保健機関(WHO)の西太平洋地域におけるアジア人のBMI分類基準に基づくと、20歳から45歳までの成人の過体重および肥満率は、43.6%にも達する状況にあると述べられています。なお、この肥満認定されている割合は、女性よりも男性の方が高くなっています。
2. ニュースの背景にある「ベトナムのリアルな事情」:
では、なぜこれほどまでにベトナムの栄養バランスに偏りが生じており、それが社会問題として注目を集めているのでしょうか。背景を見ていくと3つの要因が見えてきます。
2-1. 食の「欧米化・簡便化」とファストフード・ECの爆発的普及
特に都市部では、GrabFoodやShopeeFoodといったフードデリバリー、そしてTikTok ShopなどのECやライブコマースが生活に完全に溶け込んでいます。
スマホ一つでいつでも唐揚げやピザ、甘いミルクコーヒー、ミルクティーなどが手軽に安く注文できる環境が整ったことで、特に都市部の現役世代の間で、高カロリー・高脂質な食事へのアクセスが劇的に容易になりました。

また都市部では24時間営業のコンビニや深夜まで空いているレストラン、カフェなども増え、いつでもどこでも食べれる状態となっています。
忙しいライフスタイルの中で、手軽さ(利便性)が優先され、栄養バランスが後回しになるという「先進国と同じ罠」にベトナムもハマっているのが現状です。
2-2. 都市部と地方に横たわる「栄養の二極面性」
もう一つのリアルな事情は、地域間における格差です。ベトナムは日本以上に大都市と地方(農村)との地域差が大きいとも言われます。
健康面でもハノイやホーチミンなどの大都市圏では「肥満や生活習慣病(高血圧・糖尿病など)」が急増している一方、一部の地方貧困地域、山岳地帯の農村部などでは、依然として子供を中心とした「低栄養・発育不全(微量栄養素の不足)」が残存しています。

1つの国の中で「食べられないことによる栄養不良」と「肉や脂、塩分が多く、野菜が足りない栄養のアンバランス」が併存している。
そんな国全体として「過剰」と「不足」という相反する2つの健康課題に同時に対応しなければならないという、新興国が急激に豊かになるプロセス特有の「歪み」が現れている場所でもあります。
2-3. 高齢者増加が増える未来でも医療費抑制に繋がる政策の必要性
以前にも取り上げたようにベトナムでは、2036年までに人口高齢化期に入ると予測されており、「60歳以上の人口は2024年時点の1,420万人から、2034年には約2,090万人へと急増する」とも予測されています。そしてその際に問題となるのが医療費です。
肥満患者が多いということは、将来の病気にかかる人口の多さにつながり、医療費の莫大な増加につながります。
そのため、今から国民の食生活を変えていくことは、将来の医療費を抑えることにつながるため、すぐにでも国をあげて取り組む必要がある政策となります。
3. 筆者(石黒)が注目したポイント:
今回のベトナム人の栄養状態に関する報道を見て思ったのは、健康を維持することにつながる分野は、今後さらに伸びていく(追い風が吹いている)と予想される点です。
実際に今回の調査には以前「ベトナムのMLMに関する記事」で取り上げたAmwayVietnamも参加しており、彼らの健康商材を販売していくことに繋げていこうという意図もあったと考えられます。
ベトナムは比較的痩せた体形の人が多いというイメージがありますが、ホーチミンなどの大都市では、男女問わず腹回りが膨らんで肥満とみられる体形の人を見ることが明らかに10年前よりも増えています。
一方でホーチミンなどで増加しているドラッグストアにおいては、まだ日本ほど(痩せたり脂肪を落とすといった)栄養補助食品・サプリメントを見かけませんし、コンビニなどでも脂肪の吸収を抑えるお茶…日本でよく目にする「トクホ(特定保健用食品)」といった感じの商品も見かけず、逆に砂糖の入った甘いお茶や牛乳などが売られている状況です。
今後ベトナムが国をあげてこの問題に取り組むという追い風があるのであれば、健康に配慮した食品などの市場は、これまで以上に拡大していく(市場として追い風が吹く)のではないかと考えられます。
そんな、ベトナム市場のステップアップと、ビジネスの可能性を感じさせるニュースでした。

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