海運産業で年間数千億円が流出!? ベトナムが立ち上げた「国際海運金融エコシステム」から見えてくるものとは?(石黒が選ぶベトナムのニュース:2026/5/26)

現地で報じられているニュースを日本人の視点から読み解き、リアルな現地事情を紹介していく、石黒が選ぶベトナムのニュース紹介、第18回目。
皆さんは「ベトナムの港湾や物流」と聞くと、どのようなイメージをお持ちでしょうか? 「工場で作られた製品の輸出入が盛ん」「コンテナ船が絶えず行き交っている」といった、モノの動き(物流)が活発な姿を思い浮かべる方が多いと思います。
確かにベトナムの港湾インフラは世界トップクラスの成長を遂げていますが、実は現状、最も付加価値の低い部分にしか関与できていないため、海事産業の労働生産性が他国に比べて低いという課題を抱えています。
今回は、ベトナムの港湾や海運業が、単なる「モノの通過点」から脱却し、より「高い付加価値を生むビジネス」へと転換していこうとしている、そんなニュースを紹介します。
2026年5月22日のVnEconomy等のニュース(原文はベトナム語)
IMFEの立ち上げ:ベトナムにおいて60億〜80億ドルの海運金融収益を国内に留保する
1. 実質的に巨額の「海運マネー」が国外へ流出している現実
今回取り上げるのは、ホーチミン市で新たに立ち上げられた「国際海運金融エコシステム(IMFE / IMFC)」に関するニュースです。
報道によると、過去15年間でベトナムの港湾を経由するコンテナ貨物量は年平均11%で増加しており、2025年には約3,400万TEUに達する見込みで、これは2010年の5倍に相当するとあります。その成長スピードは中国やインド、シンガポールをも上回っています。
ホーチミン市だけでも、港湾インフラは相当な規模を誇っています。カットライ港は年間約750万TEUの取扱量を誇り世界トップ21に入る規模。カイメップ・ティバイにあるジェマリンク国際港は、年間400万TEUの処理能力を持ち、超大型コンテナ船(ULCV)の受け入れも可能です。

2025年までに、ホーチミン市の港湾システム全体で2400万TEUを超える貨物取扱量が見込まれ、輸出入総額は約2000億米ドルに達し、これはベトナムの総輸出額の約20%を占めることになるとあります。つまりベトナム全体でみると港湾を通じた取引総額は、年間1兆米ドルを超える見込みとのことです。
しかし同じ記事で報じられているのは、これだけ膨大な貨物が行き交っているにもかかわらず、ベトナムでは付加価値の低い分野でしか収益をあげられていないという点です。
これにより港湾や海運といった分野における労働生産性が低くなり、ベトナムでは労働者一人当たり年間約1万5000~2万ドルの付加価値が生み出されているのに対し、中国では2万5000~4万ドル、シンガポールでは19万ドル~22万5000ドルと大きな差が発生しています。

その結果、港湾や海運といった産業のベトナムGDPへの貢献度はわずか約1%にとどまり、マレーシアの4%、アラブ首長国連邦の7%、シンガポールの8%を下回っているとのことです。
つまりせっかくベトナムでのコンテナ貨物量が増えていても、最も収益性の高い分野である海運金融サービスからの収益約60億~80億米ドル相当が、毎年ベトナムから他国(シンガポール、ロンドン、香港)へ流出しているとも言えます。
「国際海運金融エコシステム(IMFE / IMFC)」は、この状況を変えることを目指して立ち上げられたという事になります。
2. ニュースの背景にある「ベトナムのリアルな事情」
各種報道などからベトナムの物流・金融の構造的な課題と新たな挑戦の背景をもう少し深堀します。
2-1. ハード(港湾インフラ)は急成長、ソフト(金融)は未成熟
ベトナム南部には、カットライ港やカイメップ・チーヴァイ港、さらには現在計画中のカンゾー国際積替港など、世界的なサプライチェーンに深く組み込まれた巨大なインフラが整備され存在します。

しかし、ベトナムでは現在、港湾運営、貨物輸送、物流、倉庫保管にしか関与していないと指摘されており、付加価値の高い部分である貿易金融、船舶融資、海上保険・再保険、国際決済、リスク管理、紛争解決といった分野は、シンガポール、香港、米国、欧州などで処理されているとあります。
つまりベトナム企業が参加できているのは「荷役・倉庫・運送」といった物理的な「モノの動き」の部分に限られており、高付加価値を生み出す金融やリスク管理のノウハウ(ソフト面)が国内で十分に育っていないといえます。
2-2. 「貨物の積み替え港」に加えて「資本の積み替え港」へと変えていく
この悔しい現状を打破するためにホーチミン市が「ベトナム国際金融センター(VIFC-HCMC)」の重要な柱として位置づけたのは、今回の正式に発足させた「国際海運金融エコシステム(IMFE / IMFC)」であるとのことです。

これは、港湾(Port)と金融(Finance)を直接結びつける「Port-to-Finance」という画期的なモデルとあり、ベトナムの海運会社や物流企業が、外国の仲介業者に頼ることなく、自国内(ホームグラウンド)で資金調達や保険、リスク管理ツールにアクセスできる環境を構築しようとしていう試みです。
VIFC-HCMC執行機関の副会長であるグエン・フー・フアン准教授は、以下の様に表現しています。
「カンゾー港やカイメップ・ティバイ港のような港は『貨物積み替え港』だが、VIFC-HCMCはベトナムの海事経済にとって『資本積み替え港』にならなければならない。」と。
2-3. ブロックチェーンも活用した貿易のデジタル化
その為に新しい技術を使った取り組みもいくつかあげられており、「ブロックチェーンを活用した海運取引プラットフォーム」の構築も含まれています。

スマートコントラクトを用いて複雑な貿易書類をデジタル化し、取引を自動化することで、これまで何日もかかっていた処理時間を「ほぼ瞬時」に短縮しようという試みもあげられています。
3. 筆者(石黒)が注目したポイント
このニュースから見えてくるのは、ベトナムが単にインフラを整備して「大量のモノを安く動かす国」から、「金融やデータといった目に見えない高付加価値なサービスでも稼ぐ国」へと、産業のレイヤーを一段引き上げようとしている点です。
ベトナムの様な新興国というと、港湾をはじめとしたインフラ整備面ばかりに目が行きますが、ベトナムは港湾インフラというハードウェアの上に、金融や情報といったソフトウェアを構築して稼げるようになろうとしています。
これは一朝一夕でできるものではなく、実現までには時間がかかると考えられますが、そういう目標をもって既に歩み出している国であるという事は、ベトナムでのビジネスを考える日本企業においても認識しておく必要がある、そんなニュースです。
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現地の「今」を肌で捉え、確実な事業戦略を描くために
今回ご紹介した内容だけでなく、ベトナム市場にはインターネット上の情報だけでは見えてこない「リアルなビジネスチャンス」と「新興国特有の落とし穴」が無数に存在します。
自社の技術やサービスをベトナムでどう展開すべきか?開発拠点や販売拠点を設立するには何から着手すべきか?
そうした課題を解決し、ベトナム出張を「確かな成果(実践プラン)」へと繋げるための特別なプログラムが開催されます。

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【開催スケジュール(2026年)】
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急成長するベトナム市場への進出や、新規事業の拠点設立をミッションとして任された皆様。事前情報だけで判断するのではなく、ぜひ現地の最前線を自分の目で確かめに来てください。ホーチミンでお会いできることを楽しみにしています!
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