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なぜベトナムの住宅価格は高いのか?価格上昇の背景と未来について(石黒が選ぶベトナムのニュース:2026/6/3)

なぜベトナムの住宅価格は高いのか?価格上昇の背景と未来について(石黒が選ぶベトナムのニュース:2026/6/3)

現地で報じられているニュースを日本人の視点から読み解き、リアルな現地事情を紹介していく、石黒が選ぶベトナムのニュース紹介、第24回目。

急激な経済成長により都市部では、タワーマンション(コンドミニアム)が次々と建てられ、日本人の中にも投資をしている人がいるベトナムの住宅・不動産。しかし現地の物価水準(ローカル生活費)と比べると住宅価格は、非常に高いとも言われています。

では他国と比較しベトナムの住宅はどのくらい高いのか、なぜそのような市場環境となっているのか。今回は、ベトナムの不動産市場が抱える歪みの背景について紹介します。

2026年6月2日のCafefニュース(原文はベトナム語)
ベトナムの人々が平均的な価格の家を買うためだけに、30年間も休みなく働き、食べ物や飲み物を犠牲にしなければならないという事実に、世界は「衝撃」を受けた。

1. 年収の23~30倍に跳ね上がった異常な住宅価格

今回取り上げるのは、2026年6月2日のベトナム不動産フォーラム2026で発表された、ベトナムの住宅事情に関する非常にショッキングなデータです。

報道によるとCEOグループ会長でありベトナム不動産協会副会長のドアン・ヴァン・ビン博士が、現在のベトナムにおけるPIR(Price to Income Ratio=年収倍率:住宅価格が世帯年収の何倍かを示す指標)は、23.7倍〜30倍という異常な水準に達していると指摘しました。

これは、ベトナムの平均的な労働者が「稼いだお金を一切生活費(飲食など)に使わず、全額を23〜30年間貯金し続けて、ようやく現時点における平均的な家が1軒買える」ということを意味しています。この数値は、世界平均11〜15倍と比べて約2倍の高さであり、妥当な水準といわれる5〜7倍をはるかに超えています。

さらに驚くべきことに同じ報道では、過去5年間でベトナムの不動産価格は約59%も上昇しており、これは米国(54%)、オーストラリア(49%)、日本(41%)などの先進国をも上回る上昇率となっているという点です。

また同じ記事内でベトナムの賃貸利回り(物件価格に対して得られる賃料の割合)は、わずか年2~4%程度であり、この地域(東南アジア)の多くの市場の5~7%を大きく下回っているとあります。つまり家賃と比べても物件価格がそれだけ高いという事を意味しています。

では、別のデータも見ることでより深堀をしてみます。

2. 他国と比較しベトナムの不動産価格や家賃は、世帯収入に対してどのくらい高いのか?

Urban Land Institute (ULI)という会社が、11の国と地域における40以上の都市を対象に世帯収入の中央値と平均的な住宅購入費用・賃貸費用を比較して、各都市の住宅の入手可能性を評価した「ULIアジア太平洋住宅入手可能性指数レポート」というデータがあります。(原文は英語、最新版は2025年7月8日に発表された2025年版です)

今回この中に記載されている日本の4都市(東京ー区内、横浜、大阪、福岡)とベトナムの2大都市(ハノイ、ホーチミン)を抜粋した表が以下の通りです。

「The 2025 ULI Asia Pacific Home Attainability Index report」のPDF32ページ目より筆者で該当箇所を抜粋したデータより

まず赤枠を見てください。各地域ごとの平均的な住宅価格が世帯年収の中央値に対して何倍かを示したデータですが、東京(区内)が14.2倍、横浜や大阪が10~11倍、福岡が8倍に対して、ハノイは19.1倍、ホーチミンは22.2倍とはるかに高い状況です。

青枠は、各地域ごとの平均的な家賃が世帯月収の中央値に対して何%を占めるのかという賃貸におけるデータですが、東京、横浜、福岡が17%、大阪が21%に対して、ハノイ56%、ホーチミンでは58%にもなります。

これは調査時点(単年)における一時的な現象なのでしょうか?同じレポートには、2022~2024年のデータが載っており、

「The 2025 ULI Asia Pacific Home Attainability Index report」のPDF34ページ目より筆者で該当箇所を抜粋したデータより

棒グラフの数値が年収倍率となりますが過去3年間、一貫して東京よりも高いことが分かります。では、他のアジアの都市と比べるとどうでしょうか?

「The 2025 ULI Asia Pacific Home Attainability Index report」のPDF8ページ目より抜粋

上記表は縦軸に平均家賃が世帯月収の中央値に占める割合、横軸に平均住宅価格が世帯年収の中央値に対して何倍かを都市ごとに配置した図です。

表内の右上方向にハノイ(濃い黄色)とホーチミン(薄い赤色)があり、アジアの中でも香港並みに割高な市場環境であることが分かります。

3. ニュースの背景にある「ベトナムのリアルな事情」

ではなぜこれだけベトナムの不動産(住宅価格)は、現地の一般の人々から見て割高と言える水準になっているのでしょうか?

3-1. 通貨に刻まれた強烈なインフレの痕跡

皆さんは、ベトナムにおける法定通貨ベトナムドンを見たことがありますか?

最高紙幣は500,000ドンと桁数が多いですが、その価値は現在の円安下でも3,033円でしかありません。そう、この桁数の多さは過去における強烈なインフレの痕跡でもあります。

世界経済のネタ帳より「ベトナムのインフレ率

ベトナムのインフレ率は、直近こそ3~4%ですが2008年は23%を超えており、1986〜1988年の頃は年360〜453%とハイパーインフレともいえる状況下にありました。

その結果、通貨の価値は大幅に下落し、例えば為替レートで見ても1981年3月当時1ドル=17ドン※であった自由交換レート(闇市場レート)は、45年後の2026年現在1ドル=26,400ドンへと大幅に下落しています。

※「2002 年 48 巻 4 号 p. 73-91 在米ベトナム人とベトナム:送金とヒトの流れにみる祖国との紐帯と影響力 古屋博子」PDF6ページ目より

通貨ベトナムドンで持っているとインフレで価値が失われてしまう。しかし現在の日本の様に外国の株式(例:S&P500、オルカン)へ自由に投資できるわけではなく、そもそも国外への投資(外貨の持ち出し)には中央銀行の許可が必要で難しい。金融商品も他国に比べれば選択肢(投資対象)が少ない。

その結果、お金が流れた先が金(ゴールドの現物)や不動産でした。

3-2. インフレからの逃避先としての不動産

それを裏付けるデータがあります。少し古いデータですが、UBS銀行が出している「Global Wealth Databook 2023」に記載された2022年データ。

これには国ごとの富に占める金融資産(株式・債券、投資信託、保険)と非金融資産(ゴールドの現物や不動産)の割合が載っています。これから該当箇所を抜粋して筆者で作成したのが以下の表です。

PDF115ページ目「Table 2-2: Wealth estimates by market (end-2022), continued」より抜粋して作成

ベトナムは東南アジアの他国(タイ、インドネシア、フィリピン)と比べても資産(富+負債=金融資産+非金融資産)に占める金融資産の割合が低いことが分かります。一方で1人当たりの富の量はインドネシアなどと比べてもそう変わらない。つまりその分だけ、非金融資産(不動産)で富を築いてきたことが分かります。

3-3. 低い賃料利回りしかないのにさらに価格が上がっている背景

不動産価格は、時には経済成長(人々の所得の上昇)を上回る勢いで上昇し、現在もその状況は続いています。

例えば2026年5月31日付けCafefニュース「若者と「価格高騰」期における住宅購入意思決定の変化(原文はベトナム語)」においても、世界的に展開している不動産サービス会社Avison Young Vietnamのデータとして

過去5年間でマンション(コンドミニアム)価格上昇率は、
ハノイ:72%、ホーチミン:50%、ダナン:34%
であったものの、平均所得は年間6~10%しか増加していないとあります。

その結果、冒頭で述べたように、賃料利回りは、年2~4%程度と銀行の定期預金(5~7%)も下回る水準となっており、一方で世帯月収に占める家賃の割合は非常に高くなっている状況です。

ではこれを正当化している根拠は何かというと経済成長に伴う長期的な所得の上昇だと考えられます。

世界経済のネタ帳より「ベトナムの1人当たり名目GDP推移(USD)

上記は1人当たり名目GDPですが、2005年873.14ドルだったものが2025年には4829.38ドルと20年で5.5倍へと急拡大しています。

例えば、今後も年7.2%で経済成長し所得も同じ様に増えれば10年で2倍、20年で4倍にもなると期待できます。場合によってはそれ以上の成長の可能性もありうるでしょう。

それに伴って将来の家賃収入は大きく増える可能性が高いのだから、現在一見割高に見えても実は割高ではないという事でしょうか。あたかも高成長を前提とした高いPERで値付けされている株式と似たものを感じます。

このように高騰してきたベトナムの不動産価格。

日本では、金融資産からの所得だけで生活できるようにし早期退職を目指すFIRE(Financial Independence, Retire Early)という言葉がありますが、これまでのベトナムの若者からするとFIRE(Financial Indipendent, Realestate Early)=「お金の面で困らない独立した人生を歩みたいなら、不動産を早く買え」という状況であったといえるのかもしれません。

4. 筆者(石黒)が考えていること

既に述べてきた様にニュースやデータから見えてくるのは、高成長の継続を前提とした住宅価格(及び市場)となっている点です。

そしてベトナム政府は、2030年まで年10%の成長目標を掲げており、外部環境次第ではありますが、それに近い高成長の可能性はあるでしょう。しかしその後は?このような高成長はいつまで続く可能性が高いのか?

参考になるものがあります。三井住友信託銀行が2024年11月に公開した調査月報 「国連「世界人口推計」からみえるアジアの2035年:経済の動き」。こちらでは、年齢の中央値が37歳を超えると経済成長率が鈍化するということが紹介されていました。

それを参考に各国(日本、韓国、タイ、中国、ベトナム)の経済成長率と年齢中央値の推移について、世界銀行などのデータを元に対比データを作成したので見比べてみます。

日本の場合、年齢の中央値は、1990年代前半に37歳を超過し、ちょうどバブル崩壊と重なって、失われた30年とも言われる長期停滞の時代に。

韓国の場合、年齢の中央値は、2010~2015年頃に37歳を超過。成長率はコロナ禍後の反動を除き以前よりも低下。

タイの場合、年齢の中央値は、2015~2020年頃に37歳を超過。その後波はあるものの、4%以下の成長率へ。

中国の場合、年齢の中央値は、2015~2020年頃に37歳を超過。コロナ禍時の特殊要因を除き、その後の5%成長は本当なのか?

ベトナムの場合、年齢の中央値は、2030~2035年に37歳を超過の見込み。現在の様な高成長を続けられるのは、他国の事例からすると今後10年以内?

いつか高成長を前提とした住宅価格上昇が終わった時、どのような市場ニーズやビジネスチャンスが生まれるのか?

既に30年前からその状況を経験した日本企業においては、一足早く様々な知見を活かせるのではないか。そんなことを感じさせるニュースでした。

実践型ビジネス出張ツアー「Ăng-Ten(アンテン)」

ベトナム拠点・IT開発センター設立の実践視察ツアー【Ăng-Ten】
現地プロ7社とのアポ調整・ホテル・移動がすべて完了。ベトナム出張が決まった新規事業担当者へ向けた、確かな判断材料を持ち帰るための超実践的ビジネスツアー。

「Ăng-Ten(アンテン、ベトナム語でアンテナを意味)」は、ベトナム最大の経済都市・ホーチミン市を実際に訪れ、現地で長年ビジネスを営む7名の専門家と直接つながる、2泊3日の密度の高いビジネス出張ツアーです。

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  3. 帰国後の相談先(人脈)が確保できる:質疑応答や後日の個別面談を通じて、自社の悩みを直接ぶつけることができ、帰国後すぐに動ける体制が整います。

【開催スケジュール(2026年)】

  • 第2回目:6月17日(水)〜6月19日(金)
  • 第3回目:7月15日(水)〜7月17日(金)

※オプションで航空券の手配や延泊(観光・ゴルフ等)のご相談も可能です。

急成長するベトナム市場への進出や、新規事業の拠点設立をミッションとして任された皆様。事前情報だけで判断するのではなく、ぜひ現地の最前線を自分の目で確かめに来てください。ホーチミンでお会いできることを楽しみにしています!

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