「スピード融資」から「信頼と透明性」へ!消費者金融ブランドランキングから見えてくるベトナムの変化(石黒が選ぶベトナムのニュース:2026/6/1)

現地で報じられているニュースを日本人の視点から読み解き、リアルな現地事情を紹介していく、石黒が選ぶベトナムのニュース紹介、第22回目。
皆さんは「ベトナムの消費者金融(コンシューマーファイナンス)」と聞いて、どのようなイメージをお持ちでしょうか?
「手続きが簡単で若者がこぞってバイクやスマホを買うために利用している」「一方で、金利が高く不透明で、取り立てが厳しいといったネガティブな側面もある」といったイメージを持たれている方もいるかもしれません。
かつてはそうした側面もありましたが、現在、消費者が金融機関に求める要素が根本から変わり始めている・・・今回は、そんなベトナムの消費者金融市場の変化に関する調査結果の発表を紹介します。
2026年5月28日 Mibrandの発表(原文はベトナム語)
Mibrandが2025年ベトナム消費者金融ブランド健全性ランキングを発表
1. トップブランドの顔ぶれと、各社が強みを持つ「独自の評価軸」
今回取り上げるのは、ベトナムのブランドコンサルティング会社「Mibrand Vietnam」が発表した、消費者金融業界におけるブランドの健全性(認知度、好意度、顧客の愛着度など)に関する調査レポートです。
記事によると、総合ランキングのトップ5は以下の通りでした。

1位:Home Credit(30.2点)
2位:HD SAISON(24.4点)
3位:FE Credit(23.8点)
4位:F88(23.5点)
5位:Viettel Money(23.4点)
なお6~10位はスコア(点数)は公開されていないものの、EASYcredit、ShinhanFinance、LOTTE FINANCE、mcredit、MIRAE ASSET Securitiesと続きます。
興味深いのは、総合ランキングのトップ5位に立つ企業の内4社がそれぞれ全く異なる「独自の強み」で消費者の支持を集めている点です。
例えば、1位のHome Creditは通年を通じた途切れないプロモーション戦略により、「ブランド認知度(約73%)」で圧倒的な首位に立ちました。

一方、2位のHD SAISONは、大学生への奨学金支給などのCSR(企業の社会的責任)活動を積極的に行い、「ブランドイメージの理解度(信頼性や実用的なサポートのイメージ)」でトップに立っています。

また、3位のFE Creditは「プレミアム価格(高金利)を支払う意欲(少し高くてもこのブランドを使いたいという安心感)」で首位(ハノイでは45%が支持)となっています。
そして5位のViettel MoneyはVisaやVNPAYとの連携による技術力が高く評価され、「品質に対する印象(安全性や新規性、技術力)」でトップとなりました。
以下、公開されている個別の指標でのランキングTop5です。
◆ブランド認知度
1位:Home Credit(73%)
2位:FE Credit(67%)
3位:ShinhanFinance(46%)
4位:F88(39%)
5位:mcredit(38%)
◆印象(安全性や新規性、技術力など)
1位:Viettel Money(60%)
2位:ShinhanFinance(57%)
3位:Home Credit(53%)
4位:FE Credit(48%)
5位:HD SAISON(46%)
◆ブランドイメージの理解度
1位:HD SAISON(42%)
2位:Home Credit(34%)
3位:FE Credit(29%)
4位:LOTTE FINANCE(28%)
5位:mcredit(28%)
◆プレミアム価格(高金利)を支払う意欲
1位:FE Credit(31%)
2位:LOTTE FINANCE(28%)
3位:Home Credit(28%)
4位:Viettel Money(25%)
5位:HD SAISON(22%)
2. ニュースの背景にある「ベトナムのリアルな事情」
なぜ各社がこれほど多様なアプローチでブランディングを行っているのでしょうか。このニュースを取り上げた報道なども参考に、消費者金融市場の変化を3つ紹介します。
2-1. 「スピード」と「手軽さ」はもはや当たり前の最低基準に
調査結果の中で挙げられている点として、利用者が将来、利用サービスを選ぶ際に最も重視する要素のトップ3が挙げられています。それは「手続きのシンプルさ(63%)」「金利や手数料の透明性(60%)」「融資のスピード(51%)」でした。(※原文では5%とありますが、おそらく誤記で報道では51%とあります)
Mibrandの代表者が指摘している通り、かつてのベトナムでは「いかに早く、簡単に審査を通すか(スピードと手軽さ)」が最大の競争軸でした。しかし今や、それはどの企業も提供できる「最低限の必須基準」となり飽和しています。現在の競争は、見えない手数料がないか、個人情報が守られているかといった「透明性と信頼」の次元へと完全にシフトしているといえます。
2-2. 悪質な取り立て問題を経た「クリーンなイメージ」への渇望
過去、ベトナムでは一部の非正規な金融業者やアプリによる法外な高金利、そしてSNSを通じた脅迫まがいの悪質な取り立てが社会問題化し、公安(警察)による大規模な摘発が行われました。

このニュースを背景に、消費者は、消費者金融サービスに対して極めて慎重になっています。だからこそ、HD SAISONのように学生を支援するような「正当で社会的責任を果たすクリーンな企業」であることのアピールが、消費者の安心感に直結し、ブランド価値を大きく押し上げているといえます。
2-3. 「フィンテック(デジタル決済)」の台頭による期待値の上昇
通信大手Viettelが展開するViettel Moneyが「新規性、技術力などにおける印象でトップに立ったことも興味深いポイントです。

今のベトナムの消費者の中には、単にお金を借りるだけでなく、それが日常のデジタル決済や各種支払いサービス(エコシステム)とシームレスに、かつ高いセキュリティで連携していることも求めているといえます。またデジタル化が進んだことで、金融サービスに対する消費者の「UI/UX(使い勝手)」へのハードルは格段に上がっているともいえるでしょう。
3. 筆者(石黒)が注目したポイント
この発表で興味深いなと感じたのは、ベトナムの消費者金融市場において「お金をすぐ貸し付けることが特徴のビジネス」から、「顧客の信頼を獲得し、長きにわたって関係を築くビジネス」へと変化しているという点です。
今後、日本の金融機関やフィンテック企業がベトナム市場へ進出していく際、日本で長年培ってきた「コンプライアンス(法令遵守)の徹底」「金利や契約内容の透明性の高さ」「顧客のライフステージに寄り添った丁寧なサポート」といった強みが、今のベトナムの消費者が最も求めている価値感とも合致していくとも考えられます。
またお金を貸すだけでなく、金融リテラシー教育を伴うサービス展開、例えば若者や中間層に向けた「正しい家計管理や資産形成の教育」をセットにした金融サービスの展開をすることで、ブランドの差別化という事も考えられるのではないでしょうか。
ベトナム金融市場のダイナミックな変化を感じさせ、新たなビジネスの可能性を教えてくれるそんな調査結果でした。

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