大規模IFCモデルに対応した高性能BIMビューアのデモバージョン

BIM(Building Information Modeling)プロジェクトは年々複雑化し、その規模も拡大しています。現代のIFCファイルには数十万もの要素が含まれることがあり、Webプラットフォーム上での表示において、読み込み時間の増加、パフォーマンスの低下、さらにはZ-fightingなどの表示上の問題が発生しやすくなっています。
これらの課題を解決するため、私たちは「大容量のIFCファイルを直接読み込むのではなく、あらかじめGLB形式の複数のパーツに分割しておくことで、より効率的な表示が可能になる」という仮説を立てました。
この仮説を検証するため、私たちは表示機能に特化したProof of Concept(PoC)を開発しました。本PoCでは、事前にIFCからGLB形式へ変換されたデータを利用しています。
このデモバージョンの目的
本デモバージョンでは、GLB形式に変換された3DモデルをWebブラウザ上で閲覧・操作することができます。専用ソフトウェアをインストールすることなく、複雑なモデルを効率的に表示できるよう最適化されています。
これにより、開発チーム、建築家、エンジニア、その他の関係者間で、BIMモデルの共有やコラボレーションをより円滑に行うことが可能になります。
Demo: https://innovation-lab.vitalify.asia/en/gallery/large-bim-viewer

大規模IFCモデル表示における課題
従来のBIMビューアでは、IFCファイルを直接処理する、あるいは表示前に単一の大規模な3Dモデルへ変換する方式が一般的です。
しかし、このアプローチには以下のような課題があります。
- 初期読み込み時間が長くなる
- ブラウザ上で大量のメモリを消費する
- 操作時のフレームレートが低下する
- モデル内のオブジェクトグループを管理しにくい
- Z-fightingによるちらつきが発生しやすい
これらの問題は、工場、病院、オフィスビル、インフラ施設などの大規模プロジェクトにおいて特に顕著になります。
解決策:IFCデータをカテゴリごとのGLBファイルに分割
本デモの最大の特徴は、データ処理のアプローチにあります。
従来のようにIFCモデル全体を単一のファイルへ変換するのではなく、BIMのカテゴリごとに複数のGLBファイルへ分割して管理します。
例えば、以下のようなカテゴリごとにデータを分割します。
- Walls
- Columns
- Beams
- Pipes
- Ducts
- Equipment
- Furniture
- Doors & Windows
このアプローチには次のような利点があります。
- 各アセットのサイズを大幅に削減できる
- 初期ロード時間を短縮できる
- メモリ消費量を抑えられる
- オブジェクトグループごとの管理や表示が容易になる
- 大規模プロジェクトへの拡張性が向上する
これにより、ユーザーはすべてのデータの読み込み完了を待つことなく、より早くモデルの操作を開始できます。
大幅に向上した読み込み速度
カテゴリごとにGLBファイルへ分割することで、本デモは従来の方式と比較して効率的なモデル表示を実現しています。
各アセットは事前に最適化されているため、以下の効果が期待できます。
- モデル初期化時間の短縮
- ブラウザ側で処理するデータ量の削減
- レンダリング速度の向上
- より快適でスムーズな操作体験の実現
これは、要素数が非常に多い大規模BIMプロジェクトにおいて特に重要です。
柔軟なレイヤー管理
本デモには、表示内容を直感的に制御できるレイヤー管理機能が搭載されています。
ユーザーは以下の操作を簡単に行うことができます。
- 各カテゴリの表示・非表示の切り替え
- 特定のシステムへのフォーカス
- モデルの複雑さの軽減
- 点検や解析作業の効率向上
例えば、配管システムのみ、構造システムのみ、あるいは設備機器のみを表示するといった運用が可能であり、目的に応じた効率的な確認作業を支援します。

Information Panel – BIMデータへ即座にアクセス
BIMの最も重要な価値の一つは、モデルに紐づいた豊富なデータです。
ユーザーがモデル内のオブジェクトを選択すると、Information Panelにその要素に関連する情報が表示されます。
表示される情報には、以下のような項目が含まれます。
- オブジェクト名
- オブジェクト種別
- IFC GUID
- 技術属性(プロパティ)
- IFCファイルに含まれるメタデータ
- その他のBIM関連情報
これにより、ユーザーは専用のBIMソフトウェアを使用することなく、必要なBIMデータへ迅速にアクセスできます。

スムーズな3Dナビゲーション
本ビューアは、一般的な3Dナビゲーション操作をサポートしています。
- Orbit(回転)
- Pan(移動)
- Zoom(拡大・縮小)
ユーザーは大規模モデルでよく発生する遅延やカクつきを感じることなく、確認したいエリアへ素早く移動できます。
完全なWebブラウザ対応
本デモはWebブラウザ上で直接動作するように設計されています。
ユーザーはURLへアクセスするだけでBIMモデルを利用できます。
主なメリット:
- ソフトウェアのインストール不要
- マルチプラットフォーム対応
- 顧客やパートナーとの共有が容易
- プロジェクトへの迅速な導入が可能
これにより、プロジェクトに関わるすべてのメンバーがBIMデータへアクセスしやすくなります。
なぜGLB形式を採用するのか
GLBは、現在Web向け3Dアプリケーションで広く利用されている代表的な3Dフォーマットの一つです。
ジオメトリ、マテリアル、テクスチャ、および関連データを単一ファイルに格納できるため、データ転送やブラウザ上での表示を効率化できます。
従来のBIMワークフローと比較して、GLBには以下の利点があります。
- Web上での高速なロード
- データ構造の簡素化
- 高いブラウザ互換性
- 3Dモデル表示性能の最適化
想定される活用シーン
本デモはさまざまな用途で活用できます。
- BIMモデルの確認・レビュー
- 顧客向け設計プレゼンテーション
- プロジェクト内の分野間調整
- 施設管理および運用
- 関係者への情報共有
- Digital Twinソリューションの開発
今後の展望
建設業界におけるBIMの活用が拡大する中、Webベースの可視化ツールは、建築・設備データへのアクセス性を向上させる重要な役割を担うと考えています。
本デモは、より高速で使いやすい次世代BIMビューアの実現に向けた取り組みの一歩です。大規模な3DモデルをWebブラウザ上で効率的に活用できる環境を目指しています。
ぜひ本デモを体験し、最新のWeb技術がBIMモデルの活用体験をどのように向上させるかをご確認ください。
将来的な完成版プロダクトのワークフロー
完成版では、専用データベースおよびバックエンド基盤を活用した自動化ワークフローの実現を目指しています。
ステップ1:アップロード
ユーザーはWebインターフェースからIFCファイルをアップロードします。
ステップ2:自動変換・分割
バックエンド側の変換システムが大容量のIFCデータを自動処理し、最適化を行ったうえで、建築カテゴリごとに複数のGLBファイルへ分割します。
ステップ3:データ保存
変換および最適化されたGLBファイルは、ブラウザのIndexedDBに保存・管理されます。
これにより、再訪問時の読み込み時間を短縮できます。
また、データはサーバーやクラウドサービスへアップロードされるのではなく、ユーザー端末内に保存されるため、第三者システムへのデータ共有や保存に関する懸念を軽減できます。
ステップ4:ストリーミングレンダリング(Streamed Rendering)
Webブラウザは必要なGLBカテゴリのみを動的に読み込み、表示します。
これにより、初期ロード時間を大幅に短縮できます。
現在のPoCの対象範囲
本プロジェクトは、ユーザー体験への影響が最も大きい「ステップ4:ストリーミングレンダリング(ブラウザ側パフォーマンス最適化)」の検証に特化したProof of Concept(PoC)です。
コア技術の検証に集中するため、現在のデモは以下の範囲に限定されています。
対象外(未実装)
- ブラウザ上でのIFCアップロード機能
- IFCからGLBへの自動変換機能
- 専用バックエンドシステムおよびデータベース
対象内(実装・検証済み)
- カテゴリごとに分割・最適化されたGLBファイルのロード機構
- 高速なモデル表示性能
- Z-fightingの大幅な軽減
本記事で提供しているデモ環境では、このコアレンダリング技術によるパフォーマンス向上を直接体験できます。
まとめ
本デモは、最新のWeb技術によって大規模なBIMモデルを効率的に処理できることを示す実証例です。
以下の技術要素を組み合わせることで、
- IFCデータのカテゴリ別GLB変換
- 高速なデータロード
- Z-fightingの軽減
- 柔軟なレイヤー管理
- 直感的なBIM情報表示
- スムーズな操作・ナビゲーション
高速かつ安定した、ユーザーフレンドリーなBIMモデル閲覧環境を実現しています。
本技術は、将来のBIMビューア、Digital Twin、そして次世代の施設管理ソリューションを支える重要な基盤となることを目指しています。
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