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国土交通省が主導するProject PLATEAUの全体像

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Toshihiko Nagaoka2026/09/07
国土交通省が主導するProject PLATEAUの全体像

国土交通省が主導する「Project PLATEAU(プロジェクト・プラトー)」は、日本の都市空間を丸ごとデジタル化し、オープンデータとして社会に開放する国家プロジェクトです。

Project PLATEAUの基本概要

名前の由来

「PLATEAU」という名称は、フランスの哲学者ジル・ドゥルーズと精神分析家フェリックス・ガタリの共著『千のプラトー(Mille Plateaux)』に由来しています。

哲学における「プラトー(高原・台地)」
著書の中でプラトーは「始まりでも終わりでもない、さまざまな要素が相互に接続し維持される状態(結節点)」として描かれています。

プロジェクトに込められた意味
国の主導でデータを囲い込むのではなく、オープンな場(台地)を提供し、企業・自治体・研究者・クリエイターなどあらゆるプレイヤーが自由にデータを結びつけ、新しいイノベーションを創出する結節点になってほしいという願いが込められています。

誕生の背景・経緯

PLATEAUが立ち上がった背景には、従来の都市データや行政手続きが抱えていた社会課題がありました。

スマートシティ構想の「データ分断」課題
全国の自治体でスマートシティの試みが行われていましたが、データの規格がバラバラで互換性がなく、特定のベンダーや事業に閉じた「一過性の実証実験」で終わりやすいという課題がありました。

デジタルツイン技術の台頭
グラフィックス描画能力の向上やGIS(地理情報システム)技術の発達により、都市の動態(人流・交通・災害リスク)をリアルタイムに視視化・シミュレーションする需要が高まりました。

都市計画のデジタルシフト
気候変動に伴う風水害の激甚化や、人口減少に伴うまちづくりの最適化を行うため、現実世界の都市データを高度に分析できるインフラが急務とされていました。

これらを受け、国土交通省は「共通のデータ規格(CityGML)で全国の3D都市モデルを急速に整備し、完全オープンデータとして配る」という大胆な方針を掲げ、2020年にプロジェクトを発足させました。

PLATEAUの歴史

2020年度:プロジェクトの発足と東京23区モデルの整備
国土交通省都市局においてProject PLATEAUが始動しました。実証実験のファーストステップとして、東京都特別区(東京23区)をはじめとする全国56都市の3D都市モデルを整備し、ウェブ上で手軽に閲覧できる一般向けWebGISビューア「PLATEAU VIEW」を公開しました。

2021年度:オープンデータ化と全国展開の本格化
整備した3D都市モデルを、G空間情報センターなどを通じて商用利用が可能なライセンス(CC BY 4.0等)で順次オープンデータ化しました。あわせてモデルの整備対象を全国の主要都市へと本格展開・拡大していきました。

2022年度:エコシステムの構築と民間活用の推進
単なるデータの整備にとどまらず、民間での利活用を加速させるための取り組みを強化しました。ハッカソンやアイデアソン、コンテスト「PLATEAU AWARD」を開催したほか、UnityやUnreal Engineといった主要なゲームエンジン向けのSDKやプラグインの公式配布を開始しました。

2023年度〜現在:全国500都市規模への拡大と自治体への定着
地方自治体が自らPLATEAU標準の3D都市モデルを整備・更新できる仕組みを確立しました。整備規模は全国500都市以上にまで拡大しており、防災計画や交通シミュレーション、XR(AR/VR)技術を活用した施策など、地方創生や実務インフラとして広く定着しています。

PLATEAUの3D都市モデルは、単なるビジュアルデータではなく「高さ・建物構造・用途・浸水想定」などの属性データを保持しているため、高度な数値シミュレーションや住民合意形成の現場で威力を発揮しています。

PLATEAUの活用

防災・減災シミュレーション

都市の立体的な形状データに、水害や風害の物理データを組み合わせることで、高精度な被害予測と避難計画立案に活用されています。

浸水・洪水シミュレーション
河川氾濫時の浸水深データ(LOD1〜2)と建物データを重ね合わせ、「どの建物の何階まで水に浸かるか」を立体的に可視化。垂直避難(ビルの上層部への避難)が可能な協定ビルの抽出や、リアルタイムな避難ルート案内に役立てられています。

土砂災害・津波被害の可視化
津波の到達高さや土砂崩れの流出範囲を3D空間上で再現。2Dマップでは伝わりにくい「高さ方向の危険度」を住民に直感的に伝え、防災意識の向上を図っています。

都市風・風害解析
高層ビル群の形状(LOD2)を取り込み、流体力学(CFD)シミュレーションを実施。ビル風の発生予測や、強風時の安全対策・避難誘導ラインの検討に利用されています。

都市計画・まちづくり・合意形成

景観や日照、人の流れを事前にデジタル上で検証することで、意思決定のスピードアップとコスト削減を実現しています。

景観・日照・眺望シミュレーション
大型再開発ビルを建設した際の周囲への日影の影響や、街並み・歴史的建造物に対する景観上の調和をデジタルツイン上で検証。住民説明会などで共通のイメージを共有し、合意形成(コンセンサス)を円滑化しています。

人流データと掛け合わせた歩行者空間の設計
GPSや人流センサーデータ(人流ログ)をPLATEAUの3D空間上に重ね合わせ、時間帯ごとの歩行者の滞留エリアや動線を可視化。ウォーカブルなまちづくり(歩行者天国やオープンカフェの設置検討)の根拠データとして活用されています。

都市空間の温熱環境(ヒートアイランド)解析
建物の配置・材質と日照データから、夏場の表面温度の上昇や風の通り道を解析。街路樹の配置計画や日影形成による熱中症対策に活かされています。

交通・次世代モビリティ・インフラ管理

都市空間の立体形状を正確に把握できる特性を活かし、新しいモビリティの運用基盤としても活用が進んでいます。

ドローン・空飛ぶクルマの飛行ルート計画
建物の高さや送電線などの障害物を3Dで再現し、「建物に接触しない安全な航空経路」を自動算出。電波の遮蔽エリア解析と組み合わせて、送電線巡視や物流ドローンの自動運航ルート構築に利用されています。

自動運転・スマートモビリティ
道路モデル(Transportation)や周辺建物の幾何情報を利用し、自動運転車両や配送ロボットのシミュレーション環境を構築。センサーの死角やGPS信号が届きにくいエリアの事前把握に役立てられています。

PLATEAUとCityGMLの基本概念

CityGMLは、OGC(Open Geospatial Consortium)が策定した都市空間情報を記述・交換するためのXMLベースの国際標準規格です。
一般的な3D CGフォーマット(OBJやFBXなど)が「ポリゴンの形状と質感」のみを扱うのに対し、CityGMLは「形状(Geometry)+地理空間情報(Location)+属性・意味情報(Attributes / Semantics)」を統合して保持します。

PLATEAUでは、国際標準のCityGML 2.0を基本にしつつ、日本独自の都市計画やまちづくり関連データを拡張格納するためにi-UR(urban Planning Application Domain Extension)という拡張スキーム(ADE)を採用しています。

データの詳細度(LOD:Level of Detail)

CityGMLの最も特徴的な概念がLOD(Level of Detail)です。オブジェクトの幾何学的な詳細度と属性情報の精度を表します。

  • LOD0:2Dの敷地・建物フットプリント(地図上の平面図)
  • LOD1:箱型(豆腐形状)のシンプルな3Dモデル(高さ情報のみ)
  • LOD2:屋根形状やテクスチャ(外観画像)を表現した詳細な3Dモデル
  • LOD3:窓やドア、壁面の凹凸などの意匠構造まで精密に再現したモデル
  • LOD4:建物内部の部屋構造、家具、インフラ機器まで含んだ屋内モデル

PLATEAUのデータ構造とディレクトリ構成

PLATEAUから提供されるCityGML(.gml)パッケージは、地域メッシュコードに基づいて体系的に管理されています。

ディレクトリ構成例

Plaintext

533924/                             # 2次メッシュコード(例: 東京周辺)
  ├── udx/                          # 空間オブジェクト(都市オブジェクト)データ
  │    ├── bldg/                    # 建築物モデル (Building)
  │    │    └── 53392422_bldg_6697_op.gml
  │    ├── tran/                    # 道路モデル (Transportation)
  │    ├── veg/                     # 植生モデル (Vegetation)
  │    ├── luse/                    # 土地利用モデル (LandUse)
  │    └── dem/                     # 地形モデル (Digital Elevation Model)
  └── appearance/                   # テクスチャ画像ファイル(.jpg等)

CityGMLのタグ構造(XML)の記述例

建築物(bldg:Building)のXML構造は、以下のようにセマンティック階層を保持します。

XML

<bldg:Building gml:id="bldg_12345678">
  <!-- 属性情報(セマンティクス) -->
  <bldg:class>4001</bldg:class> <!-- 建物種別 -->
  <bldg:usage>4101</bldg:usage> <!-- 用途(住宅・商業など) -->
  <bldg:measuredHeight uom="m">45.2</bldg:measuredHeight> <!-- 高さ(メートル) -->
  <uro:buildingDetails>
    <uro:structureType>31</uro:structureType> <!-- 構造(RC造等) -->
    <uro:buildingYear>2015</uro:buildingYear> <!-- 建築年 -->
  </uro:buildingDetails>
  
  <!-- 幾何情報(ジオメトリ) -->
  <bldg:lod2MultiSurface>
    <gml:MultiSurface>
      <gml:surfaceMember>
        <!-- 屋根、壁、床などの部位ごとのポリゴン定義 -->
        <bldg:RoofSurface gml:id="poly_roof_01"> ... </bldg:RoofSurface>
      </gml:surfaceMember>
    </gml:MultiSurface>
  </bldg:lod2MultiSurface>
</bldg:Building>

実務利用におけるデータ変換:CityGMLからWeb3D / CGへ

CityGMLはデータ量が非常に重く、標準XMLフォーマットであるため、そのままゲームエンジンやWebブラウザで直接高速描画するには向きません。そのため、用途に応じた形式への変換処理が行われます。

  • 3D Tiles / CZML: WebGIS(CesiumJS, Re:Earthなど)での軽量表示・Web配信向け。
  • FBX / OBJ / Unreal Engine (Datasmith): Unreal EngineやUnityなどのゲームエンジンによる高精細レンダリング、シミュレーション、VR/AR向け。
  • GeoJSON / Shapefile: 2D/3D属性解析を中心としたGISソフト(QGIS, ArcGIS等)向け。

PLATEAU公式では、FMEを用いた変換ワークフローや、Unreal Engine / Unity向けのインポータープラグインがオープンソースとして提供されています。

今後の展望・ビジョン

Project PLATEAUは、データを初期整備して配布する段階(フェーズ1〜2)から、データを用いて自律的なイノベーションや課題解決が継続して起こる「エコシステムの成熟とサービス実装の推進」段階(フェーズ3〜)へと移行しています。国土交通省が掲げる今後のロードマップ・主な取り組みは以下の通りです。

データ整備・更新の「自動化・高頻度化」

従来の測量や人力作業に依存したデータ更新から、AI解析、ドローン・衛星データ、あるいは建築確認申請をはじめとする行政のデジタル手続き(BIMデータ等)との連動を推進。現実世界の都市の変化が、ほぼ自動かつリアルタイムに3D都市モデルへ反映される仕組みの構築を目指しています。

民間での「ビジネス実装・サービス化」

実証実験や一過性のイベントにとどまらず、防災・スマート物流・自動運転・都市計画・エンタメ・メタバースなどの領域で、民間企業が継続的に収益を上げられる実用サービスの創出・商用化を強力に後押ししています。地方自治体が通常の業務インフラとして標準活用できるガイドラインの整備も進めています。

日本発モデルの「グローバル展開(海外進出)」

日本で培われた「CityGML + i-UR」による高度な都市デジタルツイン構築ノウハウや整備手法、オープンデータ活用エコシステムをパッケージ化し、アジアをはじめとする国外のスマートシティ開発や国際標準化へ向けて展開していく戦略を進めています。

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