世界最速レベルで増加する「ベトナムの超富裕層」と大相続時代の到来から見えてくるものとは?(石黒が選ぶベトナムのニュース:2026/5/6)

現地で報じられているニュースを日本人の視点から読み解き、リアルな現地事情を紹介していく、石黒が選ぶベトナムのニュース紹介、第4回目。
皆さんは「ベトナムでの超富裕層の増加」と聞くと何を思い浮かべるでしょうか。
経済の高成長に伴って増えているかもしれないけど国全体の豊かさからすれば、まだ数が少ないのでは?といったイメージをお持ちの方もいるかもしれません。
実は今、ベトナムでは桁違いの資産を持つ「超富裕層(Ultra High Net Worth Individual=UHNWI)」が世界最速クラスのスピードで激増しており、さらに彼らが抱える資産が「次の世代」へと一気に引き継がれる歴史的な転換期を迎えています。今回は、そんなベトナムの「富のシフト」に関するニュースを紹介します。
2026/4/23のVneconomyニュース (原文はベトナム語)
ベトナムの超富裕層数は、世界で最も急速に増加している国の一つである。
1. 激増する超富裕層
今回のニュースは、ベトナムにおける「ウェルスマネジメント(富裕層向け資産管理)」の急速なニーズの高まりを報じたものになります。
記事が引用している証券会社の分析によると、ベトナムの超富裕層(UHNWI)の数は年間約10〜15%という世界有数のスピードで増加しているとあります。
それを裏付けるデータをみつけました。Knight Frank社が公開している「The Wealth Report, 2026」
こちらを見ると資産3,000万ドル(約48億円)以上のベトナムの超富裕層は、2026年1,233名だったのが、2031年には推定1,960名へと5年間で59%の増加見込みであり、増加率の順位で世界4位となります。

また別のページでは、2021年、2026年、2031年と5年刻みで超富裕層の数が書かれています。(2026年と2031年は、推定値)

2021年の954人が2026年に1,233人へと29.2%増加であったのに対し、2026年の1,233人は、2,031人へと59%増加と超富裕層の増加率が2倍近くへと加速する様子も伺えます。
そして先日のニュース記事紹介でも伝えたように「高齢化が日本よりもはやい速度で進みつつあるベトナム」では、巨額の資産が、一代で築き上げた創業者である親世代から、子や孫の世代へと引き継がれる「大相続時代(The great wealth transfer)」に突入していると指摘されていもいます。
ちなみにこの流れはベトナムに限らず世界全体で起きていることで、世界では今後10年間(2035年まで)で500万ドル以上の資産を持つ個人によって、総額約31兆ドル(約4,960兆円)もの資産が世代間で移行すると推計されているとあり、ベトナムはこの大きな流れの中にあることも分かります。
2. ニュースの背景にあるベトナムの状況
ベトナムにおいてなぜ今こういったニュースが報じられているのか。そこには、ベトナムの現代史が関係しています。
ベトナム戦争終結では、社会主義陣営であった北ベトナム側が勝利して南北が統一されたことで過去から莫大な富を代々受け継いできた層は、いったんリセットされることになりました。
東南アジア各国では華僑財閥が各国の経済において大きな影響力を発揮していますがベトナムでは、それを聞かないのもこういった背景があります。(ちなみに南ベトナム時代は、チョロンを中心にした華僑財閥の影響が大きかったとも言われています)

よって現代のベトナムでの富裕層は、1986年のドイモイ(刷新)政策以降、経済高成長に伴うビジネスの成功や、それに付随した資産価格(土地・不動産・株式)などの高騰によるものです。
例えば、「専門家が、ベトナムの不動産価格が100倍に高騰し、土地価格が30年間連続で急騰している理由を解説する。」という記事(原文はベトナム語)によると、主要都市の不動産価格は1990年~1992年で10倍に上昇、2000年~2003年で10倍に上昇、そして2007年末~2008年末の1年で3倍に上昇とあり、これだけで20年に満たない期間に300倍です。
結果、高成長による所得上昇にもかかわらず、ベトナムの住宅価格対所得比率は25~30倍に達しており、タイやインドネシアといった近隣諸国と比べて著しく高いという状態を生み出しています。

またベトナムで一番の資産家と言えば、不動産をはじめとしたさまざまな事業を手掛けるビングループ、この創業者であるファム・ニャット・ブオン (Phạm Nhật Vượng)氏が有名で資産349億ドルとも言われています。現在57歳(8月で58歳)の彼は、ここ40年の経済発展を体現し、最も大成功をした人物といえます。

しかし100年以上に渡る富の継承経験の豊富な訪米や東南アジア各国と異なり、富の継承経験を1度失ったベトナムでは、巨大企業群やファミリービジネスにおける「権力と富の移譲」についてこれから社会で蓄積していく局面にあるといえます。
3. 筆者(石黒)が注目したポイント
この記事で興味深いのは、ベトナムにおいても他の国と同様に発生している富を作った第一世代と、それを継承する第二世代との間での世代間ギャップについてです。
富の継承におけるベトナムの課題として報道では、
(1)経営リスク
同族経営企業において第二世代が事業を継承したがらない場合や、所有権をめぐる争いが生じた場合に困難に陥りやすい傾向がある点
(2)資産保全に対する考え方の不一致
第一世代は、「土地と金(ゴールド)」を好むのに対し、第二世代は「テクノロジー、新しい投資商品、グローバル投資」を好む点
(3)法制度の不備
ベトナムにおける信託などの制度は、国際基準に比べてまだ新しく不完全である点
が挙げられています。

第一世代が持つ「分けにくい不動産や自社株」をどのように流動化させるのか。
第二世代が直接経営を望まない場合、どのように外部からプロフェッショナルを誘致するのか。
そして第二世代が求める「グローバルな投資ポートフォリオ」を誰が組成し提供するのか。

このニュースから見えてくるのは、ベトナムにおける「資産管理・事業承継・M&A」といった昨今の日本でも騒がれているキーワードへのニーズです。
一般的な「安価な労働力を持つ製造拠点」というイメージと異なる「莫大な富が世代移行し、高度な金融・コンサルティングサービスを求める場所」というベトナム。
日本企業が持つ専門知識やノウハウが、今のベトナムの富裕層の悩みを解決する強力なソリューションになるかもしれません。変化の激しいベトナム市場、ぜひこの「富の世代交代」という新しい切り口からもビジネスの可能性を探るには良い機会となるのでは・・・と感じさせるニュースでした。
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