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高齢者向け住宅プロジェクト発表から見えてくるものとは?(石黒が選ぶベトナムのニュース:2026/5/4)

高齢者向け住宅プロジェクト発表から見えてくるものとは?(石黒が選ぶベトナムのニュース:2026/5/4)

現地で報じられているニュースを日本人の視点から読み解き、リアルな現地事情を紹介していく、石黒が選ぶベトナムのニュース紹介、第2回目。

皆さんは「ベトナム」と聞くとどんなイメージを思い浮かべますか?

「平均年齢が若く、活気あふれる国」「若年層の労働力が豊富」といった印象を持つ方が多いのではないでしょうか。

確かに街には若者のエネルギーが満ち溢れていますが、実は今、ベトナム社会の足元では、「世界最速クラスの高齢化進行」という、日本ではあまり知られていない大きな変化が起きています。今回は、そんなことを伝えてくれるニュースを紹介します。

2026/4/26のCafefニュース (原文はベトナム語)
ナム・ロンは、高齢者介護モデルを導入するためにThriveと提携している。

1.大手デベロッパーも動き始めた!ベトナム初の本格的「シニアリビング」プロジェクト

先日、ベトナムの不動産大手「ナムロン・グループ(Nam Long)」が、シニア向け住宅・ケアサービスにおいて世界で25年の実績を持つ「Thrive社」(アメリカをはじめ、イギリス、韓国などで事業展開)と戦略的パートナーシップを締結したというニュースが報じられました。

この提携の目的は、ベトナム初となる国際基準の「高級シニアリビング(高齢者向けコミュニティ)」を開発・運営することにあると発表されています。

第一弾のプロジェクトは、ホーチミン市近郊の巨大な水辺の都市開発エリア「ウォーターポイント(Waterpoint)」に建設されるとのこと。この場所ですが、

Waterpointの場所は、ホーチミン中心部から南西に約30km離れたBenLucというエリアのさらに赤枠内の左に突き出た場所です。

現時点では、衛星写真の様に一部だけが開発された状態ですが、以下の様になる計画が公開されています。

Waterpointの紹介サイトより

本題の高級シニアリビングですが、約400戸の住宅と600床のベッドを備えるこの施設は、単なる「老人ホーム」ではなく、豊かな自然環境(広大な公園や川沿いの遊歩道)の中で、健康なうちから自立した生活を楽しむ層から、24時間体制の医療ケアが必要な層までを幅広くサポートするとあります。

最新テクノロジーを活用した家族向けのオンライン健康レポートや、パーソナライズされた栄養管理サービスまで提供される、まさに「高齢者のための統合型エコシステム」とのことです。

2.ニュースの背景にある「ベトナムのリアルな事情」

さて、この記事の背景には、ベトナム特有の急速な社会変化と文化的なジレンマがあります。現地にいるからこそ肌で感じる「3つの事実」を紹介します。

2-1.想像以上に深刻な「超スピード高齢化」

高齢化の進展速度を測る指標として倍加年数というものがあります。

65歳以上の人々が人口に占める割合が
・7%超:高齢化社会
・14%超:高齢社会
・21%超:高齢社会
と言いますが、7%⇒14%へと倍化する年数を図るもので、日本は1970年に高齢化社会、1994年に高齢社会に入り、結果24年でした。

ちなみにドイツは40年、イギリス46年、スウェーデン85年、フランス115年とも言われているため、日本は世界的に見ても非常に速いスピードと言われています。

しかしそれよりも早いのがベトナムです。2017年に7%に達して高齢化社会に入り、2034年には14%に達して高齢社会に入ると予想されているため、わずか17年。急速に高齢化の進むシンガポールやタイよりも早い状況です。

国際協力機構(JICA)の2019年6月のレポートより

ベトナムの60歳以上の人口は、2024年時点で1,420万人ですが、わずか10年後の2034年には約2,090万人へと急増すると予測されています。

日本が長い時間をかけて経験した高齢化を、ベトナムはものすごいスピードで駆け抜けていく。しかし、現在国内にある高齢者ケア施設はわずか218カ所(利用者約1万5,000人)しかなく、受け皿となるインフラが圧倒的に不足しています。

2-2.崩れゆく「親の面倒は家で見る」という伝統

ベトナムは儒教の影響が強く、「親の面倒は子供が自宅で最後まで見るのが当たり前(=親孝行)」という価値観が根強くありました。それゆえかつては、親を施設に入れることは「親不孝」と後ろ指を指されることすらあったのです。

しかし現在、都市部への人口集中や核家族化、そして夫婦共働きの一般化により、自宅での介護は限界を迎えつつあります。そして都市部の住居には地方の様な十分なスペースが無いことも一般的です。

親世代の中にも「子供の負担になりたくない」「同世代の友人と楽しく暮らしたい」と考える人が増えてきました。

2-3.「富裕層・中間層」のシニア向けサービスへの渇望

経済成長に伴い、質の高い老後生活にお金を払える富裕層やアッパーミドル層が増加しています。しかし、彼らが満足できる清潔でサービスレベルの高い高級老人ホームやシニア向け住宅が、ベトナム国内にはほとんど存在しないのが現状です。

今回のナムロン社のプロジェクトは、まさにこの「ポッカリと空いた巨大なニーズ」を狙い撃ちにしたものとも言えるでしょう。

3.筆者(石黒)が注目したポイント

このニュースは、日本企業にとってのビジネスチャンスを伝えるものだと考えました。なぜなら、「高齢者が増えていく社会の課題解決」において、日本は世界一の先進国であり、豊富な実績を持っているからです。

それを裏付ける図表があります。

年齢層ごとの人口の割合を表現した人口ピラミッドの形です。左が40年前の1986年の日本、右が現在の2026年のベトナムです。

非常に形が似ていることが分かります。つまり日本企業が過去40年間、日本で経験してきた知見を活かせる、そんなことを感じさせる形状です。

例えば今後ベトナムでは、以下のような分野で爆発的なニーズが生まれると予想されます。

◆介護施設・シニア向け住宅の運営:

ハード(建物)に魂を入れるソフト(ホスピタリティ、介護技術、施設運営)のノウハウ、介護サービス。

◆介護人材の育成システム:

専門的な知識を持った介護士を育成する教育プログラムやマネジメント手法。

◆医療機器・介護用品・見守りシステム:

IoTを活用したベッドセンサーや、高齢者の負担を減らす車椅子、入浴補助具などの製品。

◆シニア向け食品・栄養管理:

噛む力や飲み込む力が弱くなった方向けの「介護食」や、健康寿命を延ばすためのサプリメント、栄養指導サービス。

日本企業がこれまで日本国内で培ってきた技術やサービスは、そのままベトナムの「未来の課題」を解決する強力な武器の1つとなりえます。しかし単に武器があるだけでは、勝利できません。

現地の実情に合わせて、その武器の力が100%発揮できるよう、どのように活用し勝利への道を見つけ出していくのか。

現地大手デベロッパーと、外資シニア向け住宅・ケアサービスの会社との提携ニュースは、そんな今後ますます盛んとなる動きを感じさせるニュースです。

石黒健太郎による「ベトナム経済ニュース」最新記事一覧はこちら

Articles by Kentaro Ishiguro(石黒健太郎) | Vitalify Asia Tech Blog
東南アジア駐在16年超、複数国で拠点立ち上げから経営までを歴任。ベトナムでのシステム開発の勘所から最新ビジネス事情まで、現地在住者ならではの視点で発信している。趣味はバックパッカー旅行。自らの足で稼いだリアルな情報も交え、企業の海外進出を後押しする。

石黒健太郎による「ベトナム オフショア・ラボ型開発」最新コラム一覧はこちら

コラム | バイタリフィアジア
コラム記事一覧|オフショア開発やシステム開発の最新トレンド、成功のヒントを発信。経営層・開発担当者に役立つ情報をまとめています。

現地の「今」を肌で捉え、確実な事業戦略を描くために

今回ご紹介した介護市場の勃興だけでなく、ベトナム市場にはインターネット上の情報だけでは見えてこない「リアルなビジネスチャンス」と「新興国特有の落とし穴」が無数に存在します。

自社の技術やサービスをベトナムでどう展開すべきか?開発拠点や販売拠点を設立するには何から着手すべきか?そうした課題を解決し、ベトナム出張を「確かな成果(実践プラン)」へと繋げるための特別なプログラムが開催されます。

実践型ビジネス出張ツアー「Ăng-Ten(アンテン)」

ベトナム拠点・IT開発センター設立の実践視察ツアー【Ăng-Ten】
現地プロ7社とのアポ調整・ホテル・移動がすべて完了。ベトナム出張が決まった新規事業担当者へ向けた、確かな判断材料を持ち帰るための超実践的ビジネスツアー。

「Ăng-Ten(アンテン、ベトナム語でアンテナを意味)」は、ベトナム最大の経済都市・ホーチミン市を実際に訪れ、現地で長年ビジネスを営む7名の専門家と直接つながる、2泊3日の密度の高いビジネス出張ツアーです。

💡 本ツアーで得られる3つの価値

  1. 誰に会うべきかが見える:法務(弁護士)・採用・金融(銀行)・BtoB営業・不動産など、現地で接点を持つべきスペシャリストと直接議論ができます。※弊社バイタリフィ アジアのDirector 石黒も、オフショア開発の専門家(講師)として本ツアーに登壇いたします!
  2. 何から着手すべきかが整理される:すべて日本語での実践講義を通じて、拠点設立に必要な実務の順番と、見落としやすい注意点(成功例・失敗例)をまとめて持ち帰れます。
  3. 帰国後の相談先(人脈)が確保できる:質疑応答や後日の個別面談を通じて、自社の悩みを直接ぶつけることができ、帰国後すぐに動ける体制が整います。

【開催スケジュール(2026年)】

  • 第1回目:5月27日(水)〜5月29日(金)
  • 第2回目:6月17日(水)〜6月19日(金)
  • 第3回目:7月15日(水)〜7月17日(金)

※オプションで航空券の手配や延泊(観光・ゴルフ等)のご相談も可能です。

急成長するベトナム市場への進出や、新規事業の拠点設立をミッションとして任された皆様。事前情報だけで判断するのではなく、ぜひ現地の最前線を自分の目で確かめに来てください。ホーチミンでお会いできることを楽しみにしています!

▼お申し込み・スケジュール詳細はこちら

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