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都市鉄道の売上はハノイがホーチミンの1.7倍なのに最終利益は同じ?そのカラクリから見えてくるものとは!(石黒が選ぶベトナムのニュース)

都市鉄道の売上はハノイがホーチミンの1.7倍なのに最終利益は同じ?そのカラクリから見えてくるものとは!(石黒が選ぶベトナムのニュース)

現地で報じられているニュースを日本人の視点から読み解き、リアルな現地事情を紹介していく、石黒が選ぶベトナムのニュース紹介、第20回目。

今回は、ベトナムの2大都市であるハノイとホーチミン市において近年開通した「都市鉄道(メトロ)」運営会社の業績に関する興味深いニュースを取り上げます。

2026年5月23日 CafeFニュース
ハノイ地下鉄の収益はホーチミン市地下鉄の1.7倍だが、税引き後の利益はほぼ同じだ。なぜだろうか?

1. ハノイとホーチミンのメトロが揃って初の黒字化へ

ハノイメトロとホーチミンメトロの2025年の財務報告によると、両社が揃って黒字化を達成したと報じられました。税引き後利益(純利益)を見てみると、

◆ハノイメトロ:約367億8000万ドン(約2.2億円)
◆ホーチミンメトロ:約387億4000万ドン(約2.3億円)

となっており、両社ともほぼ同水準の利益を出しています。

都市鉄道(地下鉄)は、ハノイが2021年11月に開通、ホーチミンが2024年12月に開通した為、ベトナムの都市鉄道業界において同じ会計年度(1年間)で両社を比較できるのは、昨年2025年が初めてとなり、また両社とも利益が出る(黒字)という良い結果となりました。

ちなみに2026年の税引き後利益(純利益)目標額は、
◆ハノイメトロ:約570億ドン
◆ホーチミンメトロ:約390億ドン

とあります。

しかし売上(総収入)で見ると、2つの都市鉄道には大きな差があります。ハノイは、現在2路線あり2025年の売上は約9,380億ドン、ホーチミンは1路線で約5,470億ドンと1.7倍の差です。

2026年の売上(総収入)予想もハノイは、約1兆2,800億ドン、ホーチミンは6,280億ドンと2倍超ありますが純利益予想では1.46倍しか違いません。これにはいったいどういう背景があるのでしょうか?

2. ニュースの背景にある「ベトナムのリアルな事情」

2025年のハノイとホーチミンの都市鉄道両社の利益は、ほぼ同じなのに売上(総収入)は1.7倍。なぜこのような現象が起きているのか、その背景を紹介します。

2-1. 売上(総収入)に含まれる補助金というカラクリ

実は、2つの都市鉄道共に鉄道輸送からの運賃収入は半分にも満たない事が明らかになっています。

◆ハノイメトロ:売上は、約9,380億ドン

内訳は、運賃収入が約1,440億ドン(15%)、補助金が約7,940億ドン(85%)

◆ホーチミンメトロ:売上は、約5,470億ドン

内訳は、運賃収入が約2,140億ドン(39%)、補助金が約2,780億ドン(51%)、その他550億ドン(10%)

両社ともにベトナム政府や市から膨大な補助金が支払われており、ハノイの場合は、85%が補助金である為、ほぼ政府の補助によって運営されているともいえる状況です。

ハノイのメトロ、スマホ画面をかざして乗車する乗客(ベトナム語の報道より

その背景にあるのは、現地の低所得者に配慮した低額な運賃です。運賃は距離に応じて変わりますが、以下の通りです。

ハノイの場合、2A号線で9,000~19,000VND(約54~114円)、3号線は9,000~15,000VND(約54~90円)、ホーチミンの場合、7,000〜20,000ドン(約42〜120円)

日本の地下鉄などと比べても安いことが分かります。まだ路線も少なく、都市鉄道というのが多くの人々にとって生活の中に浸透しきっていないため、大きな補助金を支給して安価に乗れる都市鉄道を運営している様子が伺えます。

2-2. ハノイとホーチミンの都市鉄道の輸送収入における稼ぐ力を比較すると見えるもの

今回の報道では、それぞれの運賃収入、乗車客数が載っていました。また現在営業中の路線距離もわかるため、記事には載っていませんが筆者自身でそれぞれの「1人当たり」および「1km当たり」の運賃収入を計算して比較してみます。

ハノイは乗車客数を公開していませんが、記事内では「2026年の計画では2025年の実績を11%上回ることを目指している。2026年の目標乗客数を2,159万人とすると、2025年の乗客輸送量は約1,950万人となる見込み」とありましたので、11%とは若干計算は合いませんが1,950万人で計算しています。

ベトナムの都市鉄道はそれぞれスマホアプリも提供しサービスにも力を入れている

【前提データ(2025年実績)】

◆ハノイメトロ(2路線): 約19.979km(2路線合計)、利用者数 約1,950万人(推計)、運賃収入 約1,440億ドン

◆ホーチミンメトロ(1路線):約19.7km、利用者数 約2,046万人、運賃収入 約2,140億ドン

< 乗車1人当たりの運賃収入>
・ホーチミンメトロ:約10,459ドン / 人
・ハノイメトロ:約 7,385ドン / 人

ホーチミンの方が、1人の乗客から得られる単価が約3,000VND(約40%)高くなっています。乗車距離の違いや、各種割引運賃利用率の違いなどが影響していると考えられます。

<1km当たりの運賃収入(年間)>
・ホーチミンメトロ:約 108.6億ドン / km
・ハノイメトロ:約 72.1億ドン / km

距離効率で見ても、ホーチミンメトロの方が1kmあたり1.5倍以上の運賃収入を稼ぎ出しており、路線の収益性の高さが伺えます。

ハノイの方に補助金がより多く支給されているのには、運賃収入で稼ぐ力の違いを受けてという事なのかもしれません。

3. 筆者(石黒)が注目したポイント

今回のニュースで興味深かったのは、同じ「黒字化」でも、中身の質(稼ぐ力)には都市ごとに明確な違いがあるという点と、将来、補助金に頼れなくなったその時についてという点です。

稼ぐ力についてですが、ホーチミンメトロはまだ1路線の運行ですが、ニュースによるとベンタイン〜スオイティエン区間で計画を21%も上回る2,046万人の乗客を運び、補助金依存度を50%程度に抑えている点は、非常に優秀な立ち上がりと言えます。

一方でハノイは2路線が開通し交通網としての広がりは見せているものの、収益化の面ではまだ補助金頼みのフェーズにあることがわかります。

ハノイの路線計画図(ベトナム語の報道より

両都市鉄道共に今後どんどん路線が拡大していく予定ですが、これからもずっと今の様な補助金で運営することは不可能と考えられます。

一方で運賃だけで利益が出るくらいまで値上げするのも公共交通機関という立場上、難しいとなると、運賃収入以外に稼いでいくしかありません。

例えば日本でも盛んな駅ナカ・駅周辺ビジネス(TOD開発)。今後利用者が増えることで、高い集客力を活かした駅構内の広告、小売店、さらには周辺の不動産開発において大きなポテンシャルを秘めていると考えらえます。

ホーチミンの路線計画図(ベトナム語の報道より

両都市で本格化してきた地下鉄ネットワーク。単なる「移動手段」から新たな「経済圏」へと進化していく途中にある、そんなことを感じさせるニュースです。

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Articles by Kentaro Ishiguro(石黒健太郎) | Vitalify Asia Tech Blog
東南アジア駐在16年超、複数国で拠点立ち上げから経営までを歴任。ベトナムでのシステム開発の勘所から最新ビジネス事情まで、現地在住者ならではの視点で発信している。趣味はバックパッカー旅行。自らの足で稼いだリアルな情報も交え、企業の海外進出を後押しする。

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